
「デッドリフト」の効果とやり方|初心者~中級者向けメニューを徹底解説
デッドリフトは、全身の筋力を効果的に鍛えることができる代表的な筋トレの一つです。でも「どの筋肉が鍛えられるのか?」「正しいフォームが知りたい」といった疑問が浮かぶのではないかと思います。
初心者でも安心して始められるように、デッドリフトの効果ややり方について詳しく解説。重量設定やグリップの握り方など、具体的なポイントにも触れますので、ぜひ参考にしてください。
<このページの内容>
デッドリフトとは?
デッドリフトとは、床に置かれたバーベルを膝の上まで持ち上げるウエイトトレーニングです。ベンチプレスやスクワットと合わせて行われる「筋トレBIG3(ビッグスリー)」種目の一つとして知られています。
背中や臀部、ハムストリングスなどの筋肉を同時に鍛える優れた種目ですが、フォーム取得が難しいイメージもあり、行っていない人も多いようです。
しかし実際は、背中やお尻など大きな筋肉を効率的に鍛えられるため、筋肥大したい、筋肉量を増やしたい、ダイエットを目指したい初心者にとって、特におすすめのフリーウエイトトレーニングと言えます。
正しいフォームで行うことにより、ケガのリスクを抑えつつ効率的にトレーニングを進められます。
デッドリフトで鍛えられる主な筋肉部位
デッドリフトは下半身および体幹の筋肉を使い、体の後ろ側の背中や臀部を鍛えるのに適した筋トレメニューです。具体的に鍛えられる筋肉部位に合わせて、得られるメリットについて解説します。
脊柱起立筋(背中)
「重い物を持ってもブレない安定感」「スポーツ競技で当たり負けしないカラダ」「腰痛予防」などに影響する筋肉です。
僧帽筋(肩)
「ガッチリとした首まわりにしたい」「いかり肩を解消したい」などはこの筋肉が影響します。
広背筋(背中)
「広い背中」「スッキリとした脇まわり」など、後ろ姿のスタイルに影響します。
大臀筋(お尻)
「引き締まったお尻」「ヒップアップ」などお尻の形を作るために影響します。
ハムストリングス(太もも裏)
太ももの裏側に付着しており、膝を曲げる動作や、股関節を動かして脚を後ろに持ち上げる動作に影響します。
「初心者」におすすめ!基本のデッドリフトのやり方
デッドリフトは全身を鍛える効果的な筋トレですが、初心者は基本のフォームをしっかりと身につけることが重要です。
1.足を肩幅に開いて立ち、つま先は正面に向ける
2.股関節と膝を曲げ、両手でバーベルを持つ
3.カラダの前面(スネや太もも)に沿わせるように、バーベルを持ち上げていく
4.胸を張って背筋を伸ばす
5.持ち上げる際と同様に、バーベルをカラダの前面に沿わせながら、スネの位置まで下ろしていく
肘ではなく、カラダを起こす力で持ち上げるのがポイント。初心者は軽めの重量から始めて、まずは正しいフォームを習得することが大切です。
なお、この基本のデッドリフトのことを「コンベンショナル・デッドリフト」とも呼びます。
バーベルの握り方
初心者は、まだ重量が軽い初めのうちは、両手の甲を外側に向けるオーバーハンドグリップで行なっても良いとは思いますが、慣れてきて重量を増やす場合は、右と左を逆にするオルタネイトグリップがおすすめです。
理由は、重量の負荷が増していくとバーベルが回転して、手から離れてしまうリスクがあるからです。また、オーバーハンドグリップの場合、手から離れるのを防ぐために腕に負荷が掛かりすぎることで、結果として本来効かせたい背中や足にフォーカスできなかったり、腕に気をとられることでフォームが安定しなかったりします。
ただしご自身の感覚で、オーバーハンドグリップのほうが持ちやすいのであれば、それでも構いません。ケガをしない、正しいフォームに集中できる持ち方を見つけていきましょう。
デッドリフトの種類
デッドリフトには様々な種類があり、それぞれ異なる筋肉を効果的に鍛えることができます。どのような効果があるのか、またどのように行うのが良いのかなど、デッドリフトの各種類について詳しく解説します。
初心者から中級者まで、目的に応じた最適なデッドリフトを選ぶ参考にご覧ください。
ハーフ・デッドリフト
ハーフ・デッドリフトは、ウェイトをセーフティーバーに置いた状態から始めます。通常のデッドリフトよりも高い位置から始めることで、腰への負担を軽減しつつ、背中やハムストリングスを効果的に鍛える方法です。フォームも崩れにくいため、初心者にもおすすめのトレーニング方法です。
