ヘンププロテインとはどんな効果があるのか、おすすめ商品セレクト
ウェルネスフード
2024年5月29日

ヘンププロテインの効果とは。副作用やデメリット、おすすめ商品8選[医師監修]

「ヘンププロテイン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。ヘンププロテインは、ヘンプシードから抽出されるプロテインパウダーです。どんな効能やメリットがあるのか、筋トレやダイエットでプロテインを飲んでいる人を始め、健康志向の人々の間で注目を集めています。

この記事では、ヘンププロテインの栄養と効果的な飲み方、また商品の買い方などについて、医学博士であり、循環器内科専門医で医療法人三橋医院理事長の藤井崇博先生にお話を伺いました。

大麻が原料=違法と思われやすいのですが、その安全性や、がんになるなどの健康被害での危険性、またCBDとの違いについても回答しています。

ヘンププロテインとは

あまり聞きなれないヘンププロテイン。何から作られていて、どんな特徴があるのでしょうか。

「ヘンププロテインは、日本人の間でも古くから日常生活の中で使用されていた“麻の実”からつくられるヘンプ(産業用大麻)を使用したプロテインです。ヘンプの種子は硬い殻で覆われており、殻つきの種子は麻の実として、七味唐辛子や漢方薬として日常で利用されています」(藤井先生)

「ヘンププロテインは麻の実をすりつぶしてパウダー状にしたもので、クセの少ないナッツのような風味と栄養価の高さからも世界中で人気になっています。ホエイやソイなどと比べると比較的新しいプロテインで、はじめて聞くという方も多いかと思いますが、最近の世界的なビーガン食の普及に伴い、ビーガンプロテインの一つとしても注目を集め始めています」(藤井先生)

ヘンププロテインは安全なのか。違法性や危険性は?

昔から使用されてきたうえ、今も七味唐辛子の中に使われている麻の実から作られたと聞き、ぐっとハードルも下がりました。それでもやっぱり“大麻”というと警戒心が沸き起こるのも事実。そのあたりについて、藤井先生の見解とは。

「やはり大麻と聞くと、安全性がどうしても心配になる方もいらっしゃるかもしれませんが、ヘンププロテインは麻薬の一種として法律で禁止されているものではありません。大麻取締法第一条では『大麻とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く)、並びに大麻草の種子及びその製品を除く(*1)』とあり、ヘンププロテインは大麻草の種子なので取り締まり対象外です。また、ヘンププロテインの原料である麻の実は、七味唐辛子や漢方薬としても利用されている安全なものなので心配はなさらないで下さい」(藤井先生)

(*1)厚生労働省 大麻取締法 第一章 第一条

ヘンププロテインのタンパク質量と、期待できる効果

安全性が分かったところで、次に気になるのはヘンププロテインのメリットです。どんな栄養成分と働きがあるでしょうか。

「ヘンププロテインにはタンパク質が含まれており、100gあたり50g程度のタンパク質含有量で摂取した量の半分がタンパク質として吸収されます。タンパク質以外にもカルシウム、リン、カリウム、鉄分、亜鉛などのミネラル成分が豊富です。ミネラルが不足すると、うつ症状、肌荒れ、肩こり、口内炎、体重増加、免疫力などさまざまな心身の状態が引き起こされます。なぜミネラル成分が豊富かというと、他のプロテインのほとんどが加熱処理されるのに対して、ヘンププロテインは加熱せずに砕いて粉にしているためで、植物がもつミネラル成分を失わずに摂取することができます」(藤井先生)

「同じ理由で、食物繊維や必須脂肪酸(リノール酸、α-リノレン酸など脂肪酸の中でも人間が体内で生成できない脂肪酸のこと)も豊富です。食物繊維は腸の調子を整えたり、血中コレステロールの低下に効果を発揮します。必須脂肪酸のほうは生命活動の重要なエネルギー源として使われるほか、細胞を構成するための必要な要素にもなります。このようにヘンププロテインは、他のプロテインよりも健康維持への効果が期待できる成分を比較的多く含んでいます」(藤井先生)

