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2026年6月30日

子どもの非行は家庭環境が関係する?専門家が解説 (5/5)

「ちょっと怪しいな」と感じたとき、親がやってはいけない対応とは

子どもの非行が疑われるとき、親はどうしても感情的になりやすいものです。しかし、よかれと思った対応が、かえって状況を悪化させてしまうことが、研究で繰り返し確認されています。

「やってはいけない」と言われる対応には、それぞれ科学的な理由があります。

力で抑えつける⇒「効かない」ことが実証済み

怒鳴る、叩く、厳罰で押さえ込む。直感的には効きそうに思える方法ですが、結果は逆です。

約16万人の子どもを対象にした50年分の研究を統合したメタ分析では、お尻を叩く程度の体罰でさえ言うことを聞かせる効果がほとんど認められない一方、攻撃性や反社会的行動を強める方向の関連が一貫して示されました。さらに、力で抑えられた子どもは心を閉ざし、本音を隠すようになります。

これは診察室でも繰り返し目にする変化です。

人格を否定する⇒「自分はダメだ」が人を攻撃的にする

「どうしてこんな子になったの」「あんたは最低だ」。こうした言葉が危険な理由を、感情研究は二つの感情の違いで説明します。

「悪いことをした」という罪悪感は、謝罪や償いに向かう感情です。ところが「自分はダメな人間だ」という感覚、心理学でシェイム(shame)と呼ばれる、自分の存在価値そのものが傷つく感覚は、責任転嫁を経由して攻撃に向かいやすいことが分かっています。

受刑者を追跡した研究では、罪悪感を持てた人ほど再犯が少なく、この自己否定感が「自分は悪くない」という責任転嫁に変わった人ほど再犯が多いという結果が示されています。

叱るべきは「行動」であって「人格」ではない。これは道徳論ではなく、感情のメカニズムの問題です。

ほかの子と比較する⇒「どうせ自分はダメだ」を植え付ける最短ルート

「お兄ちゃんはちゃんとしているのに」といった比較は、行動の修正ではなく「どうせ自分はダメだ」という自己否定感を直接植え付けます。

前述のとおり、これは責任転嫁を通じて攻撃に向かいやすい感覚です。

問題をなかったことにする・隠す

世間体を気にして問題を隠すと、対応が遅れます。

犯罪白書が示すとおり、深刻な非行に至った少年の背景には、周囲に把握されないまま積み重なった家庭の困難があることが少なくありません。

「うちの子に限って」の数か月が、いちばん惜しい時間です。

すべてを管理しようとする⇒監視は「把握」をもたらさない

「見落としやすいサイン」の項で紹介した、スタッティンとカーの研究を思い出してください。

親が子どもの行動を把握できるかを決めるのは、監視や尋問ではなく、子どもが自分から話してくれる関係でした。

さらに、罪悪感や脅しで子どもの内面まで操作しようとする「心理的統制」と呼ばれる関わり方は、抑うつや問題行動をむしろ増やすことが多くの研究で示されています。

行動の見守りは有効でも、心の支配は逆効果です。

親が一人で抱え込む⇒親もまた支援の対象です

犯罪白書の保護者調査では、非行少年の保護者の約3割が配偶者からの暴力を経験するなど、保護者自身が困難を抱えている実態が示されました。

少年院在院者の保護者の約8割は「継続的に支援してくれる仕組み」を必要と答えています。

一人で背負い込むことは、親子双方を追い詰めます。専門機関や周囲の力を借りることは、親としての責任放棄ではなく、子どもを守るための賢い選択です。

子どもの問題行動は「SOSサイン」でもある

子どもの非行は、親にとって大きな不安と痛みを伴うものです。けれど、子どもが問題行動を通して発しているのは、多くの場合「困っている」「助けてほしい」というSOSでもあります。

叱責や管理で抑え込むのではなく、「あなたのことを気にかけている」という姿勢を伝え続けること、そして必要なときには専門家とともに対応していくことが、回復への確かな一歩になります。

子どもに「やってはいけない𠮟り方」とは?“絶対に”言うべきではない言葉ワースト3

監修者プロフィール

不登校/こどもと大人の漢方・心療内科
出雲いいじまクリニック 院長
飯島慶郎(いいじま・よしろう)

■公式サイト https://sites.google.com/view/izumo-iijima-clinic

■著書情報
『不登校は病気?〜医師の診断が子供と家族を救う〜』
著者:飯島慶郎(いいじまよしろう)/イラスト:わさび
出版社:みらいパブリッシング(健康・医療のフロントラインシリーズ)
発売日:2026年1月27日
判型:四六判・224ページ・ソフトカバー
価格:1,870円(税込)
ISBN:978-4-434-37267-4

心療内科医、臨床心理士、総合診療医、内科医、漢方医、産業医など、マルチドクターとして活動。得意とする分野は「心身症・不定愁訴」に対する漢方薬・向精神薬・心理療法・ケースワークを統合した総合的対人援助。心身の軽微な不調を入口にクライアントの「人生そのもの」を癒やすことを実践。近年は特に不登校診療に特化し、多くのこどもたちを改善に導いている。

<Text:外薗 拓 Edit:編集部>

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