1.セーフティーバーを膝の上あたりに設定する
2.バーベルを上から両手で掴み、背中をまっすぐに保ったままバーベルを持ちあげる
3.広背筋に力を入れ、肩甲骨を真ん中に寄せる
4.背中をまっすぐに保ったまま、ゆっくりバーベルを下ろしていく
5.セーフティーバーにバーベルが触れたら、再びバーベルを持ちあげる
15回×3セットを目安に行う
ルーマニアン・デッドリフト
ルーマニアン・デッドリフトは、通常のデッドリフトと比べて、ハムストリングスと臀部を重点的に鍛えるトレーニングで、筋力だけでなく、柔軟性の向上にも役立ちます。バーベルを持った状態でスタートするので、比較的負荷が少なく、初心者も取り組みやすいトレーニングといえるでしょう。
1.足を腰幅か肩幅程度に狭めに開いて、両手でバーベルを握る
2.膝は軽く曲げ、背筋をまっすぐに保ちながら、腰を引いて上体を前傾させる
3.バーベルを太ももに沿って動かし、ハムストリングスにストレッチを感じるまで下げる
4.腰を押し出すようにして上体を元の位置に戻す
15回×3セットを目安に行う
スティッフレッグド・デッドリフト
スティッフレッグド・デッドリフトは、膝をほとんど曲げずに行うことで、ハムストリングスと下背部を集中的に鍛える方法です。腰への負担に繋がりやすいので、正しいフォームで行うことがより一層重要です。
1.肩幅より広めにバーベルを持ち、足を腰幅より狭く開いて立つ
2.膝を曲げずに、腰を前に倒しながらバーベルを膝下まで下ろす
3.ハムストリングスがしっかりと伸びるのを感じたら、腰を起こして元の位置に戻る
15回×3セットを目安に行う
スモウ・デッドリフト
スモウ・デッドリフトは、相撲の四股を踏むような姿で行います。通常のデッドリフトよりも広いスタンスで行うことで、内転筋や臀部を強化するトレーニングです。広いスタンスにより、腰への負担が軽減され、より大きい重量を持ち上げられるようになります。
1.バーベルを床に置き、足を肩幅よりも広く開いて立つ
2.つま先は外側に向けて、背中をまっすぐに保ち、膝を軽く曲げながら腰を下ろす
3.肩幅程度の間隔で両手でバーベルを握る
4.かかとに重心を置きながら、足を使ってバーベルを持ち上げる
5.バーベルが膝を通過したら、腰を前に押し出すようにして体を完全に伸ばす
6.ゆっくりとバーベルを元の位置に戻す
15回×3セットを目安に行う
パワーラック・デッドリフト
パワーラック・デッドリフトは、パワーラックを使用して安全に高重量を扱うことができるトレーニングです。
1.パワーラック内、膝のすぐ下あたりにバーベルをセットする
2.足を肩幅程度に開き、つま先をわずかに外側に向けて立つ
3.腰をしっかりと落とし、背筋を伸ばした状態でバーベルを握る
4.息を吸いながら、膝と腰を同時に伸ばし、バーベルを持ち上げる
5.バーベルをゆっくりと元の位置に戻す
15回×3セットを目安に行う
ダンベル・デッドリフト
ダンベル・デッドリフトは、バーベルの代わりにダンベルを使ったデッドリフトのことです。バーベルに比べてより柔軟な動きが可能なので、バランスの向上や体幹の安定性を高める効果があります。
1.足を肩幅に広げ、両手にダンベルを持つ
2.背中をまっすぐに保ち、膝を軽く曲げた状態で、腰を引きながら足のラインに沿うようにダンベルを下ろす
3.太ももが床と平行になる位置まで下げたら、かかとを押しながら元の姿勢に戻る
15回×3セットを目安に行う
ケトルベル・デッドリフト
ケトルベル・デッドリフトは、バーベルの代わりにケトルベルを使うことで、体幹の安定性を高めながら筋肉を鍛えるトレーニングです。ケトルベルという独特の形状を持つ重りを使用することで、通常のデッドリフトとは異なる負荷がかかり、筋肉の発達を促進します。
1.足を肩幅に開き、ケトルベルを足の間に置く
2.背筋を伸ばし、膝を軽く曲げて腰を落としながら、両手でケトルベルのハンドルをしっかりと握る
3.かかとに重心を置きながら、膝と腰を伸ばしてケトルベルを持ち上げる
4.ケトルベルを持ち上げたら、ゆっくりと元の位置に戻す
15回×3セットを目安に行う
「中級者」はサポート器具を使うのもおすすめ
