マラソン大会当日、現地入りの時間は?給水&給食のタイミング、レースをリタイアする方法|ゼロから始めるマラソン&ランニング
日頃からランニングやトレーニングをコツコツと続け、レースの大分前から万全の準備で迎える本番の日。
それでも、レース当日になって準備していたものが無い! はたまた、スタートしたにもかかわらず予期しない現象が起こったなど、あらゆるトラブルが考えられます。
そこで、ランニング初心者のために、今さら聞けないあんなことやこんなことを分かりやすく解説していく「ゼロから始めるマラソン&ランニング」第2回目をお届けします。
疑問にお答えするのは、国内外でのリゾートラン&旅ラン歴20年&100回の大会参加や伴走経験を持つ内田英利(うちだひでとし)トレーナーです。タイムや順位にこだわらない生涯ファンランを標榜する、内田トレーナーにQ&A方式で聞いていきます。
あらゆるトラブルを予防し、いざ、本番のレースに!
前回:マラソン大会、雨なら中止?当日マストの持ち物は?初心者におすすめのレースの選び方も!|ゼロから始めるマラソン&ランニング
Q:どれくらい前までにスタート地点に着けばいい?
A:スタート時間の15分前にはスタートブロックに到着して、身体と心の準備を整えましょう!
最寄り駅からレース会場まで歩く。会場に到着し、会場内の更衣室で着替える→手荷物を預ける→スタート前にトイレに行く→目標タイムのブロックで待機。ランナーには、スタートするまでに多くのステージをクリアしなければなりません。
それらにかかる時間はどれくらいか。数千人規模であれば逆算しておおよそ時間が読めるものの、数万人規模や海外&国内の離島でのイベントではなかなか難しいものですよね。
数万人規模や海外&国内の離島でのイベントでは、スタート地点まで混雑することもざらにあります
そこでおすすめは、前日に会場を見学することです。
レース公式サイトやガイドブックには、スタート地点や更衣室エリアなど会場のレイアウトが掲載されています。大規模な大会では、前日のうちにスタート近くのエリアで、ブロック標識などが準備されていることも。
前日にはランナー受付ブースも設けられていますので、早めにゼッケンや参加賞を受け取り、スタート付近をぐるぐると「ゆるウォーキング」してみましょう。
どんなに近くの会場でも、時間に余裕を持って動くに越したことはありません。
ゼッケンや参加賞を早めに受け取り、レイアウトを参考に、スタート付近をぐるぐると「ゆるウォーキング」することをおすすめします
Q:レース中の給水&給食のタイミングは、何時が良い?
A: お腹が空く前に栄養補給を! 自分に“餌付け”をするイメージで!
レースを完走するために、身体の中に「ガソリン=エネルギー」を溜めておくことが大切です。ガソリンのもとになり、筋肉や血液中のエネルギーとなる「炭水化物(糖質)」を摂りましょう。
体内に貯めることができる糖質の量には限度があり、フルマラソンの終盤には、満タンであったガソリン(糖質)は、限りなくゼロに近づきます。
ですので、レースの途中で糖質を摂ることは欠かせません。固形のものより、消化しやすく血液中にエネルギーを速やかに運んでくれるような、液状に近いものを摂ることがベストです。
10km地点を目処に補食する
レースは朝早い時間にスタートすることが多いですよね。朝ごはんを食べた後、会場に到着する頃には、消化から数時間が経っています。エネルギーチャージはできているものの、スタート後、1時間も経つとお腹が減ってくるでしょう。
普段の生活ならば、10km前後を走り終えたタイミングがランチタイム。ですので、10km地点を目処に、それ以降もガソリンを減らさぬよう、糖質中心の補給食を摂りましょう。
そして20kmから30km、40kmと、10kmごとに「エイドタイム=自分への“餌付け”」を設け、ガソリンで満ちた身体の状態にします。
喉が渇く前や汗をかく前に給水する
水分の補給は、完走を目指すペースであれば、喉が渇く前や汗をかいてきたかなと感じる前=給水ポイントごとに、こまめに取ることをおすすめします。
エネルギーも水分も、体内に吸収され全身に行き渡るまでには時間が掛かるので、早め早めに摂るほうがよいでしょう。
いざとなったら、腹持ちする固形の糖質摂取もアリ!
