インタビュー
2017年10月24日

子どもの身体能力をアップさせる“裸足”運動の効果って?教育現場の導入ケースを取材してきた (1/2)

 ドラマ『陸王』の放送をキッカケに、“裸足感覚”でのランニングに興味を持ったランナーは多いでしょう。私も以前より裸足ランニングを練習に取り入れており、過去MELOSでもその第一人者である吉野剛さん、高岡尚司さんにもお話を伺いました。

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 そんな“裸足”での運動を教育現場に導入されているのが、今回お話を伺った松浦弘泰さん。北海道空知郡にある中富良野中学校で校長を務め、2011年『全日本マスターズ陸上大会』のやり投げ(M45)での優勝経験など輝かしい競技歴を持つアスリートです。では、いったいなぜ教育の場に“裸足”を導入されているのか。詳しくご紹介しましょう。

▲松浦さん(右)と筆者

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怪我を改善させた経験から“裸足”の効果を確信

 24年間にわたって体育教師として活動され、部活動の指導にも当たってきた松浦さん。現在は中富良野中学校にて、校長を務めていらっしゃいます。なんとご自身もアスリートであり、マスターズ陸上大会に多数出場。2011年にはやり投げ(M45)で優勝、さらに2012年には『アジアマスターズ陸上台湾大会』にも出場され、準優勝を果たしています。そんな松浦さんが“裸足”に出会ったのは、トレーニング中に生じた痛みが原因だったようです。

「アジア大会後の練習中に、脚を痛めてしまったんです。どうすれば治るのか調べている中で知ったのが、“裸足ランニング”でした。最初は書籍を読んで学び、実践したものの、やはり上手くいきません。そこで東京まで習いに行ったのですが、見事に痛みが治ったんですよ。いつも部活動で子どもたちの指導を行っていましたので、これは子どもにも絶対に良いと思いました」

 ご自身の痛み改善という経験から、裸足の可能性を確信されたという松浦さん。その後、教育の場へ“裸足”を取り入れるべく積極的な活動が始まりました。 

みるみる変化・向上する子どもたちの身体能力

 実際、当時勤務していた小学校をはじめ、子どもたちに裸足による運動の指導を開始した松浦さん。スポーツテストのスコア、あるいは側圧測定などのデータを見るだけで、子どもたちの身体能力にどんどん変化が現れていったと言います。

「以前の勤務先だった小学校では5・6年生の生徒たちを対象に、平成28年5月と9月での体力運動能力テストをスコア比較してみたんです。その間に体育の授業で裸足での縄跳びや鬼ごっこを取り入れたのですが、その結果に驚きました。なんと、ほとんどの種目で平均スコアが向上。例えば平均に満たなかった女子シャトルランは平均7.2回増えて5年生の全国平均を上回り、同種目の男子も5年生の全国平均以上ではあったものの、さらに6.9回増えて6年生の全国平均を超えたんです。特にシャトルラン、反復横跳び、そして長座体前屈への効果が顕著でした」

 その他、上川管内にある中学校のソフトボール部でも体力の向上が見られたとのこと。平成26年と比較し、平成27年では反復横跳びが10倍以上、さらにシャトルランでも3倍以上の伸びとなり、全国平均を上回る結果が出たそうです。

「もちろん、最初からスコアの良い子はいます。そういう子どもがそれ以上を目指すのは、やはり難しいものがあります。ですから全体の平均として運動能力の向上が見られたのは、運動ができない・苦手とされていた子たちが、できる子に近いレベルまで能力を高められたからでしょう。“裸足”というたった1つの取り組みで、複数の分野を伸ばすことができる。これは本当に驚くべきことですよね」

 昨今は子どもの体力低下が叫ばれています。しかし松浦さんの考えでは、それは体力が落ちているのではなく、身体の使い方が分かっていないだけではないかとのこと。裸足による運動は、そうした身体の使い方を自然と身につけさせてくれるのかもしれません。

 さらに松浦さんは、平成28年4月と9月に側圧測定も行ったそうです。そしてその結果からは、浮き指やハイアーチ、扁平足などが改善されたと言います。裸足になるという行為を数ヶ月続けただけで、目に見える変化が現れたのでした。しかしその他にも、松浦さんの指導下では実にさまざまな結果が出始めています。

「例えば中学バスケ部では、下肢の怪我に悩む選手がいなくなりました。札幌市内の中学校女子バスケットボール部は、札幌市の大会で優勝を果たしたという報告も受けています。さらに裸足講習後、ウォーミングアップ等に裸足を取り入れた陸上競技部では、北海道高校駅伝で女子の部優勝、同中学駅伝で男子の部優勝を果たし、全国大会出場を勝ち取ったケースもあるんですよ。裸足はランニングにフォーカスされがちですが、それだけでなく、あらゆる競技種目に効果を発揮しています」

 ご自身で収集・まとめたというデータ資料を手元に置き、細かにご説明してくださった松浦さん。その声には興奮すら感じられるほど、裸足に対する熱意と確信が伝わってきました。

教育現場で“裸足”を広めるには、指導者側の育成が欠かせない

 昨年は年間70回にも及ぶ裸足講習会を北海道内で行った松浦さん。講習会と聞けば、恐らく多くの方は子どもたちに対するレクチャーのようなものをイメージされるのではないでしょうか。もちろん子どもたちを対象としたものもありますが、現在、松浦さんが力を入れているのは教師向けの講習のようです。

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