デッドリフトに慣れてきた中級者の方々にとって、さらなる筋力向上やフォームの安定を目指す際にサポート器具の利用は非常に有効です。重い重量を持ち上げる際には、手の握力や腰の安定性が課題となることが多く、これらの問題を解決するために専用の器具が役立ちます。
デッドリフトの効果を最大限に引き出すためのサポート器具の使い方について、詳しく解説します。
パワーグリップ・ストラップ
パワーグリップやストラップは、デッドリフトを行う際の握力を補助するための器具です。これらの器具を使用することで、手の疲労を軽減し、より重い重量を持ち上げることが可能になります。特に、握力が先に限界を迎えてしまう方にはおすすめです。
使用方法は簡単で、バーベルに巻き付けて手首に固定するだけ。これにより、握力に頼らずにしっかりとバーベルを保持できるため、トレーニングに集中できます。ただし、ストラップに頼りすぎると握力の強化が遅れる可能性があるため、バランスを取りながら使用しましょう。
リフティングベルト
リフティングベルトは、腰部をサポートし、デッドリフト時の姿勢を安定させるための器具です。特に重い重量を扱う際には、腰への負担を軽減し、怪我のリスクを減らす効果があります。
ベルトを適切に装着することで、体幹の安定性が向上し、より効率的に力を発揮することができます。
ベルトはただ巻いているだけでは効果がありません。お腹を目一杯へこませた状態できつく巻くことで、腹圧が最大限まで高まります。
ただし、過度に締めすぎると逆に動きが制限されるため、適切なフィット感を見つけることが大切です。リフティングベルトは、特に高重量でのトレーニングを行う中級者にとって、効果的なサポート器具といえるでしょう。
【必見】デッドリフトで注意すべき7つのポイント
デッドリフトは筋力トレーニングの中でも特に効果的な種目ですが、正しいフォームを守らないと怪我のリスクが高まります。デッドリフトを行う際に注意すべき7つのポイントについて、詳しく解説します。
デッドリフトはトレーニング前半に行う
デッドリフトは、全身の筋肉を使うため非常にエネルギーを消耗します。そのため、筋肉の疲労が少ないトレーニング前半に行った方が、高重量を扱うことができ、多くの筋肉を効率よく鍛えることができるでしょう。
また、高重量を扱うときは集中力も必要なため、疲労が溜まっていない前半の方が正しいフォームや動作を行いやすいといえます。
背中は丸めない
デッドリフトを行う際に、もっとも重要なのが、背中を丸めずに自然なアーチを保つことです。背中が丸まると、腰に過度な負担がかかり、腰痛や怪我の原因となります。
ケガを防ぐためにも動作中は胸を張り、腰を少し反らせたような姿勢を保持して行うことが大切です。これは、軽い負荷で行っている時でも必ず意識しましょう。
できるだけバーの軌道をカラダに近づける
デッドリフトでは、バーの軌道を体に近づけることが大切です。バーが体から離れると、重心がずれ、腰や背中に余計な負担がかかることになります。バーがスネに触れるくらいの距離を保ち、引き上げる際も体に沿わせるように意識しましょう。これにより、効率的に力を伝え、怪我のリスクを減らすことができます。
高重量でしっかり追い込む
デッドリフトは、高重量を扱うことで筋力を飛躍的に向上させることができます。適切な重量設定で、限界まで追い込むことがポイントです。ただし、無理に重い重量を扱うとフォームが崩れる可能性があるため、まずは正しいフォームを習得することを優先しましょう。徐々に重量を増やしながら、筋力を効果的に鍛えていきましょう。
定期的にストレッチを交えて行う
デッドリフトを効果的に行うためには、柔軟性が非常に重要です。柔軟性が不足していると、正しいフォームを保つことが難しくなり、怪我のリスクが高まります。
特に、ハムストリングスや股関節の柔軟性は、バーを持ち上げる際の腰や背中の適切な動きをサポートします。柔軟性があることで、動作範囲が広がり、より多くの筋肉を効果的に刺激することができるでしょう。
柔軟性を向上させるためには、トレーニング前後にストレッチやヨガなどの柔軟運動を取り入れることが有効です。
デッドリフトに関するよくある質問
デッドリフトを行うにあたって、よくある疑問に回答!事前に疑問を解消して、トレーニングをより効果的に進めましょう。
Q.デッドリフトとスクワットの違いは?
