わき汗はなぜ臭いのか。汗を止める方法、匂い対策を皮膚科医に聞いてみた (1/3)
季節問わず気になる「わき汗」。夏はもちろん、いろいろと着込むことの多い冬も思ったより汗をかいています。夏は薄着のためボディシートで汗を拭くものの、着込んだ季節だと面倒で、防寒インナーがボディシート代わりというパターンも多いのでは。
今回は、そんな汗の悩みにフォーカスし、わき汗が出る理由やニオイの原因・対策について、渋谷スクランブル皮膚科の皮膚科医である下方征(しもかた・ただし)先生に、一問一答形式で聞いてみました。
下方先生、よろしくお願いいたします!
なぜ汗は出るのか。体内での役割とは
汗はどんな役割を担っている?
⇒汗をかくことで体温を一定に保っています。
「ヒトは汗をかくことで、暑い日差しの下や激しい運動時でも体温を一定に保つことができます。汗をかく能力はヒトに与えられた特別な能力で、ほかの哺乳類は汗がかけないため、水浴びをしたり涼しい木陰へ移動することで体温調節を行います。しかしヒトは、体温が上がりそうな状況にあっても、活動を中断することなく、汗をかくことで活動をしながら体温を調整できるよう進化したのです」(下方先生)
ワキ汗は他の箇所より量が多いような……気のせい?
⇒実は、頭や背中のほうが汗量は多いのです。
「ワキ汗は体の他の部位よりたくさんの汗をかく印象があるかもしれません。しかし実際は頭や背中のほうが、ワキよりずっとたくさんの汗を出します。ではなぜ私達は頭や背中の汗よりも、ワキ汗が気になるのでしょうか。それは、汗をかき始める際、最初に出るのがワキ汗だからです。ワキとおでこは体温の変化に非常に敏感で、体温が上がり始めようとするごく初期、まだ体温がそこまで上がっていないときから汗をかき始めます。一方で頭や背中は、いよいよ体温が上がり始めた後半に、大量の汗を出し始めます。少し暑いなと思ったときに出始めるワキ汗に私達は敏感で、生活上の支障を感じるのです」(下方先生)
脇ってみんな匂うの? 無臭の人はいる?
⇒みんなニオイはあります。ただしニオイの強さが異なります。
「多かれ少なかれ、どの人にもワキのニオイはあります。しかし、アポクリン腺が発達している人では、ワキのニオイはより強くなります。アポクリン腺から出る汗にはタンパク質、糖質、脂肪酸、ステロイド、鉄分、アンモニアなどが含まれていますが、これらを含む汗が皮膚にいる細菌(皮膚常在菌)によって分解されることで、臭いの原因物質が発生し、体臭やワキガ臭となります。ニオイの違いやワキガの程度についてはその人の常在菌の種類によっても左右されます。一方で、アポクリン腺が発達していない方では、ワキガ特有のニオイがすることは稀ですが、汗をたくさんかいた後に何もケアをしなければツンと酸っぱい汗のニオイがします」(下方先生)
もしかして腋臭(わきが)!? 気になる人のセルフチェック
ワキガかどうか分からなくて不安。自分で確認する方法はある?
⇒目安として、以下の4項目をセルフチェックしてみましょう。
1.下着のワキの部分に色がつく
「アポクリン腺から分泌される成分によって、白い下着のワキの部分が黄ばむことがあります」(下方先生)
2.その日の終わりにワキの皮膚を触ると、ワックスを塗ったようなベトっとした感じがする
「アポクリン汗は脂肪酸を含み、ワキの皮膚を触れたときにベタつきがあります」(下方先生)
3.耳垢が湿っている
「アポクリン腺が発達している人の場合には、耳垢がカレーペーストのようなベタついたものになります。アポクリン汗が出ない人の場合には、クッキーのクズのような乾いた耳垢が出ます」(下方先生)
4.家族にワキガの人がいる
「アポクリン体質かどうかは、遺伝によります。そのため、家族がワキガの場合には自身にもワキガの可能性があります」(下方先生)
わき汗の匂いを抑える対策方法
わき汗の量が多くて、服に染みが……ニオイや量を抑える方法はある?
⇒4つのポイントを意識しましょう。
1.汗を拭く
「皮膚に付着した雑菌が繁殖してにおいが発生します。汗をかいたらこまめにボディシートなどでふいて雑菌を拭きとりましょう」(下方先生)
2.脱毛をする
「ワキ毛が雑菌繁殖場になり、ニオイが強くなることがあります。医療レーザー脱毛は汗のケアもしやすくなるため、ニオイ予防にも有効です」(下方先生)
3.クリニックで治療する
「ボトックスを注射して、汗を止める治療があります。またワキ汗を止めるマイクロ波治療や手術があります」(下方先生)
4.制汗剤など使用する
「汗を抑える効果(制汗)、肌を弱酸性に保ち雑菌の繁殖を防ぐ効果(抗菌)のある商品を使うと効果的です」(下方先生)
次:市販品でわき汗対策するときのポイント