ランナーズハイ、なぜ起きる? 中毒性のある“気持ちよさ”をもたらす脳内物質とは (2/2)
内在性カンナビノイドは大麻のような酩酊作用を及ぼす
カンナビノイドには痛みやストレスを軽減する効果があります。ランニングがそれを体内で生成するわけですので、ランナーズハイになる理由は説明できるのですが、実はカンナビノイドがもたらす効果は、大麻がもたらす酩酊と同じ種類の作用でもあります。
多くの国で医薬品あるいは食品の原料として承認されている大麻成分のひとつ「CBD:cannabidiol(カンナビジオール)」は、カンナビノイドの1種類です。
2020年4月現在、アメリカではカリフォルニア州を始めとする10の州と1つの地域で、娯楽用の大麻が合法化されています。その他の州でも、CBDは医療目的で承認されているところがほとんどです。
世界アンチ・ドーピング機関(WADA)は、2018年1月に条件つきでCBDを禁止薬物リストから除外しました。CBDの医薬的効果には以下があるとされています。
- 不安や緊張感を和らげる
- 痛みを和らげる
- 炎症を抑える
- 安眠を助ける
- 筋肉の張りを軽減させる
こうした効能だけを見ると、CBDの人気が高まる理由は分かります。
しかし外部から摂取する、食品あるいは薬品であることに変わりありません。そのため、その安全性や倫理性に疑問を持つ人も少なからず存在します。
長い年月に渡って違法とされてきたこともあって、本当に副作用や常習性がないと断言するだけの時間的検証が足りているとは言えません。
その点、ランナーズハイの原因とされる内在性カンナビノイドは、運動をすることによって自然に生成されるものです。ランナーズハイには麻薬のような作用はありますが、そこに至るまでは自分自身の体力を酷使する必要があります。
そのため、ランナーズハイになることを目的に走るランナーも、後ろめたさを感じる必要はないでしょう。安心してその酩酊効果を楽しみ、ランニングがもたらす幸福感に身を委ねようではありませんか。
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参考文献(*):Exercise-induced euphoria and anxiolysis do not depend on endogenous opioids in humans
[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text & Photo:角谷剛>