運動しすぎのサインを見逃した。代償は10日間の休養…疲労を無視するとどうなる? (2/2)
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試合前は、決まって風邪気味だった
その「疲れすぎているのに通い続ける」を、いちばんやっていたのが試合前でした。
私はときどき試合に出ていて、日が近づくと練習の密度も上がります。そして決まって、風邪気味になりました。喉のイガイガ、鼻風邪、微熱。どれかが必ず出ていたんです。
それでも、休む選択肢はなかった
試合の3週間前。前日に追い込みの練習をした翌朝、目が覚めた瞬間から体が重かった。それでも、試合前のこの時期に休むなんて考えられませんでした。疲れている日こそ、ここで動けば強くなる。そう思って、休まずジムに通いました。
今思えば、「朝起きた瞬間から体が重い」のも、運動しすぎの2つ目のサインでした。それでも私は、「試合前だから」と自分に言い聞かせ、そのサインを無視していました。
熱と咳で、練習が止まった
その3日後。練習を終えた頃から、体がだるくて仕方がありませんでした。ただの疲れだと思っていたら、熱が出て、咳が止まらなくなりました。病院で言われたのは、気管支炎。しばらく安静に、と言われました。
練習再開の日、30分で切り上げた
でも、こんなところで止まっている場合じゃない。1週間ほどして、少し楽になった頃、まだ本調子じゃないのにジムに戻りました。動いているうちに、またあのだるさが戻ってきました。おさまりかけていた咳もぶり返して、結局その日は30分で切り上げて帰りました。
動けるまでに10日近くかかった
まともに動けるようになったのは、それからさらに4日後。まる10日近く、思うように練習できないままでした。試合前のいちばん大事な時期に何もできず、あのとき無理せず休んでおけば、と本当に後悔しました。
試合で、いつもより早く息が上がった
体が戻り切らないまま、試合の日がやってきました。スタミナだけは自信があって、最後まで動き続けられるのが私の強みでした。
でも今回は、いつもよりずっと早く息が上がりました。手も足も、思うように力が入りませんでした。
見落としていた、2つの運動しすぎのサイン
振り返れば、体はちゃんと合図を出していました。
・動き出してもスイッチが入らない日
・目が覚めた瞬間から体が重い朝
この2つです。厄介だったのは後者でした。毎日続くうちに普通になって、疑うことすらしなくなる。私がいちばん見落としていたのは、この合図でした。
疲れた日は、休んだほうが強くなれる
私はたった1日休むのが惜しくて、結局10日も練習できなくなりました。気管支炎はこじれて咳喘息になり、完治まで2ヶ月。いままで風邪をひいても3日ほどで治っていたので、ここまで長引いたのは初めてでした。
休んだ方が、動けた
逆に、仕事の予定が重なって、3日ほど練習が空いた時期がありました。久しぶりに戻った日のマススパーで、体にキレがあって、相手の動きにいつもより反応できたんです。
ジムでもランニングでも、家でのトレーニングでも、今日はなんだか体が重いなという日は、思い切って休んでみてください。行かない後ろめたさより、休んだ翌日の軽さのほうが、ずっと気持ちいいはずです。今なら私は、「動き出してもスイッチが入らない日」と「目が覚めた瞬間から体が重い朝」は、迷わず休みます。
専門家に聞いた|運動しすぎのサインと休むべき目安
「今日は休んだほうがいいのかな」と迷っても、運動を続けていると休むタイミングを見失いがちです。
運動しすぎを疑うサインや、どのような状態なら休養を取るべきなのかについて、つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長・中谷 創先生に伺いました。
運動しすぎを疑うサインは?
「朝から体が重い」「ウォーミングアップをしても体が軽くならない」といった症状は、疲労が十分に回復していない代表的なサインです。
そのほかにも、パフォーマンスの低下、安静時心拍数の上昇、筋肉痛や疲労感が数日間続く、睡眠の質や食欲の低下、集中力や意欲の低下、イライラしやすくなるといった変化がみられる場合は注意が必要です。
また、関節や腱の違和感が続いたり、小さなケガや風邪を繰り返したりする場合も、回復が運動負荷に追いついていない可能性があります。
重要なのは「普段の自分」と比較して変化が続いているかどうかであり、日頃から心拍数や睡眠時間、体調を記録しておくと、オーバートレーニングの早期発見につながります。
「今日は休んだほうがいい」と判断する目安は?
