インタビュー
2018年11月26日

リンクで大泣きしていた子ども時代、泣いたからこそ「がんばろう」と思えた。プロフィギュアスケーター村上佳菜子(後編)│子どもの頃こんな習い事してました #18 (2/3)

努力は絶対にマイナスにはならない

――スポーツのなかでも、フィギュアスケートは特にお金がかかり、環境が揃っていないと難しい競技です。

子どものころからスケートがあることが当たり前になっていましたが、今思うと、そういうふうに、当たり前のように始めさせてくれた両親に感謝しています。スケートはいろんなことを学ばせてくれました。人間的にもスケートが育ててくれたと思います。

――今、スポーツに取り組んでいる子どもたちにメッセージを送るとしたら?

あきらめないでほしい。それは自分が経験したからこそ言えること。ソチオリンピック代表に選ばれたときも、シーズンの始めは全然だめで、試合(2013年ロステレコム杯)も最下位。何回も逃げ出したいと思ったし、周りからもいろいろ言われてメンタル的にも弱っちゃったときがあったのですが、あきらめずに最後の最後までがんばったらオリンピックに行くことができました。

「できない」とあきらめるのではなく、ギリギリまでがんばってほしい。報われない努力もあるかもしれないけど、それはマイナスにはならない。必ずプラスになってくると思うので、あきらめずに最後までがんばろうと言いたいです。

――あきらめない心の奥にあったものは、やはりスケートが好きという思いですか。

うーん、スケートが好きというのは根本にあったと思いますけど、苦しいことがあると大嫌いになっちゃうときもあるじゃないですか。それよりも「自分からスケートを取ったら何も残らない」「ここまでやったら最後までやりきらなきゃもったいない」という気持ちがあったのかなと思いますし、支えてきてくれた人たち、母、満知子先生の存在も大きい。家族のサポートや、他の方のサポートがないと続けられないことなので、そのことを考えると「がんばろう」と毎日切り替えることができました。

基本的にはサバサバした性格なんです。スケート以外のことであれば諦めが早くて、「だめでも次がんばろう」「大丈夫、大丈夫」といつもハッピーでいられるんですが、スケートのことになると今でも気持ちが下がることがあります。スケートは自分にとって心臓みたいなものなので、深刻に考えちゃうというのはあるかもしれない。

――考えすぎを克服する方法は。

とにかく発散すること。小さいころは感情のままに泣いていて、当時はそれが克服方法だという自覚はなかったんですが、つらいと思ったら思いっきり泣く。ずっとは泣き続けられないので、ふと冷静になって「がんばろう」と思える瞬間が来るんです。泣いたからこそ、その瞬間が来る。感情を表に出すことは前向きになるポイントのひとつだと思います。

習い事をしていてお子さんがよく泣くので困っている親御さんがいるかもしれませんが、もしかしたら思いっきり泣いたほうがスッキリするかも。だから「泣いちゃダメ」と無理やり閉じ込めさせないほうがいいかもしれません。確かに人前で泣くことはやめたほうがいいとは経験上思いますが(笑)、それも大きくなってくれば「人前は恥ずかしい、家で泣こう」とわかってくるはずです。

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