フィットネス
2023年12月1日

「OKC(オープンキネティックチェーン)」と「CKC(クローズドキネティック チェーン)」とは【筋トレ用語】

筋トレに関する情報を調べていると、「OKCのエクササイズ」「CKCのエクササイズ」という言葉を目にすることがあります。一般の人にはなじみのないこの言葉、何のことを指しているのでしょうか。

今回は、エクササイズを分類する際に使われる「開放運動連鎖(OKC:オープンキネティックチェーン)」と「閉鎖運動連鎖(CKC:クローズドキネティック チェーン)」について解説します。

運動連鎖(キネティックチェーン)とは

カラダが動くときは複数の筋肉や関節がうまく連動しており、スポーツ競技の場合はこれが複雑で難しくなります。

たとえばボールを投げる動作では、足で踏ん張って発生させた力を「下半身→体幹→上半身→腕→指」というように効率よく連動させ、力が伝わることによって速いボールを投げることができるのです。

このように、それぞれの筋肉や関節が連動して動くことによってパフォーマンスを発揮することを「運動連鎖(キネティックチェーン)」と呼んでいます。

開放運動連鎖(OKC:open kinetic chain)とは

開放運動連鎖(OKC)とは「オープン キネティック チェーン:open kinetic chain」のこと。

連動する関節のうち、遠位部の関節が自由に動くことができる場合の運動と定義されており、「開放運動連鎖」とも呼ばれます。

OKCエクササイズ例

OKCエクササイズは、簡単にいえばカラダの末端部分(足や手)が固定されていないものを指します。

たとえば胸を鍛えるエクササイズならば、ベンチプレスやチェストプレス(体幹部が固定されていて、手を動かしている)などはOKCになります。

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次は「閉鎖運動連鎖(CKC:closed kinetic chain:クローズド キネティック チェーン)」です。

閉鎖運動連鎖(CKC:closed kinetic chain)とは

一方、閉鎖運動連鎖(CKC)は「クローズド キネティック チェーン:closed kinetic chain」のこと。

連動する関節のうち、遠位部の自由な動きが外力によって制限(固定)されているような場合の運動と定義されており、「閉鎖運動連鎖」とも呼ばれます。

CKCエクササイズ例

CKCエクササイズは、カラダの末端部分が床などに接した状態で、固定されたものを指します。

ベンチプレスやチェストプレスがOKCであるのに対して、プッシュアップ(手が地面に固定されていて動かず、肘の曲げ伸ばしを行っている)はCKCのエクササイズになります。

このように見てみると、マシントレーニングはOKC、フリーウエイトはCKCのエクササイズが多いと分かります。これらは、運動連鎖の違いという観点で分けられています。

OKC・CKCは、トレーニングプログラムやリハビリテーションプログラムを作るうえで参考になる考え方のひとつです。

OKCとCKC、それぞれにメリットとデメリットがある

OKCのメリット・デメリット

刺激したい筋肉をピンポイントに鍛えることができる、リハビリにもおすすめ

OKCは使っている筋肉以外の部分が固定されていて、動かす必要がありません。そのため、刺激したい筋肉をピンポイントに鍛えることができます。

また、自重がかからないので、負荷を体重よりも軽くすることが可能です。そのため、リハビリテーション初期のトレーニングとして活用されることが多いでしょう。

たとえば、膝にケガをしてスクワットができない状態でも、レッグエクステンションであれば軽い負荷で行えます。

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多種目を行う必要がある

動いていない筋肉は刺激されないので、他のエクササイズを行う必要があり、全身を刺激するのに時間がかかります。

また、競技スポーツで必要な“動き”や“カラダ・力の連動”を鍛えるのには適していません。

CKCの場合のメリット・デメリット

日常生活や競技に近い状態でトレーニングできる

複数の関節・筋肉を使いながら動作を行うので、日常生活やスポーツ競技の動作に近い状態でトレーニングを行うことができます。

また、一度に多くの筋肉を刺激することができるので、重い負荷を扱うことができるでしょう。

トレーニング時間の短縮のほか、体幹部などの動作に直接関わっていない部分でも、姿勢を維持することによって鍛えられます。

初心者やリハビリ中は厳しい

動作が難しく、正しいフォームができていないと、目的としている筋肉に刺激が入らず他の部分に刺激が逃げてしまうことがあります。そのため、初心者は正しいフォームで行えるようになってから導入することが望ましいでしょう。

ケガ後のリハビリのように、患部へ負担をかけることができない場合はCKCを行うことができません。

筋トレメニューの作成時に参考となる考え方

今回は運動連鎖という考え方から、OKC・CKCの違いを紹介しました。

普段の筋トレでは意識することはないかもしれませんが、競技パフォーマンス向上やリハビリテーションとして筋トレを導入している人は、この考え方を参考にプログラムを作成するとよいかもしれません。

OKC・CKCは、どちらが優れているというわけではありません。目的や場面によってうまく使い分け、効果的なカラダ作りを行うようにしましょう。

筆者プロフィール

プロスポーツトレーナー 和田拓巳(わだ・たくみ)

プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師のほか、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、さまざまなメディアで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会(JATI-ATI)の認定トレーニング指導者
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<Text:和田拓巳>