疲れが取れないのは「脳疲労」が原因かも。専門家に聞いた、脳の疲れを回復させる方法 (1/5)
※本記事の内容は、2022年11月時点までの研究によるものです。
なんだか最近、休んでも疲労回復していない気がする。ボーっとする、ささいなことでイライラしやすい。もしかすると、体の疲れ以外に、脳の疲労も蓄積している可能性があります。
今回は、脳疲労についてくわしい、⼈間性脳科学研究所所⻑で武蔵野学院⼤学・⼤学院教授の澤⼝俊之先生にお話を伺いました。脳疲労とはどんな状態なのか、脳疲労を引き起こしやすい要因や職業、また脳の疲れをとる過ごし方などを聞いていきます。
[プロフィール]
澤⼝俊之(さわぐち・としゆき)
人間性脳科学研究所所長/武蔵野学院大学・大学院教授。専門は神経科学、認知神経科学、社会心理学、進化生態学、理学博士。近年は乳幼児から高齢者の幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。最新の著書に「仕事力が劇的に上がる脳の習慣」がある。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」NHK「所さん!事件ですよ」等、TV番組にも出演。
脳疲労とはどんな状態を指す?
脳疲労とは、医学的にどんな状態を指すのでしょうか。澤⼝先生によるとキーワードは“前頭前野”、現象的には“低酸素”と“神経炎症”、そして神経伝達物質の一種の“グルタミン酸の過剰”が挙げられると述べています。
「脳の疲労というのは、非常に難しく、研究が進んでいないもののひとつです。脳疲労のキーワードのひとつに『前頭前野』というのがあります。一番わかりやすいのは、酸素が減っている状態。低酸素が前頭前野の活動を低下させ、脳疲労状態を引き起こします。あとは神経炎症。たとえば脳の炎症によって脳の働きが鈍ってしまう『ブレインフォグ』も脳疲労に関係します。それも一種の脳疲労ですね。最近では、前頭前野に神経伝達物質の一種であるグルタミン酸が溜まると、脳疲労の状態になるということも分かってきました」(澤⼝先生)
ちなみに、運動で起こる疲れも前頭前野が関係しているといいます。
「アスリートが負荷の高いトレーニングを行って疲れているときは、認知機能が落ちています。低酸素状態で運動を続け、前頭前野の酸素量が減ってしまうと、自覚はないものの脳は疲れている状態になっています」(澤⼝先生)
自覚がなくても脳は疲労することがあると語る澤⼝先生。自覚がある場合、たとえばどのような症状が現れてくるのでしょうか。
「自分で気が付きやすい症状としては話すのが遅くなったり、怒りっぽくなる、仕事が遅くなる、注意が散漫する、よく眠れないなどです。また、アルコールを含むものをよく摂取するようになるなど食生活が変わる。うつ状態で、過剰に心配をするようになるなどがあげられます。現代は非常に疲労がたまっている人が多い状況ですね。認知機能のテストを行うと、脳が疲れているのかどうかがわかります」(澤⼝先生)
脳疲労になりやすい人、なりにくい人
現代人の多くが、脳疲労になりやすい状態である。では、具体的にはどういった人が脳疲労になりやすいのでしょうか。