プロテインというとタンパク質補給のイメージでしたが、ヘンププロテインは健康面でもさまざまなメリットがあるのですね。

では、多くのプロテインの中で、あえてヘンププロテインを選ぶ理由とは。

ヘンププロテインを選ぶメリット。肌、髪の毛にも良い影響

ヘンププロテインはアレルギー成分が少ない

「麻という植物は一年草で生命力が非常に強く、栽培に農薬、化学肥料などを必要としないため、残留農薬の心配もなく、身体にやさしい植物であると言えます。また、栄養価も高く、基本的に安全性が保証されたオーガニック食品です。先述したように、ソイやホエイ、カゼイなどの原料である大豆や牛乳は人によってはアレルギーを発症することもありますが、ヘンププロテインにはアレルギー成分はほとんど存在しないため、アレルギーをお持ちの方でも安心して摂取できるのです」(藤井先生)

また、ヘンププロテインは、プロテインでお腹を壊してしまう人にもおすすめだそう。

「一般的によく売られているホエイやカゼインなど、牛乳を原料としたプロテインを飲むと、お腹の調子が悪くなってしまう方がいます。これは乳糖不耐症が原因のことが多く、残念なことに乳糖不耐症は日本人に多い体質です。ただ、乳糖不耐症の方でも100%植物性のヘンププロテインであれば、乳糖不耐症による不調の恐れなく飲むことができます」(藤井先生)

関連記事:【乳糖不耐症】プロテインでお腹を壊す…対処法は?|マッスルデリ管理栄養士が解説

血糖値の急激な上昇を防ぐ、便秘解消をサポート

美容面やダイエットにおいても、多くのメリットが期待できます。

「ヘンププロテインには水溶性の食物繊維がたくさん含まれています。水溶性食物繊維は、小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。血糖値が急激に上昇すると、インスリンという物質が過剰分泌することで体脂肪が蓄積されやすくなります(その上昇速度はGI値:グリセミックインデックスと言われます)が、血糖値の急激な上昇を抑えることで、脂肪を蓄積しにくくなります。血糖が急激に上昇しやすい白い炭水化物(白米など)などと一緒に摂取することで、血糖の上昇を抑えてくれる効果が報告されています。ちなみにヘンププロテインには不溶性食物繊維も含まれており、不溶性食物繊維は水に溶けずに、水分を吸収して腸の運動を促し排便を促す作用があります」(藤井先生)

肌や髪の毛にいい影響も!

「他の食品と比較しても、同じ摂取量でのタンパク質含有量が多く、タンパク質は肌や髪の毛の材料になるため、美肌効果、頭髪のアンチエイジングなどにも良い影響が期待できます」(藤井先生)

貧血改善への可能性は?

貧血に良いという声もありますが、藤井先生いわく「現在のところヘンププロテインと貧血の関係は論文等では発表されていないです」とのことでした。

ヘンププロテインのデメリット

うれしいコト尽くしに思えるヘンププロテインですが、デメリットや副作用、他プロテインと比べて不足している要素などはあるのでしょうか。

アミノ酸スコアが低い

「ヘンププロテインは数種類のアミノ酸・必須アミノ酸を含んでいますが、リジンとロイシンの含有率が低いです。アミノ酸スコアを少し解説すると、アミノ酸スコアとは、9種類の必須アミノ酸(ロイシン・イソロイシン・リジン・スレオニン・トリプトファン・メチオニン・ヒスチジン・バリン・フェニルアラニン)がバランス良く含まれているかどうかを評価します。アミノ酸スコアが低い場合は9種類の必須アミノ酸のうちどれかが少ない可能性があります。体内で十分なタンパク質を作るためには、必須アミノ酸がバランス良く含まれる、アミノ酸スコアが高い良質なタンパク質の摂取が推奨されています」(藤井先生)

関連記事:アミノ酸スコアとは。「アミノ酸スコア100」の意味とスコアの高い食材│管理栄養士の食トレ学

価格が高い

「ヘンププロテインは一般的なプロテインよりも基本的に値段が高く設定されています。さらに光で酸化してしまうため、あまり長く(開封してから2ヶ月程度)保存できません。そうなると飲む回数も多くなり、結果お金もかかってしまうというデメリットが懸念されます」(藤井先生)

癌(がん)、肌荒れ……ヘンププロテインの気になるウワサ

ヘンププロテインを飲むと肌荒れするってホント?

