
「父親からの愛情不足」で育った男性の特徴とは。大人になってどんな問題が起きやすい? (1/3)
父親との関係は、男性の心に大きな影響を与えると言われています。とくに、幼い頃に父親からの愛情を感じられなかった、あるいは尊敬できる存在として見ることができなかった場合、その影響は大人になってからもじわじわと表れます。
家庭や仕事、恋愛の中で繰り返すモヤモヤの正体は、もしかすると“父性不足”による心の影かもしれません。子どもの成長発達にくわしい臨床心理士、公認心理師で一般社団法人マミリア代表理事の鎌田怜那さん監修のもと見ていきましょう。
子どもにとっての父親の心理的役割とは
子どもにとって、父親の存在は母親とはまた違った「心理的な役割」を持っています。
父親は、母親が担う「無条件の愛情と安心」の役割とは少し異なり、社会とのつながりや自立の感覚を教えてくれる象徴的な存在です。
たとえば、父親の関わりを通じて、子どもはルールや秩序、外の世界との関係性を学びます。父親がどのように感情を表現し、人と接し、自分自身を律しているか。その姿から「社会での自分のあり方」や「男性像」を学ぶのです。
とくに男の子にとっては“将来の自分像”として、女の子にとっては“異性との関係の土台”として、父親は無意識のうちに大きな影響を与えます。
“父性不足”で育つと、男性の場合、とくに「自己肯定感」と「男性としてのアイデンティティ」で影響が出やすい
男性の場合は「自分はどういう存在か」「どういう男でいたいか」という自己像の形成において、父親との関係が非常に深く関与しており、それが揺らぐとさまざまな面に不安定さが生まれやすいと考えられます。
とくに顕著なのが、「男らしさ」や「リーダーシップ」といった社会的に求められる男性像に対する強いプレッシャーです。
男性にとって父親は、自分が「どんな男になりたいか」を無意識に学ぶ“モデル”のような存在です。その父親から十分な愛情や関心、承認を得られなかった場合、「自分には価値がない」「男としてダメなんじゃないか」という深い自己否定感を抱きやすくなります。
その結果、社会的な場面で自信を持てず、必要以上に他人の評価に依存する、逆に虚勢を張って“強い男”を演じてしまうこともあります。
また、感情をうまく表現できない、人に弱みを見せることが怖いと感じる男性も多くいます。それは、幼い頃に感情を受け止めてもらえなかった経験が根っこにあることも少なくありません。
結果として、パートナーシップや友人関係でも、どこか壁を作ってしまう、深い関係を築くのが苦手になる場合があります。
また、父性を引き継げていない感覚から、自分が家庭を築くこと、父親になることに対して不安を感じる人も少なくありません。「尊敬できる父親像」がなかったために、自分が父親になったときどう接すればいいのかわからず、戸惑いや不安を感じやすいという点もあるでしょう。
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