フィットネス
2020年10月14日

スクワットとデッドリフト、どっちが苦手?弱点の見分け方と克服トレーニング

 数多くある筋トレの種目のうち、ビッグ3と呼ばれるのが「スクワット」「デッドリフト」「ベンチプレス」です。このうち、スクワットとデッドリフトは主に下半身、ベンチプレスは主に上半身を鍛えることができます。

 スクワットはバーベルを肩に担ぎ、一旦しゃがみ込んで立ち上がります。そしてデッドリフトは、床に置かれたバーベルを膝の上まで持ち上げます。どちらも股関節と膝関節を屈伸させる複合関節動作で、日常生活で使う機能的動作(しゃがむ、立ち上がる、モノを持ち上げる)であることも共通しています。

 中級者レベル以上の人なら、スクワットとデッドリフトの両方を組み込んだ筋トレ計画が必須です。しかし、スクワットに比べてデッドリフトが弱い、あるいはその逆のパターンになる人は少なくありません。ここで、自分がスクワット寄りかデッドリフト寄りかを判断する方法と、もし弱点があった場合の克服トレーニングをご紹介します。

スクワット寄りかデッドリフト寄りか見分ける方法

 自分がスクワット寄りタイプなのかデッドリフト寄りタイプなのか。それを判断する前に、まずはそれぞれの1RM(最大挙上重量)を把握することが前提になります。

関連記事:筋肥大を狙う筋トレに必須の指標「1RM(最大挙上重量)」とは?正しい測定方法を解説

 そのうえで、スクワットとデッドリフトの1RMを比較してみてください。スクワットの1RMがデッドリフトの80~85%以内に収まっている人は、最適のバランスだと言えますのであまり心配することはありません。もしスクワットの1RMがデッドリフトのそれの80%以下なら、スクワットが弱すぎる(デッドリフト寄り)、逆に85%以上ならデッドリフトが弱すぎる(スクワット寄り)だと判断してください。

 このことをポジティブに捉えて言い換えるならば、デッドリフト寄りならスクワットを向上させる筋力のポテンシャルがあるということ。その逆もまた然りです。 

スクワットとデッドリフトで得意・不得意が生まれる理由

メインで使用する筋肉の違い

 スクワットもデッドリフトも、下半身および体幹の筋肉を総動員する動作です。ただし、メインで使用する筋肉群には多少の差異があります。スクワットでは臀部と大腿四頭筋、ふくらはぎなどを比較的多く使用しますが、デッドリフトではそれが背中、臀部、ハムストリングスになります。

 これはかなり大雑把な分類ですが、これらの筋肉群のどこかに弱点(筋力、柔軟性、可動域など)があれば、それがそのまま動作の不得意に繋がっている可能性があるでしょう。

動作範囲と所要時間の違い

 バーベルを上下させる距離は、スクワットの方がデッドリフトより長くなります。つまり、それだけ仕事量が多くなるわけです。

 スクワットはしゃがみ込むときに息を吸って、立ち上がるときに息を吐きますが、デッドリフトでは一気に息を吐いて立ち上がります。そのため、自然とスクワットの方がデッドリフトより1動作にかかる所要時間も長くなるでしょう。

スクワットは動作時間中に体を安定させるため、小さな筋肉群の筋力とバランス感覚が大切です。一方のデッドリフトは、それよりも爆発的なパワーがより大切になります。

体格、性別、年代の違い

 前述した2つの理由と密接に関連しますが、背の高い人は一般的にスクワットが不得意です。女性は男性に比べると瞬発力より持久力に長けている傾向があるので、デッドリフトが不得意になる場合が多いでしょう。また、男女ともに年齢が上がると瞬発力が衰えていくので(持久力は比較的維持しやすい)、加齢もデッドリフトの不得意を招く要因になります。

 理由がどうあれ、スクワットかデッドリフトのどちらかに偏っていると分かったら、その動作をより多く練習することが一番の弱点克服方法です。しかし、どちらも負荷が非常に高い動作ですので、毎日行うわけにはいかないでしょう。そこで、比較的負荷が軽く、それぞれの動作でよく使う筋肉を効率的に鍛える補強種目をいくつか紹介します。

デッドリフト寄りな人のスクワット練習方法

ウォール・スクワット

 壁に向かって近い位置で立ち、両手を上に伸ばして、ゆっくりした動作でスクワットを行いましょう。スクワットのフォーム矯正と同時に、柔軟性の向上に効果があります。

◎ポイント

・壁と体との距離を一定に保つ
・膝をつま先より前に出さない
・上体をまっすぐに保つ
・かかとに体重を乗せる

荷重ステップアップ

 膝くらいの高さのボックスを昇り降りします。両手にダンベルをぶら下げても構いませんが、それより塩ビ(PVC)パイプやバーベルなどを肩に担ぐと、よりスクワットに近い動作になるでしょう。

◎ポイント

・ボックスに乗せた足(軸足)に力を入れて登る
・上体をまっすぐに保つ
・両足を交互に行う

スクワット寄りの人のデッドリフト練習方法

グッド・モーニング

 塩ビ(PVC)パイプやバーベルなどを肩に担ぎ、お辞儀をするように上半身を前に倒します。5~8回ぐらいできる重さを目安に、少しずつ重量を増やしていきましょう。最終的にはスクワットの半分ぐらいの重量が目標です。普段は意識しづらい、ハムストリングスを使う感覚を養うことが狙いとなります。

◎ポイント

・両足は肩幅ほどに開く
・膝は軽く曲げる
・背中は丸めない(腰を蝶番のように使う)
・お尻と太股の裏側(ハムストリングス)を刺激する

片足ルーマニアン・デッドリフト

 ケトルベルやダンベルを両手あるいは片手に持ち、上半身を前方に倒すと同時に片足を後方に伸ばしましょう。狙いはグッド・モーニングと同様ですが、この種目では片足ずつ行うため、左右のバランス改善も期待できます。

◎ポイント

・軸足の膝は軽く曲げる
・上半身が地面と平行になるまで前に倒す
・一旦停止してバランスを保つ
・片方の足が弱ければ、そちらの回数を増やす

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text & Photo:角谷剛>