歯を食いしばると、体にどんな影響がある?食いしばりの理由とメリットデメリット、予防対策
ラグビー選手たちが口に白い何かをくわえている。テレビを見ていて気づいた人も多いのではないでしょうか。あれは「マウスガード」です。ボクサーがつけている「マウスピース」の方が、しっくりくる方が多いもしれません。
ラグビーでもボクシングでも、安全性を高めるためにマウスガードの装着が義務化されています。しかし、マウスガードの効果はそれだけではありません。実は、筋トレやスポーツ競技のパフォーマンス向上にも期待が持てるアイテムなのです。
なぜ歯を食いしばるのか? その理由とメリット
ジッと我慢をしたり、踏ん張ったり、あるいは強い力を発揮するとき。おそらく多くの方が、知らず知らずのうちに歯を食いしばっていることでしょう。
個人差はありますが、そのとき奥歯には、自分の体重~2倍程度の力がかかっていると言われています。ちなみに食事では、そのうち1/4~1/2程度の力で、調節しながら料理を食べています。
それほどに強い力がかかる歯ですが、なぜ「歯を食いしばる」のでしょうか。それによるメリットはどんなものなのでしょうか。
瞬間的に全身の筋力を高める
スポーツ時は歯を食いしばることによって、瞬間的に全身の筋力をパワーアップさせることができます。また、歯を食いしばることで全身の筋肉を緊張させ、ひいては全身の関節が固定されます。
その結果、外部からの強い衝撃に対してとても有効な防御方法となるのです。
集中力の向上
歯を食いしばることで、集中力を増幅させる効果も期待できます。
「手は第二の脳」という言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。手は体にある他の部位と比較して、脳の広い部位とつながっています。手には多くの神経が集中しているため、そう呼ばれているのです。
実のところ、これは口も同様です。もっとも神経が集中し、脳の広い部位とつながっている箇所のひとつです。そのため、歯を食いしばることで脳の広い部位に強い刺激が届き、脳が活性化して集中力を高めることができます。
がんばっているとき、ふと気づいたら歯を食いしばっていたという経験はないでしょうか。それは、このことが理由なのです。
歯を食いしばるデメリット
睡眠の質が落ちる
一方で、歯を食いしばることが身体に悪影響を与えることもあります。睡眠中に歯を食いしばっていると、全身に力が入ってしまい、体が休まらなくなるのです。
巧みな動作を必要とするスポーツでは、逆に力み過ぎにつながってうまく動けなくなります。
歯が割れる、傷む
あるいは、歯が力負けして壊れてしまうこともあるでしょう。虫歯の場合、歯の内部がスカスカになっているところに強い圧がかかり、砕けてしまうことがあります。噛み合わせが悪い人は、強力な力が特定の限られた歯だけにかかり、割れることもあるのです。
また、歯ぎしりをする人は、歯の最表面にある、人体の中でもっと強いエナメル質が磨り減り、歯の強度が低下して壊れやすくなる危険性も。
マウスガードで歯を傷める危険性を減らすのがよい
こうしたメリットとデメリットをうまくコントロールするためにも、マウスガードを効果的に使用するとよいでしょう。スポーツだけでなく、筋力トレーニングに取り組んでいる方にもマウスガードはオススメです。
マウスガードを使用することで、より強い筋力を引き出せるようになります。筋力トレーニングの効果を上げやすくなるとともに、歯を傷める心配がなくなるでしょう。
マウスガードを選ぶときのポイント
マウスガードは、自分に合ったものを選ぶのが重要です。これまでは市販のもので済ませたり、逆に特注で高いお金を出して自分の歯型に合わせ、時間をかけてオーダーメイドする人が大半でした。
しかし最近では、マウスガードも数週間で、値段も3000~5000円ほどで作れるほか、電子レンジを使って自分の歯型に合わせられる市販品も登場しています。
歯は運動に大きな影響を与える
スポーツと歯は、頭の中で繋がりにくいかもしれません。しかしとても大切なポイントです。最近の日本人の食事は、肉やパンなど柔らかいものが多いため、
噛む回数が少なく、噛む力も衰えているようです。スポーツのパフォーマンスを上げる、あるいは筋トレの効果を高めるために、ぜひ歯にも目を向けてみてください。
[プロフィール]
赤堀達也(あかほり・たつや)
1975年・静岡県出身。小・中・大学でバスケを指導し、独創的理論・論理的指導で育成する。体力テスト最低水準校で県優勝、無名選手達で東海1部にスピード昇格。最高は全国準優勝。
4月より群馬医療福祉大学助教から旭川大学短期大学部准教授となり、バスケで培った理論を応用して幼児体育・健康の研究を行う。またパーソナルストレッチやスポーツスタッキング、部活動改革も取り組んでいる。
[HP] https://mt-a.jimdo.com
<Text:赤堀達也>