
管理栄養士が語る、お酢に期待できる10のメリット
食卓に欠かせない調味料のひとつ「お酢」。その爽やかな酸味は料理の味を引き立てるだけでなく、私たちの健康にもさまざまな効果をもたらしてくれます。
今回は、管理栄養士の視点から、お酢に期待できる10のメリットを紹介します。解説は、栄養士・食育栄養インストラクターの神原李奈さんです。
お酢に期待できるメリット10選
食後の血糖値の急上昇を抑える
酢酸は血糖値上昇を抑え、インスリンの過剰分泌による脂肪蓄積を抑制します。酢酸が糖を胃の中に留まらせ、糖の消化吸収を遅らせることで、食後の血糖値上昇を抑えます。
参考:
健常な女性における食酢の食後血糖値上昇抑制効果」(日本臨床栄養学会雑誌 27:321-325 2006)
遠藤美智子・松岡孝 食酢の食後血糖上昇抑制効果
体脂肪・内臓脂肪の減少
酢酸には脂肪の合成を抑え、脂肪の分解を促す働きがあります。実際にお酢の摂取により、内臓脂肪が減少したという研究結果があります。
高血圧の改善
酢酸が血圧を調整するシステムに作用し、血圧上昇を緩やかに抑制することがわかっています。また、血管を拡げる作用もあるため、血圧を改善すると言えます。
他にも塩分を控えている人が食事に酢を取り入れることで、お酢の酸味が美味しさをキープし、塩分摂取を抑えられます。
その結果、高血圧の予防や改善に役立ちます。
参考:食酢配合飲料の正常高値血圧者および軽症高血圧者に対する降圧効果」(健康・栄養食品研究 6(1):51-68 2003)
コレステロール値を下げる
一日15mlのお酢を摂ることで、血中総コレステロールを下げる作用があるという研究結果があります。
参考:https://www.mizkan.co.jp/health/sunochikara/reduce-visceral-fat/
腎臓病の予防
クエン酸は、尿中でカルシウムと結びつき、シュウ酸とカルシウムが結合するのを抑えることで、尿路結石の予防になると言えます。
便秘解消
酢酸には蠕動運動を促す作用があり、便秘解消に繋がります。また、便秘解消によりポッコリお腹の改善、栄養素の吸収が良くなり代謝が上がることも期待できます。
肌質・髪質の改善
お酢により便秘が解消され、栄養素の吸収が良くなれば、肌細胞の代謝が良くなり整った肌に繋がります。
また、髪の毛は頭皮の健康と関係しています。肌の健康と同様に、頭皮の細胞の新陳代謝が良くなれば、髪の毛も健康な状態を保てます。
二日酔いの予防
酢酸にはアルコールを胃にとどまらせ、緩やかに吸収させる作用があり、二日酔いの予防になると考えられます。
しかし、二日酔いになったあとに酢を摂ると、胃酸分泌が促進され、逆効果になる可能性があるので注意が必要です。
疲労回復
酢酸は体内でクエン酸に変化し、エネルギー産生を促すため、疲労回復に繋がる可能性があります。
参考:J Phys Fitness Sports Med, 9 (3): 115-125 (2020)
黒酢、バルサミコ酢……種類によって効果が違う?
どの食酢も主成分は酢酸であることから、酢酸による健康作用に関しては、どのお酢でも良いと言えるでしょう。
ただ、その中でも特徴のあるお酢が次の通りです。
肌・髪の毛には黒酢
強い抗酸化作用のあるメラノイジンを含むことから、血流を良くしたり、細胞の酸化を防ぐことで肌や髪の毛を健康に保ちます。
バルサミコ酢で血圧改善
果実酢のひとつで、カリウムを多く含むため、血圧改善に良いでしょう。
もろみ酢で疲労回復
食酢ではないですが、もろみ酢にはクエン酸が多く、尿路結石予防や疲労回復におすすめです。
梅酢由来の梅酢ポリフェノールに、ウイルス増殖抑制作用があることが試験管での実験で分かりました。今後ヒトでの実験もされることでしょう。
参考:和歌山県・田辺市共同発表 梅酢ポリフェノールのウイルスへの作用に係る研究結果について
お酢は1日どのくらい摂ればいい?
1日大さじ1~2杯程度摂ると良いでしょう。
飲む場合は、そのままだと胃やのどが荒れるため、5倍以上に薄めてから飲んでください。水で割るのが一般的だと思いますが、お好みで炭酸水、お湯、豆乳、牛乳などで薄めても良いです。
毎日飲んでもいい?
また、毎日摂取しても問題ありません。食事による摂取は、妊婦や子どもも大丈夫です。
しかし、サプリメントの摂取による安全性に関してはデータがないため、心配なひとは控えた方が良いでしょう。
お酢を飲むタイミング
特に決まっていません。毎日摂るのであれば、食事に取り入れると良いでしょう。
どのくらいで効果を実感できる?
血圧に関しては、1日15mlの酢を毎日摂ることで、1~2か月後に改善されたという結果が出ています。血中中性脂肪は、毎日摂り始めてから徐々に減り始めました。
1日15mlと30mlとでは、12週間経ったところで差が見られ、30mlを12週間摂りつづけた人の方が高い効果が得られました。
体脂肪に関しても、12週間の摂取で減少したことが分かっています。このことから、継続的に摂取することが必要だと言えます。
個人差もあるので、一概に「どれくらいの期間」と言うのは難しいです。
お酢の効果を引き出す! 一緒に食べるといい食べ物
酢キャベツ・もずく酢
食物繊維を多く含むキャベツやもずくと一緒に摂ることで、さらなる便秘解消や血糖値上昇抑制を促します。
酢ピーナッツ
ナトリウムの排出を促すカリウムを含むピーナッツと合わせれば、血圧の改善に役立ちます。
<酢ピーナッツの作り方>
うす皮つきピーナッツ(無塩)を容器に入れ、酢を注ぐだけ! お好みではちみつを加えるとまろやかになり、食べやすくなります。
ほか、食べ合わせが良い食材は次の通りです。
カルシウム
お酢は、貝や魚の骨などのカルシウムを溶かすため、それらをお酢で調理することで、効率よく摂取することができます。
鉄
お酢は胃酸の分泌を促すため、鉄吸収を助けると考えられます。レバーの黒酢煮などがおすすめです。
参考
厚生労働省委託事業 公益財団法人 日本医療機能評価機構 Mindsガイドラインライブラリ 3再発予防 CQ36 クエン酸による尿路結石の再発予防は有用か?
日本栄養・食糧学会誌 第67巻 第4号 171-176(2014) 酢酸の生理機能性
監修者プロフィール
管理栄養士・食育栄養インストラクター
神原 李奈
管理栄養士・食育栄養インストラクター。現役CAとして世界中を飛び回りながら、管理栄養士として健康や食に関する情報を発信している。
<Edit:編集部>
※本記事は、Medicalook(メディカルック)で掲載されていた内容を移管し、加筆・修正したものです。