なぜプロテインは「朝こそ飲むべき」なのか?管理栄養士の視点からお答え! (1/2)
プロテインを朝飲む人が増えています。プロテインに含まれるタンパク質は、体を構成する重要な栄養素。朝のプロテイン摂取はなぜ効果的なのか、その理由と一緒に摂りたいおすすめ食材について、管理栄養士
小原水月さんが解説します。
<このページの内容>
プロテイン、朝に摂取すべき理由とは
プロテインを朝に摂取すべき主な理由は下記の2つです。
- 寝起きはタンパク質が不足するから
- 体内時計が整うから
それぞれを詳しく見ていきましょう。
理由1 寝起きに不足したタンパク質を補うため
プロテインを朝に摂取すべき1つ目の理由は、就寝中に減少した体内のタンパク質を速やかに補給し、筋肉量を維持するためです。
タンパク質は体内でアミノ酸に分解され、体づくりの材料として使われます。とくに就寝中は、成長ホルモンの分泌が活発となり、筋肉の修復や成長が促進されるため、多くのタンパク質が必要とされます。
しかし、就寝中は新たなタンパク質を摂取できず、消費される一方なので、寝起きはタンパク質が不足した状態となってしまうのです。
タンパク質が不足した状態でいると、時間の経過とともに筋肉が分解され、エネルギーとして消費されてしまいます。そのため、筋肉量の減少を防ぐには、起床後できるだけ早くタンパク質を補給する必要があります。
消化吸収が早いホエイプロテインがおすすめ
朝のタンパク質補給には、消化吸収スピードの速いプロテインでの摂取が効果的です。
タンパク質が不足した朝にプロテインを摂ると、まるで乾いたスポンジが一気に水分を吸収するかのようにタンパク質をグングン吸収し、体づくりに役立てようとします。
どれくらいタンパク質を摂るといい?
一般の方が朝食で摂るタンパク質の量は、20〜30gが目安です。
できるだけ速やかにタンパク質を消化吸収するためには、朝食で摂るタンパク質の半分程度(10〜15g)をプロテインドリンクで摂るとよいでしょう。たとえば、約20gのプロテインを水に溶かして飲めば、約15gのタンパク質を摂取できます。
消化吸収スピードが速いホエイプロテインなら、摂取後1〜2時間で消化吸収されるので、朝のタンパク質摂取におすすめです。
理由2 体内時計が整う
プロテインを朝に摂取するもうひとつの主な理由は、体内時計を整えて、健康的な生活リズムを維持するためです。
体内時計とは、ほぼ1日の周期で体内環境を変化させる機能です。人間は、体内時計を整えることで、睡眠リズムやホルモン調節、体温、血圧などをコントロールしています。
しかし、不規則な生活で体内時計が狂ってしまうと、健康に悪影響を及ぼす恐れがあるため、毎日脳が目覚める朝に、体内時計をリセットする必要があるのです。
とくに、勤務シフトなどで就寝時間が固定されていない人は生活が不規則になりやすく、体内時計が狂いがちなので、注意しなければなりません。
朝プロテインで体内時計が整う
体内時計をリセットするには、朝にプロテインを飲む習慣をつけることが効果的です。
朝にプロテインを摂取すると、プロテインに含まれているトリプトファンの働きによって体内時計が整いやすくなるのです。
トリプトファンは必須アミノ酸の一種です。体内で独自に生成できないため、食事から摂取する必要があります。トリプトファンには、メンタルの安定やストレスの軽減、睡眠の促進などの働きがあり、体のリズムを整える効果が期待できるのです。
プロテインだけで朝食を済ませるのはNG!
朝食でのプロテイン摂取は、健康を維持するうえで有用です。しかし、プロテインだけで朝食を済ませるのは、下記の2つの理由でおすすめできません。
- 必要な栄養素を摂取できないため
- 満腹感を得られないため
それぞれを詳しく見ていきましょう。
必要な栄養素を摂取できない
プロテインだけで朝食を済ませてしまう一番の問題点は、栄養バランスの崩れです。
プロテインには多くのタンパク質が含まれていますが、脳や体を動かすエネルギー源「炭水化物・脂質」がほとんど含まれていません。
一般的なプロテイン1食分(28g)に含まれている3大栄養素は下記の通りです。
- タンパク質:20g
- 炭水化物:3.1g
- 脂質:1.7g
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、食事の理想的な栄養バランスとして、タンパク質13〜20%・炭水化物50〜65%・脂質20〜30%が推奨されています。
したがって、プロテインだけでは必要な栄養素を摂取できないのです。
プロテインだけで朝食を済ませてしまうと……
プロテインだけで朝食を済ませてしまうと、炭水化物・脂質が不足し、集中力が低下したり疲れやすくなったりなど、日常生活に支障をきたす可能性が高まります。
また、エネルギー不足を補うために、タンパク質をエネルギー源として使用しようとします。すると、せっかくプロテインを摂取しても、体づくりに必要なタンパク質が不足し、筋肉量の減少や筋力の低下を引き起こしてしまうのです。
低炭水化物・低脂質の食事は、短期間のダイエットには効果的ですが、控えすぎるとエネルギー不足に陥り、筋肉量が減少してしまいます。すると基礎代謝が低下し、逆に太りやすくなってしまいます。
「食事で脂肪を落として、体型は運動で作る」。フィットネスプロデューサーAYAから学ぶ、筋肉をつけながら脂肪を落とす食事術
満腹感を得ることができない
プロテインには炭水化物・脂質がほとんど含まれていないため、消化が早く、満腹感が長続きしません。そのため、プロテインだけで朝食を済ませてしまうと、午前中に空腹感が強まり、ダイエットに大敵な間食や昼食の食べ過ぎにつながる可能性があります。
午前中の空腹感を抑えるには、朝食で炭水化物・脂質を適度に摂り、満腹感を長続きさせることが大切です。
「複合炭水化物」の食材を一緒に摂ろう
おすすめは「複合炭水化物」の食材。複合炭水化物はゆっくりと消化吸収されるので、エネルギーが持続し満腹感も長続きします。
複合炭水化物の食材は以下などがあります。
- 玄米
- 雑穀米
- オートミール
- サツマイモ
- 全粒粉のパスタ、パン
- ライ麦パン
- オールブラン
- リンゴ
- バナナ など
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