「現時点では特にそういった報告はされていません」(藤井先生)

腎臓に悪い、がんになるってウワサは本当?

「違法薬物である合成カンナビオイドでは腎障害や発がん性は報告されていますが、天然成分であるヘンプやCBDに関してはむしろ抗がん作用が報告されています」(藤井先生)

ヘンププロテインを選ぶときのポイント

ヘンププロテインについていろいろ学べたところで、実際に買おうと思っている人向けに、購入時に確認するとよいポイントについて教えてもらいました。

製造元、メーカーの確認

ヘンププロテインは基本的に無農薬で化学肥料を使わないオーガニック製品であることが大前提なのですが、製造元でオーガニック認証を取得しているかは確認しておきましょう。

価格

ヘンププロテインは一般的なプロテインよりも基本的に値段が高く設定されています。プロテインは飲み続けることが大事なのはもちろんですが、ヘンププロテインは光で酸化してしまうため、あまり長く(2ヶ月程度)保存できません。

ヘンププロテインを飲み始めるときは、なるべく続けやすい価格帯のものを選ぶようにしましょう。

編集部ピックアップ!ヘンププロテインおすすめ6選

グロング GronG ヘンププロテインパウダー 500g

甘味料・保存料・着色料 無添加。プロテインでおなじみのトータルスポーツブランド「GronG(グロング)」から展開されています。

カカベル ヘンプ プロテイン パウダー<公式420g>

北米No.1ブランドのヘンプオイルカナダ社から展開されている、低温圧搾未精製のカナダ製ヘンプパウダー。完全無添加で米国食品医薬品局(FDA)によるGRAS認可を受けています。

【HEMPS】有機 ヘンププロテイン 140g

EUオーガニック認証取得・国内有機JAS認定取得。140gというミニサイズとお値段もあり、試してみたい初心者におすすめ。成城石井・ビオセボン・イオンボティなど大手スーパーで取扱いも。

HEMP STYLE ヘンププロテイン パウダー 非加熱 カナダ産 500g

原料の麻の実はカナダ保健省の認可を受けた農場で、農薬・除草剤・防腐剤フリーのものを使用。もちろん低温圧搾未精製で、保存料・着色料・甘味料もフリー。

アマナ ナチュラル ヘンプ プロテイン【500g】計量スプーン付

500gと使いきりやすいサイズ、しかもスプーンつきという点がうれしい。原料はカナダ産の麻の実のみ。

オーガニック村 麻の実 粉末 ヘンププロテイン パウダー450g

無農薬で除草剤不使用、完全無添加。検査を受けた農場で有機栽培された麻の実のみ使用しています。

LikeyHEMP ヘンププロテイン ヘンプ パウダー 500g

保存料・着色料・甘味料は一切使用しておらず、完全無添加。原料の麻の実は低温圧搾未精製で、カナダ保健省の認可を受けた農場にて栽培されています。農薬・除草剤・防腐剤フリー。

LikeyHEMP ヘンププロテイン ヘンプ パウダー 500g カナダ産 無添加 無農薬 食物繊維 自然栽培 麻の実 (1)
LikeyHEMP

ジュリア カナダ産 ヘンププロテインパウダー(500g)

プレーンフレーバーなので、素材そのものを楽しむことができます。カナダ産の無農薬栽培で育った麻の実を微細粉末化しており、異臭味の少ないのが特徴。

ヘンププロテインとCBD、何が違う?

