
筋トレもランニングもやりすぎ注意!限界を超えた先に待つ“落とし穴”とは
トレーニングと休息のバランスが崩れると回復のメカニズムが機能しなくなり、パフォーマンスは低下し続けます。
いわゆる「オーバートレーニング」という現象です。いわばトレーニングにおける慢性疲労とも言えるでしょう。
病院で治療をして治るというものではなく、休息時間が回復のカギとなります。スポーツコーチ・クロスフィットトレーナーの角谷剛さんが解説します。
こんな症状が出たらトレーニングのやり過ぎ!
オーバートレーニング症候群には明確な診断基準がなく、体調が悪いだけ、あるいは精神的に疲れているだけなど、あまり深刻に捉えられることがありません。
また、調子が悪いのはコンディションが原因であると考え、調子を上げるためにさらにトレーニングに励んでしまう悪循環に陥りやすくなります。
いつも通りパフォーマンスを発揮できなくなるだけでなく、日常生活でも以下の症状がみられるようになります。
身体的な症状
- カラダが重く感じる
- 息切れがする
- 食欲低下
- 手足のしびれ
- 体重の減少 など
精神的な症状
- 不眠
- 不安
- 集中力低下 など
さらにひどくなると、こんな症状も
筋トレ効果が低下するだけならまだしも、ひどい場合は生活に支障まできたします。そして筋肉への負荷が限界を超えると、横紋筋融解症(Rhabdomyolysis)と呼ばれる、医学的に病気とされる症状が現れることも稀にあります。
横紋筋融解症とは、筋肉細胞が破壊され、筋体成分が血中に流れ出すことで引き起こされます。
そして、その物質が腎臓を始めさまざまな臓器に影響を与えて腎不全の原因となり、最悪の場合は死に至ることもある病気です。
横紋筋融解症は、強度の高い運動によって極端に筋肉を酷使した後に発症してしまうことが多いです。他には、外傷や感電、感染症、薬の副作用なども原因になります。
以前は、軍隊の行軍・マラソンなど、長時間にわたる運動が原因になるケースが知られていました。
しかし近年になって、クロスフィットやHIITなど、比較的短時間のうちに強度の高いトレーニングを行う人にも、この横紋筋融解症が起こりうることが分かってきたのです。
オーバートレーニングのチェック項目
オーバートレーニングに陥る前には、必ず体や心がサインを発しています。それらを早い段階のうちに見逃さず、対処することが重要です。
- 休息時の心拍数に変化はないか
- 血圧に変化はないか食欲は減退していないか
- 体重や体脂肪率が急激に減っていないか
- イライラや不安感がないか
- 注意力が低下していないか
- 寝つきが悪くなっていないか
- 寝入ってもすぐに目が覚めないか
- 筋肉痛が長引いていないか
- 筋トレの記録が長らく停滞していないか
オーバートレーニングの症状は、人によってさまざまです。ここに挙げたチェック項目のすべてが当てはまるとは限りませんが、もし該当するものがいくつかあれば、オーバートレーニングの可能性があります。
一度立ち止まり、トレーニングの強度や頻度、そして休息期間とのバランスを見直してみましょう。
筆者プロフィール
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛>