インタビュー
ギア&アクセサリー
2018年6月18日

“勝つための体づくり”をAIがサポート!食事トレーニングアプリ「food coach」とは (3/3)

スポーツ栄養に対する意識を身につけてほしい

 フードコーチによる栄養管理はどれくらいシビアに実践すると効果が現れるのでしょうか。杉島氏によれば「基本的には利用される皆様が、それぞれの目的に応じてペースをコントロールしてもらえればよい」とのこと。フードコーチに毎日の食事の内容をまめに登録するほど、データの精度は上がって、AIが適切なアドバイスを届けてくれるようになります。ただ、そこまで頻繁に記録しなくても、例えば週に数回、あるいは月曜日だけ記録するといった柔軟な使い方にも対応するそうです。

▲杉島氏も「フードコーチの導き出したアドバイスに、管理栄養士やプロフェッショナルのコーチングが加わるとさらに効果的です」

 至学館大学の杉島氏は、アスリートが定期的に食事や体のコンディションをデータとして記録することを習慣化して、スポーツ栄養に対する意識を身に付けることが何より大切であると指摘しています。

「例えばトップアスリートの中にも、もともと栄養管理について意識の違いもあれば、習慣として実戦することの得手不得手もあります。だからフードコーチは、どんなアスリートも現在の食意識に合わせながら、無理なく使いはじめられるサービスでありたいと考えています。日々の食生活に気を配ることが、コンディションの向上と試合成果に結び付いていることを知ってもらうことから、第一歩が始まると考えるからです」

 至学館大学では各運動部に在籍する選手たちに、SNSTチームによる定期的な栄養アセスメント(測定・評価)やカウンセリングを提供しています。杉島氏は、ゆくゆくはフードコーチアプリに食事のデータだけでなく、アセスメントによって得られた身体組成やヘモグロビン、骨密度などの測定値をリアルタイムに反映させて、より精度の高い解析とアドバイスが提供できるようにしたいと語っていました。

プロの栄養士やトレーニングコーチにこそ活用してほしい

 杉島氏はアスリートが「食トレ」に向ける関心が昨今少しずつ高まりつつあることを実感しているとしながら、「ただ栄養バランスを意識することが大事だとわかっているだけでなく、積極的な自己管理を行うことが大切です。その実践のためにフードコーチが一役買いたい」と杉島氏は意気込みを語っています。

▲取材を行った日にもSNSTが提供する栄養アセスメント(測定・評価)やカウンセリングサービスを受けに、至学館大学の競歩の選手として全国レベルの舞台で活躍する深水梨保さんが施設を訪問。この日は身体組成やヘモグロビン、骨密度などを測定したのちに専門のレクチャーを受講。杉島氏は今後、選手の身体情報をフードコーチに取り込んで、より有効かつ正確なデータを活用できるサービスにしていきたいと説明している

 例えばプロの栄養士が帯同しているチームの中には、栄養士に食事の献立作りをおまかせにして、選手たちはただそれを食べるだけというケースもあります。杉島氏は、個人のアスリートが食トレの意識を改革していくことが大事なポイントなのだと指摘しています。

 アスリートの成績向上をもたらすデータ解析と評価、アドバイスを最先端のAI技術が担うことができれば、これまでプロの栄養士を雇うことが困難だった個人のアスリートや、アスリートを支えている家族、ジュニアスポーツの現場にもチャンスが広がる可能性が芽生えてきます。

 一方で杉島氏は、フードコーチのサービスやAIが栄養士の仕事を奪うことには絶対にならないと強調しています。むしろフードコーチは、栄養学の知識がある専門家やトレーナーが自身の仕事のステージアップに役立ててほしい、と話しています。

「栄養士やトレーナーの方々に、いまクライアントとのコミュニケーションと食事管理をどのように実践しているのか訊ねてみると、連絡はLINEやメールで取り合って、コメントや写真をパソコン上でExeclに貼り付けて管理しているという答えも多く返って来ます。フードコーチはプロフェッショナルの業務効率を改善できるツールにもなれると考えています」

7月開催の「スポルテック2018」で完成版をお披露目

 オンキヨーではAIアシスタントを搭載したハードウェアであるスマートスピーカーをすでに商品化していますが、今後はフードコーチを足がかりとして、AIの技術を活かしたソフトウェアの開発にも力を入れていきたいと中島氏は抱負を語っています。

「オンキヨーといえばオーディオのスペシャリストというイメージを強く持たれている方が多いと思います。フードコーチはオンキヨーグループが、これまでと違う事業領域で新しい価値を創造するという視点からスタートした社内ベンチャーに近いプロジェクトです。至学館大学という強力なパートナーを得て、この産学連携の取り組みをぜひ成功させたいですね」

 フードコーチは来たる7月25日から27日までの3日間、東京ビッグサイトで開催されるスポーツと健康産業の総合展示会「スポルテック2018」に出展するオンキヨースポーツのブースで正式に完成版がお披露目されます。サービスの活用方法や「FOOD CAMP」について、もっと詳しく知りたい方はぜひイベントに足を運んでみてはいかがでしょうか。

《関連サイト》
総合展示会「スポルテック2018」
https://www.sports-st.com/

<Text & Photo:山本敦>

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