インタビュー
2018年6月26日

「共通体験は組織にとって大切」。会社で運動会を行うメリットを、“社内運動会”の仕掛け人に聞いてみた (2/2)

社内運動会が社内の絆を深めてくれる

 多くの企業が社内運動会に取り組むには、もちろん、それだけ大きなメリットがあるはず。米司さんによれば、企業はそれぞれ何かしら問題意識を持ち、社内運動会の開催を検討されるのだと語ります。

「昨今は“働き方改革”が注目され、生産性向上などが求められます。しかしその一方で、人と人あるいは企業との関係性において問題意識をお持ちの企業が多いようです。たとえば社員のモチベーションやチームワーク、エンゲージメント、あるいは愛社精神など。こうした問題を解決する手段として、運動会を選ばれる企業が少なくありません。もちろん、その目的は時代と共に変化しています。

リーマンショックの直後は経済情勢が厳しい中、だからこそ団結して乗り越えるために運動会を行う。あるいは社員旅行を取りやめた分、日帰りで全員が参加できる運動会を開催するといったケースが見られました。東日本大震災の後も、しばらくは慎ましく過ごす雰囲気でしたが、そういうときこそ仲間意識を強く持とうと、“絆”をテーマに運動会を開催する企業も。いろんな目的を持って、社内運動会が活用されています」

 ただ楽しそうというより、コミュニケーションの活性化のために運動会を開催する企業は多いとのこと。特に多拠点を持つ企業、部署間での交流を求める企業では、運動会がいい機会になるようです。

「企業に所属する社員や役員は、年齢や性別なんてバラバラですよね。でも運動会なら、そういうことを関係なしに全員で取り組めます。さらに社内運動会では、ただ参加するのではなく、自由に中身を作るところから始められるのもメリットの1つ。自分たちで考え、作り上げた運動会が盛り上がれば、よろこびも大きいですよ。もちろんその過程でも、積極的なコミュニケーションが生まれます。運動会が終わってからも、知らない人同士で運動会を話題に会話が生まれることもあると聞きました。こういう共通体験って、組織にとって大切なんだなと思いますね」

 運動会では仕事を離れ、上司・部下の意外な一面が垣間見えることも。その交流と発見は、仕事の場でも活かされるはずです。実際に運動会を開催する企業は、ITや製造、飲食、金融などさまざま。さらに運動会屋の活動は国内に留まらず、タイやラオス、アフリカ、アメリカなどにまで広まっているのだとか。運動会という日本独自の活動は、万国共通で大きな盛り上がりを見せるそうです。

 スポーツを通じて絆を深め、社員同士のコミュニケーションを活性化させてくれる運動会。大勢の人で成り立つ企業組織だからこそ、企業の課題解決において新たな手段となり得るのではないでしょうか。

▼運動会屋
http://www.udkya.com/

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>

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