子どもの非行は家庭環境が関係する?専門家が解説 (3/5)
こんな変化があったら確認してみて。家庭の中で見落としやすいサイン
子どもの変化は、ある日突然ではなく、小さなサインの積み重ねとして表れることが多いものです。
ただ、世の中に出回る「非行のサイン」のチェックリストを見直すと、サインには重みの違いがあることが分かります。
同じ一覧に並んでいても、研究が太い線で非行と結んでいるものと、別の意味を持つものがあります。
研究が「太いサイン」とするのは、この3つ
1.付き合う友人が大きく変わった … 前述のとおり、非行傾向のある仲間との付き合いは、非行のもっとも強い予測因子の一つです。友人の入れ替わりは、サインのなかの本丸といえます
2.大人の目のない夜の時間が増えた … 帰宅が遅い、無断外泊、行き先を言わない。犯罪学では「監督者のいない、構造のない仲間との時間」こそが非行の温床とされ、約4,400人の中学生を調べた研究は、こうした時間の長さが、個人の非行とも学校ごとの非行率の差とも強く結びつくことを明らかにしています。問題は夜遊びそのものより、「誰と・どこで・大人の目があるか」です
3.学校から足が遠のく … 欠席がち、成績の急落。学校とのつながりは非行への強力なブレーキ(保護要因)であることが分かっており、それが利かなくなりかけているサインは軽視できません
「予兆」ではなく「痕跡」のサイン
- 見覚えのない高価な物を持っている
- お金の減りが早い、家のお金や物がなくなる
お金や持ち物の異変は、性質が違います。これらは「これから起きるかもしれない」という予兆ではなく、すでに何かが起きていることの痕跡である可能性があります。
借り物やもらい物など無害な説明がつくこともありますが、本人に確かめても説明が立たないなら、様子見の段階はもう過ぎていると考えて、相談を検討してください。
「非行」より先に「SOS」を疑うサイン
- 昼夜逆転、朝起きられない
- 顔色が悪い、極端に痩せた、太った
- 体に傷やあざがある
- 口数が減り、無表情になる
体に出る変化は、非行のサインというより、心身のSOSや被害のサインであることが少なくありません。
傷やあざは加害より先に、いじめ被害や自傷の可能性を考えるべきですし、昼夜逆転や無気力の背景には抑うつが隠れていることもあります。
この系統のサインだけは、「叱る対象」ではなく「心配する対象」として扱ってください。

●サインは「足し算」ではなく「掛け算」で見る
ただし、これらの変化のいくつかは、思春期の自然な成長の一部でもあります。秘密を持つこと、親と距離を取ること、見た目にこだわることは、多くの子どもが通る道です。
では、自然な成長と危険なサインをどう見分ければよいのでしょうか。
手がかりは「重なり」です。逆境体験の研究では、リスクは1つよりも2つ、2つよりも3つと、重なるほど影響が大きくなることが繰り返し確かめられています。
サインも同じで、1つひとつを「あるか・ないか」で数えるのではなく、「複数のサインが重なっていないか」「以前と比べて極端ではないか」「本人が苦しそうにしていないか」という掛け合わせで見ていくことが大切です。
●意外と侮れない「家族との夕食」
見落としやすいサインは、特別な場面ではなく、ありふれた日常に表れます。
『令和5年版犯罪白書』の特別調査では、虐待などの逆境体験のある少年は、ない少年と比べて家族と夕食をとる頻度が低く、「何でも悩みを相談できる」関係を築きにくい傾向がありました。
一緒に食卓を囲めているか、そこで会話が成り立っているか。食卓は、親子関係の状態が正直に表れる観察窓のひとつです。

●「問い詰める」が逆効果である科学的な理由
もう一つ、研究が教えてくれる意外な事実があります。
心理学者のスタッティンとカーがスウェーデンで700組超の親子を調べた研究では、親が子どもの行動を把握できているかどうかを決めるのは、親の監視や尋問ではなく、「子どもが自分から話してくれるかどうか」でした。
しかも、非行の少なさともっとも強く結びついていたのも、この「自分から話す」関係だったのです。
つまり、サインを見つけて問い詰めても、親が知りたいことは手に入りません。手に入れるいちばん確かな道は、子どもが話したくなったときに安心して話せる相手でいること。
「いつでも話を聞く準備がある」という姿勢を日頃から伝えておくことが、遠回りに見えて、いちばんの早道です。
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