マラソン、サッカー、野球をする人は何を食べればいい?おすすめの栄養と食事をスポーツ食事指導の専門家に聞いてみた
運動やスポーツで重視すべきもののひとつ「食事」。競技に適した体を作るためにも、適切な栄養素を取る必要があります。前編では、持久力・瞬発力・柔軟性を養うために必要な栄養素について、プロスポーツチームやアスリートの栄養指導を行っている盛岡良行さんに解説していただきました。
今回は、ランニングやサッカー、野球といった競技ごとにオススメの食材やメニュー、また食事方法について話を伺いました。
前編:「瞬発力・持久力・柔軟性」を高めるために大切な栄養素とは?スポーツ食事指導の専門家に聞いてみた
ランナーにおすすめの栄養と食事メニュー
では、まず幅広い層に浸透している、マラソンやジョギングはどうでしょうか?
「必要なのは持久力なので、糖質が中心となります。鉄分やカルシウムなど、ミネラルもたくさん摂らないといけません」(盛岡さん)
長距離走は持久力が必要というのはわかりやすいですね。ただ、ミネラルと言われると、どのような食べ物を摂ればよいのか分からない人もいそうです。
「鉄分を摂るなら、レバーや牛肉がいいですね。動物性の鉄分はヘム鉄という化合物になっているので、体内で吸収しやすいんです。また、植物でも小松菜など鉄分を多く含むものがあります。植物性の鉄分は吸収しにくい非ヘム鉄なのですが、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂ることで吸収しやすくなります。たとえば、小松菜とバナナとレモン汁でスムージーを朝食にすると、毎日摂りやすいですよ」(盛岡さん)
レバーを毎食食べるのは難しいので、スムージーというのは良いアイディアですね。ただ、競技レベルになってくると、食事の摂り方にも、ちょっと違ったポイントもあるみたいです。
「フルマラソンになると、カーボローディングという食事法も選択肢にあります。これは、レースの3日前くらいから、糖質中心の食事に切り替える食事法で、別名をグリコーゲンローディングともいいます。カーボローディングではおかずは少なめにして、ごはんやパンなど主食中心の食事をとり、体のエネルギー源であるグリコーゲンを蓄えるようにします。摂取した糖質がグリコーゲンとして貯蔵される際、水分も一緒に蓄積されて多少は体重も増えてしまいますが、エネルギーを蓄えられるメリットの方が大きいので、フルマラソンやロードバイクをしている方には有効です」(盛岡さん)
そんなテクニックもあるんですね。確かに42.195kmをハイペースで走りきるには、できるだけ多くのエネルギーを貯め込んだ方がいいというのは、素人でも納得です。
和菓子、おもちもオススメ
糖質中心の食事はご飯やパンだけになりがちで、どうしても飽きてしまいます。そんな場合は、あんパンやカステラのように、砂糖が多い和菓子類もOKなのだとか。
「おすすめなのは、お餅です。お餅は普通のお米に比べて高カロリーで腹持ちもいいので、マラソンのように長時間走る際のエネルギーとして重宝します。代表的なメニューのひとつが、うどんに切り餅を入れた力うどんです。マラソンの食事についての紹介では、必ずといっていいほど取り上げている定番です」(盛岡さん)
お餅にそんな秘密があったとは。意外なメニューが、実はマラソンの大記録の裏に隠れていたのですね。
サッカーをする人におすすめの栄養と食事メニュー
続いて、サッカーに必要なメニューを考えてみましょう。サッカーは基本的には持久力が求められるものの、要所では瞬発力が必要になります。このようなスポーツでは、どのような食事のメニューにすればよいのでしょうか?
「暑い季節ですと、主食のご飯と豚肉の冷しゃぶを一緒に食べるのがおすすめです。糖質とタンパク質を一緒に摂れるだけでなく、豚肉には糖質の代謝を助けるビタミンB1が多いので、糖質を効率よくエネルギーに変えられます。また、主食のご飯に玄米や雑穀米を混ぜるのも良いですね。玄米の胚芽にはビタミンB1が多く含まれていて、糖質の代謝が良くなり、疲労回復にも有効です」(盛岡さん)
なるほど、糖質とタンパク質の組み合わせに、糖質の代謝を高めるビタミンB1までそろったメニューいうわけですね。豚しゃぶは調理が簡単なのもうれしいポイントです。
野球をする人におすすめの栄養と食事メニュー
次に、野球の場合はどうでしょうか。
「どちらかというと瞬発力系なので、タンパク質が多めになりますね。お肉やお魚などを中心としたおかずを摂ってください。特に高校生くらいになったら、普通の人の2倍くらいの量を意識した方がいいです」(盛岡さん)
ただし、年齢や環境によっては、それ以外のところにも注目する必要があるようです。
「高校野球も強豪校は練習時間が長く、8時間くらい続けるところもあります。そうなってくると、お昼ご飯を食べてから練習が終わるまで、何も食べないわけにはいきません。練習の合間に捕食が必要になります。ただし、脂肪分やタンパク質が多いと、お腹にもたれて練習が苦しくなるので、糖質中心ですぐに吸収される軽いものがいいですね。例えば、おにぎりやバナナなどがよいでしょう」(盛岡さん)
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記録向上を本気で目指すなら、専門家に相談
食事によって、こんなにも運動能力に影響があるなんて驚きです。だからこそ、きちんとした食事を考えるのは、とても難しいのだとか。
「人によって運動能力やコンディションは違うので、食事も何を重視するのかは違います。だから、競技ごとに『コレを食べればすべてOK』というのではなくて、その人に応じて、どの要素を伸ばしたいのか、筋肉を増やしたいのか、減量したいのか、ニーズによって変わります。ネットで検索して調べるだけでは、間違った情報も多く、我流になってしまいがちです。本気でやるなら、栄養士や医師に相談することも大切です」(盛岡さん)
一般のスポーツマンが日常の食事に気を付けることは、健康管理においても有益です。それ以上を求めるなら専門家を頼るべきというのは、食事に限らずトレーニング全般に言えそうです。
[監修者プロフィール]
盛岡良行(もりおか・よしゆき)
管理栄養士、健康運動指導士。株式会社アストリション代表。健康食品のメーカーを経て独立し、現在は野球の北信越BCリーグ「福井ミラクルエレファンツ」の栄養サポートや、学校でのスポーツ栄養セミナー、スポーツジム利用者への食事指導などを行っている
【公式HP】https://athtrition.com/
<Text:青山祐輔(H14)>