Q:脚が攣って動けない!
A:血流改善のためのストレッチや、漢方などで即ミネラル不足を補おう!
筋肉がつった状態とは、筋肉中に、一時的に酸素の量と血流の流れが滞っている状態のこと。言い換えれば、血液の中の栄養分と活動力が足りなくなった状態を指します。
また、筋肉の中のミネラル分が欠如していることが、筋痙攣と深く関係するとも言われます。
こむら返りなどは漢方「芍薬甘草湯」をその場で含むとよい
激しい運動を行って発汗したときの足のつり(こむら返りなど)にオススメの対策が、ズバリ「漢方」です。「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」が、より効果的と言われています。
足が攣ったら、その場で口の中に漢方を含み、手持ちの水でゆっくりと溶かして飲みましょう。
「芍薬甘草湯」は、筋肉痛や脚のツリなどによく効いて、しかも速効性を持っているのです。筋肉痛を引き起こしやすい人は、スポーツをする前に「芍薬甘草湯」を飲んでおくという人も、多いようです。
ミネラル不足時の筋痙攣は
また、ミネラル不足時の筋痙攣は、水だけを摂っても回復しません。
かえって体液を薄めてミネラル不足を助長してしまうため、日頃からスポーツドリンクなど栄養価が高い水分を摂り、血液中の栄養分を維持するのも対策のひとつになります。
Q:途中で走るのを止めたい! 関門が超えられそうもない!
A:まずゼッケンを外して歩道に移動。歩いて&電車などの交通機関を使ってゴールに向かいましょう。
その日の体調次第で、また、心のモチベーションが一気に下がったなどで、走るという活動を放棄する場合があります。
まずは、ゼッケンを外して、応援している人がいる歩道に移動しましょう。歩道に移動することで、レース参加者から一般の歩行者になることを意思表示します。
しかしながら、気分が優れなかったり怪我をしたりした場合は、タイムラグを置かずに、周りの歩行者に声を掛け、スタッフや審判員を呼んでもらうようお願いしてください。
歩行者やスタッフに手助けしてもらうのはNG
一方で、思い直して走ろう! 少し時間が経てば走れそうだ! と感じてレースに戻る場合、歩行者に援助してもらうのは避けましょう。
第三者の手を借りることになるので、厳密には失格になります。
スタッフや審判員も、放棄するランナーの行動は理解しているので、声掛けをするのみで、決して手を差し伸べることはしません。
回収車が来る場合もある
また、フルマラソンのコースには、ある一定の距離ごとに制限時間を設ける関門があります。
時間までに決まった距離を達成できなかった場合は、リタイアランナーを収容しゴール地点まで運んでくれるバスに乗らざるを得ません。
ただし、バスもレース規模の大きさによって長時間待つことも多々あります。ですので、体力と気力のあるうちは公共機関を使ってゴールまで向かう方も多いようです。
到着したら、預けている手荷物エリアでリタイア組であることを申告しましょう。
荷物を受け取った後は、身体も心も疲労していますので、労る時間を過ごし、次の目標に向けて英気を養いましょう。何事も切り替えが大事です。
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著者プロフィール
内田英利(うちだ・ひでとし)
1971年生まれ。茨城県出身。日本大学卒業後、立命館大学に進学。立命館大学在学中に運動生理学などを学び、その後、米国の栄養学修士課程を経る。初心者向けマラソン&ランニング教室を開催、国内外でのレースに参加し“旅ラン”記事を出稿する中、女性や高齢者向けの生活習慣病予防プログラムの開発、生涯フィットネスに関する講演や運動指導なども行う。日本成人病予防協会講師。全米エクササイズ&スポーツトレーナーズ協会(NESTA)認定講師、アメリカン・ホリスティック・カレッジ・オブ・ニュートリション (AHCN)栄養学修士、健康管理士一般指導員、健康運動指導士、京都造形芸術大学非常勤講師。大相撲の元貴乃花親方との共同開発プログラム「シコアサイズ」を販売。株式会社フィットネス・ゼロ代表取締役。シェアスタジオ「コア・フォレスト」運営責任者。フルマラソン歴24年。ベストタイムは2時間45分01秒。
・公式YouTubeチャンネル
<Text & Photo:内田英利>