休養が必要かどうかは、「疲れた」と感じることよりも、疲労が翌日以降も回復していないかどうかが重要な判断基準です。
朝起きても強い倦怠感が続く、ウォーミングアップをしても身体が軽くならない、パフォーマンス低下や安静時心拍数の上昇が2~3日以上続く場合は、1~3日程度の完全休養を取ることをおすすめします。また、発熱や喉の痛みなど感染症を疑う症状がある場合は、その時点で運動を中止すべきです。
一方、全身状態が良く、局所的な軽い筋肉痛程度であれば、ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどのアクティブレストが血流を促し、回復を早めることがあります。ただし、息が上がるような強度は避け、翌日に疲労を残さない範囲にとどめることが大切です。
専門家に聞いた|運動しすぎるとどうなる?
疲労が十分に回復しないまま運動を続けると、トレーニング効果が下がるだけでなく、ケガや体調不良につながることがあります。
運動しすぎが体に与える影響についても、中谷 創先生に伺いました。
疲労が蓄積したまま運動を続けるとどうなる?
トレーニングによる身体の適応は、運動そのものではなく、その後の休養・栄養・睡眠による回復過程で起こります。
そのため、十分な回復が得られないまま高い負荷を繰り返すと、筋肉の合成よりも分解が優位となり、筋力や持久力の向上が妨げられ、トレーニング効果は大きく低下します。
また、疲労によってフォームが乱れることで、肉離れや腱障害、疲労骨折などのスポーツ障害のリスクも高まります。
短期間の計画的な高負荷トレーニングは競技力向上につながることがありますが、回復不足が続くとオーバートレーニング症候群へ進行する可能性があるため、「休養もトレーニングの一部」という認識を持つことが重要です。
運動しすぎると風邪をひきやすくなる?
適度な運動は免疫機能の維持・向上に役立ちますが、高強度の運動を十分な休養を取らずに続けると、一時的に免疫機能が低下し、風邪などの上気道感染症にかかりやすくなることが知られています。
特に激しい運動後には、免疫細胞の働きが低下する「オープンウィンドウ」と呼ばれる状態が生じます。この時期に睡眠不足や栄養不足が重なると、感染リスクがさらに高まります。
試合前の追い込みや減量期などは、運動だけでなく生活習慣全体を含めた体調管理が重要です。
運動しすぎると早死に・老化につながる?
現在のエビデンスでは、適度な運動を継続している人のほうが、健康寿命・平均寿命ともに長いことが示されています。
一方で、「多ければ多いほど良い」というわけではありません。極端な高強度トレーニングを長期間続け、十分な回復が得られない状態では、慢性的な炎症や酸化ストレスの増加、ホルモンバランスの乱れが生じる可能性があります。
また、一部の持久系競技では、長年にわたる過度な運動によって心筋の線維化や不整脈リスクが高まることも報告されています。ただし、こうした影響は一般的な運動習慣ではほとんど問題にならず、重要なのは運動・栄養・睡眠・休養のバランスを保ちながら継続することです。
運動しすぎると太ることはある?
運動量が増えているにもかかわらず体重が増えることは、決して珍しいことではありません。
過度な運動による疲労は、食欲を増進させるだけでなく、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を高め、脂肪を蓄積しやすい状態を招くことがあります。
また、疲労によって日常生活での活動量(NEAT)が低下し、結果として総消費エネルギーが減少することも少なくありません。
さらに、筋肉の修復やグリコーゲンの回復過程では一時的に水分を保持するため、体重が増加することもあります。
そのため、体重だけで判断するのではなく、体脂肪率や筋肉量、ウエスト周囲径なども含めて総合的に評価することが大切です。
健康的な身体づくりには、「たくさん運動すること」ではなく、「回復できる範囲で継続すること」が最も重要です。
監修者プロフィール
つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長
中谷 創(なかやつくる)
防衛医科大学校卒。つくる整形外科祐天寺駅前スポーツクリニック院長。医学博士、整形外科専門医。
日本スポーツ協会スポーツドクター。ラグビー日本代表の海外遠征などの帯同や東京オリンピック、ラグビーワールドカップの大会ドクターなどを務める。陸上自衛隊在籍中は医官として自衛官の健康管理や整形外科手術を手掛ける。東京、札幌などで勤務。
公式サイト https://tsukuruseikei.jp/
<Text:竹内 佳奈 Edit:編集部>
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