最近よく耳にするようになったCBDですが、ヘンププロテインとはどう違うのでしょうか。

「ヘンプとCBD(カンナビジオール)は、両方ともヘンプ(産業用大麻)から作られますが、抽出法が異なります。ヘンプは、ヘンプの種からコールドプレス製法(低温圧搾)で抽出され、コールドプレス製法で抽出されたヘンプシードオイルには、主にオメガ3系脂肪酸やガンマリノレン酸(GLA)などが含まれるので、食用やコスメ製品の材料として使用されることがあります。一方、CBDオイルは、ヘンプの種子と成熟した茎から超臨界抽出法を使用して抽出されたカンナビノイドの一種であるCBDを含んでいます。CBDオイルには、オメガ3系脂肪酸などヘンプに含まれるような栄養ではなく、脂質の代謝を調節する栄養素であることが研究などでわかってきています」(藤井先生)

関連記事:CBDとは。効果と使い方、安全な選び方をメーカー開発担当者に聞いてみた

ヘンププロテイン、おすすめの飲み方と飲むタイミング

ここからは、ヘンププロテインの飲み方についてです。どんなときに飲むのが適しているでしょうか。

「プロテイン摂取のタイミングとしては起床時やトレーニング後、就寝前、おやつ代わりにお食事のサポート的に摂取するのが良いかと思います」(藤井先生)

1日にどれくらい飲むと良いのでしょうか。推奨摂取量の目安を教えてください。

「1日に摂るタンパク質の量は、性別によって異なります。男性は女性よりも、一般的に筋肉量が多く、基礎代謝が高い傾向があります。そのため、エネルギー源として機能するタンパク質の必要量が異なるためです。性別の他にも、日常の運動量によっても同じ理由で目安摂取量が異なります。詳しくは以下をチェックしましょう」(藤井先生)

タンパク質摂取量の目安

  • 男性の場合:男性は、1日に65g程度のタンパク質を摂取するようにしましょう。
  • 女性の場合:女性は、1日に50g~55g程度のタンパク質を摂取するようにしましょう。
  • 軽い運動をする人の場合:フィットネスなど軽い運動をしている人は、体重1kgあたり1.2g~1.6gを目安にタンパク質を摂取しましょう。体重50kgの人の場合、60g~80gです。
  • 強度の筋トレを行っている人の場合:強度の筋トレに励む筋トレ民は、体重1kgあたり1.6g~2.0gを目安にタンパク質を摂取しましょう。体重50kgの人の場合、80g~100gです。

関連記事:タンパク質50gってどのくらい?食材一覧と献立メニュー例、摂りすぎ・不足時のサイン

プロテイン、飲みすぎのラインとは

では、どのくらいが飲みすぎということになるのでしょうか。

「厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準(2022年版)によると、『現時点ではたんぱく質の耐容上限量を 設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではない』と記載されており、これはつまり結論わからないということで、まだ結論は出ていません。ただ、十分な根拠はありませんが、それでも現在あるデータから推測して、1日の総摂取エネルギーの20%までにしておくことが国内の基準となっています」(藤井先生)

さらに詳しく知る:タンパク質、摂りすぎるとどうなる?過剰摂取のライン[医師解説]

ただし、注意すべき点として脂質の多いお肉を大量に食べればカロリーオーバーで脂肪が蓄積する原因になりますし、消化する際に胃腸にかかる負担も大きくなる恐れがあります。タンパク質をとるなら量よりもバランスが偏らないように注意しましょう。

ヘンププロテインも過剰摂取は禁物! 飲みすぎるとこんなデメリットも

「ヘンププロテインはアレルギーも引き起こす可能性は極めて低い安全なものです。そのため特に大きな副作用はありませんが、食物繊維を多く含むため、大量に摂取すると便秘、下痢などによる腹痛など消化器症状を引き起こす可能性があります。飲み過ぎには注意しましょう」(藤井先生)

監修者プロフィール

ディオクリニック
理事長/統括医師 藤井崇博先生


医学博士、循環器内科専門医で医療法人三橋医院理事長。専門領域は循環器内科で心臓領域を専門としており、研修医から2021年までの約10年間大学病院、関連病院で臨床、研究、教育に従事。循環器内科専門医、循環器内科領域での医学博士号を取得。現在も循環器疾患を含め外来での診療は継続している。循環器内科医としてさまざまな患者さまの診察に日々従事する中で、何よりも大事なのは未病、医学的には一次予防と呼ばれる未然に病気になるのを予防しようとする意識が大事だと感じている。SNSやその他コラムなどで、健康に有益な情報の発信にも注力している。

<Text:編集部>