A.どちらも下半身を中心に鍛える主要なエクササイズですが、動作や効果には明確な違いがあります。
<鍛えられる筋肉部位の違い>
大雑把に分類するならば、デッドリフトは体の裏側(背中や臀部)、スクワットは太腿の前面(大腿四頭筋)と腰を鍛えるのに適しています。
デッドリフト:ハムストリングス(太もも裏)、臀部(お尻)、背中
スクワット:大腿四頭筋(太もも前)、臀部(お尻)、ふくらはぎ
<動作と効果の違い>
デッドリフト
動作:床からバーベルを持ち上げる
効果:体幹の安定性を高める
スクワット
動作:しゃがみ込む
効果:下半身の筋力を全体的に強化する
デッドリフトは主に背中やハムストリングス、臀部を鍛えるのに対し、スクワットは大腿四頭筋や臀部、ふくらはぎを重点的に鍛えます。動作の違いとしては、デッドリフトは床からバーベルを持ち上げる動作が中心であるのに対し、スクワットはしゃがみ込む動作がメインです。
また、デッドリフトは体幹の安定性を高める効果があり、スクワットは下半身の筋力を全体的に強化する効果があります。このように、目的や鍛えたい部位によって使い分けることが重要です。
Q.デッドリフトの重量設定はどう決める?初心者は何キロ?
A.一般的に、初心者は自分の体重の50%からスタートするのが良いとされています。
これにより、フォームを正しく保ちながら安全にトレーニングを続けることができます。
重量設定を行う際には、無理をせず、自分の体力や経験に応じて調整することが大切です。フォームが崩れない範囲で徐々に重量を増やしていくことで、効率的に筋力を向上させることができます。
Q.デッドリフトのRMの目安は?
A.筋力増強を目的とする場合は1〜5RM、筋肥大を目指すなら6〜12RM、筋持久力を高めたい場合は15RM~20RM以上が目安です。
デッドリフトの重量設定を考える際、RM(Repetition Maximum)は非常に役立つ指標です。RMとは、最大で何回持ち上げられるかを示す数値で、筋力レベルに応じた目安を知ることができます。
目的に応じてRMを設定し、効果的なトレーニングを行いましょう。
Q.握力が持たなくなったらどうすればよい?
A.オルタネイトグリップ方式で持つのがおすすめです。
デッドリフトでは、重量が増すにつれて握力が限界を迎えることがあります。そんな時には、オルタネイトグリップ方式を試してみましょう。
この方法では、片方の手のひらを前に、もう片方を後ろに向けてバーを握ります。これにより、バーが転がることを防ぎ、より重い重量を持ち上げることが可能になります。握力を補助しつつ、安全にトレーニングを続けましょう。
著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。スポーツ系専門学校での講師や健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師経験も多数。そのほか、テレビや雑誌でも出演・トレーニング監修を行う。日本トレーニング指導者協会JATI-ATI。
公式HP/公式Facebook
<Text:和田拓巳/Photo:角谷剛>
監修者プロフィール
株式会社ストレージ王
坂上 正洋(さかうえ・まさひろ)
大学時代パワーリフティングで全日本2位。ボディビル全日本出場経験あり。
現在は少年野球の監督を行っている。
サービスサイト:https://www.storageoh.jp/
コーポレートサイト:https://www.storageoh.co.jp/
※本記事は2024年に公開された内容に、坂上 正洋氏の監修を追加しました。(2025年5月 追記)