• Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • YouTube

“エレベーターを使わずに、階段を上りなさい”。ブルース・リーから学ぶトレーニング哲学

 今から約20年前、1999年にアメリカの大手雑誌『タイム』が「20世紀で最も重要な100人」のリストを発表しました。政治家、革命指導者、人権活動家、学者、会社経営者、音楽家、芸術家、スポーツ選手など幅広い分野から選出された100人の中には、映画スターであり武術家でもあるブルース・リーの名前もありました。欧米人が多数を占める中、ブルース・リーは毛沢東やホー・チ・ミンといった歴史的な政治家と肩を並べ、アジアから選ばれた数少ない人物の1人でした。ちなみに日本人からは唯一、ソニーの共同創業者の盛田昭夫氏が選ばれています。

 ブルース・リーの名を世界に轟かせ、現在でも最高のアクション映画のひとつに数えられる『Enter The Dragon』(邦題:燃えよドラゴン)が1973年に公開されたとき、ブルース・リーはすでに亡くなっていました(享年32歳)。そうした伝説もあいまって、ブルース・リーが世界に与えた衝撃の大きさには計り知れないものがあり、現在でもその影響力は衰えていません。

 ブルース・リーといえば、映画で見せた極限まで鍛えられた肉体がもっとも有名ですが、武術家や哲学者の一面もあります。「考えるな、感じるんだ」や「水のようになれ」など数多くの有名な名言を残しており、耳にしたことのある方は多いでしょう。

 ブルース・リーの生前に書かれ、死後出版された唯一の著書『Tao of Jeet Kun Do/日本語訳名:秘伝截拳道への道』(著者: ブルース・リー/出版社:コンコルド東通 ベストブック社)には、武術書であるだけではなく、ウェイトトレーニングや持久力系トレーニングに関しても多くの記述があります。そこには現在でも充分に通用するトレーニング理論を見出すことができ、約半世紀も前に書かれたとは信じられないほどです。

 読めば読むほどブルース・リーの先進性に驚かざるを得ない同書から、トレーニングに関する名言をいくつかピックアップしてご紹介します。なお、翻訳はすべて筆者によるものです。

ブルース・リーの名言 トレーニング編

「トレーニングはスポーツにおいてもっとも軽視される段階のひとつだ。よくあるように、技術の習得に多くの時間をかけすぎると、個人の成長にかける時間が少なくなってしまう」

「トレーニングは精神的および身体的なコンディショニングであり、神経と筋肉の両方にかかる強度な反応に備えるためのものだ。精神力、パワー、耐久力、そして技術のすべての要素を同時に向上させるハーモニーでなくてはいけない」

「トレーニングは強い体を作るための方法だけではなく、いかに怪我を防ぐための知識を得ることでもある。不適切なトレーニングは怪我を誘発する。トレーニングとは怪我の予防法であると同時に、怪我をしてしまった場合の治療法でもある」

ブルース・リーの名言 リラックス編

「優れたアスリートの真価は、全力を出さなくてはいけない局面において、いかに無理なく動けるかどうかにある」

「無駄な筋肉の緊張は動きを妨げるブレーキになってしまい、かえってスピードとパワーを失わせる」

「リラックスとは身体の状態であるが、それをコントロールするのは精神的な状態だ。肉体的な反復練習と同じように、頭の中に浮かぶ考えを意識的にコントロールする絶え間ない努力によってもたらされる」

ブルース・リーの名言 ウェイトトレーニング編

「ウェイトトレーニングで筋肉をつけるアスリートは、同時にスピードと柔軟性を伸ばしていかなくてはならない。それらが身についていないと、たとえ力が強い男であっても、むやみにマタドール(闘牛士)を追いかける雄牛やウサギを追うトラックのようなものだ」

「ウェイトトレーニングは非常に大きなエネルギーを必要とする反復運動だ。従って、毎日行ってはいけない」

ブルース・リーの名言 パワー編

「パワーとは筋力とスピードをかけたものだ。パワーがあるアスリートとは力が強いアスリートのことではない。持っている筋力をいかに速く動かすかということが重要なのだ」

ブルース・リーの名言 耐久力編

「耐久力は、全速力のスプリント走とゆっくりしたジョグを間に挟んだセットを反復することで得られる」

「極限の耐久力を得るためには、通常よりはるかに長く、また数多い種類のワークアウトが必要になる。 “スパルタン”トレーニングはその最たるものである」

「耐久力はすぐに失われる。維持するにはメンテナンスが必須である」

ブルース・リーの名言 フォーム編

「よいフォームとは、無駄に費やされる動きとエネルギーを最小化し、パフォーマンスを実現するためのもっとも効率のいい方法のことである」

ブルース・リーの名言 日常生活編

「なるべく歩くようにしなさい。たとえば、目的地から数ブロック離れた場所に駐車するように。エレベーターを使わずに、階段を上りなさい」

 心に響く言葉があれば、ぜひトレーニングのときなどに思い返してみてはいかがでしょうか。

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
カリフォルニア在住。公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、コーチング及びスポーツ経営学修士(コンコルディア大学)、CrossFit L1 公認トレーナー、TVT高校クロスカントリー部監督、ラグナヒルズ高校野球部コーチ。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
 Facebook: https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text & Photo:角谷剛/Photo:Getty Images>

ランキング
Ranking

  • 最新

オススメ記事
Special

オススメ連載
Series

注目キーワード