インタビュー
2019年6月8日

黒島結菜『いだてん』ロングインタビュー。「女子がスポーツに目覚める時代。この役を演じることができて良かった」 (3/4)

―― 人見絹枝(演:菅原小春)と対決したシーンの思い出はありますか?

菅原小春さんのパワーを感じました。彼女がそこに立ち、絹枝としているだけで存在感があって。こちらが身構えてしまうような迫力を感じました。完成した映像を確認すると、現場で感じたものがそのまま迫力を持って伝わってくるシーンになっていました。

うれしさと寂しさが絡み合う複雑な心境のシーンでした

 ここで少し、今後の物語のあらすじを紹介しておきましょう。

 村田富江の父親、村田大作(演:板尾創路)は娘・富江が、足をさらけ出して屋外を走り、世間の好奇の目にさらされることが許せません。そこで金栗四三の辞職や運動部の解散を求める署名運動を起こします。ついには父娘で足の速さを競い、富江が負けたら四三が辞職するという事態にまで発展。この先、一体どうなってしまうのか――。

 インタビューでは、そんな経緯を踏まえた質問もあがりました。

―― 都合、何回走ったのか。

テストや段取りも含めると10回以上ですね。そもそも勝負を5、6回やった気がします。スタッフさんは「今日はたくさん走ると思うから、調整しながら、疲れないようにしてね」と気を遣ってくださいました。でも私は、走るのが好きなので。疲れてもいいから全部、全力で走ろうと思いました。

寒い日で、足を出して走らないといけないので厳しい環境だったんですが、四三さんが氷のうにお湯を入れたものをくれたんです。中村勘九郎さんの優しさを感じました。

お父さんが意地をはって、もう1回、もう1回と食い下がるんです。食いついてくるお父さんに応えよう、でも先生を守るために負けられない。そんな気持ちの葛藤があって。最後は、ごきげんようと手を降って去るんですが、切ない複雑な気持ちになるんですよね。振り返ると、みんなが笑顔でいる。四三さんが辞めさせられなくて済むから。でも娘としては(お父さんを負かしたことによる)寂しさがあって、うれしさと寂しさが絡み合う複雑な心境のシーンでした。現場では一体感と言いますか、みんなで力を合わせてひとつのことをやり遂げる雰囲気がありました。

(板尾さんは)袴を履いて、たすき掛けして、身体を横に振って走るんです。あぁお父さん、頑張っているなと思いました(笑)。最後、へとへとになるんですが。撮影の舞台裏では、頑張りましょう、と声を掛け合っていましたね。

―― (役作りのために)トレーニングは、どのくらいしましたか。

撮影の1か月前から週1くらいのペースで竹早の4人と菅原さんと一緒にテニスの練習をしました。その時代の走り方に基づいてハードルや走る練習をしました。他にはやり投げも教えていただきました。中学校までバドミントンをやっていたし、もともとスポーツは好きでした。当時のテニスラケットって、現在のものより小ぶりなんです。バドミントンのラケットに似ていたので、バドミントンみたいにならないように注意しました。

女子がスポーツすることの意義。この役ができて良かった

―― 村田は、日本女子スポーツの源流というべき役柄。現代で活躍する女性アスリートを見て思うことはありますか?

私自身、幼い頃からスポーツに慣れ親しんできました。もう女子がスポーツをすることが当たり前の時代ですし、そこに何の疑問も抱かなかったんですが、今回の役を演じることで、そんな時代もあったんだなと。お嫁に行くことが一番で、シマ先生(演:杉咲花)などは朝早くにコソコソ走っていたので、女子がコソコソしなきゃいけなかった、というのが驚きでした。

いま女子スポーツで活躍されている方が、世界中にいて、男子と同じレベルで女子がスポーツできる時代になった。着ている服も、おへそを出したり、あの時代の人たちがタイムスリップして現代のスポーツを見たら、本当に衝撃的なことなんだろうなと思います。

昔の人のスポーツに対する考え方を知り、こういうことがあったから、今につながっているんだ、ということを知ることができました。この役を演じることができて良かったです。

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