
納豆を毎日食べる効果とは?一緒に食べるといい食材、食べ過ぎのデメリット
健康に良いとされる食品の代表格「納豆」。手軽に食べられて栄養も豊富なことから、毎日の食卓に取り入れている人も多いのではないでしょうか。
納豆には血流改善・腸内環境のサポート・骨の健康など、うれしい効果がたくさんあるのです。
納豆を毎日食べることで得られる具体的な効果に加えて、一緒に食べると相乗効果が期待できる食材や、食べすぎによる注意点までわかりやすく解説。
Japanマラソンクラブのマラソンインストラクターでもある管理栄養士の深野裕子さん、たいや内科クリニック管理栄養士・林 安津美さんの意見をまとめながら、納豆についてのさまざまなギモンに答えていただきました。
日本人はいつから納豆を食べていたのか。納豆の起源
日本の伝統食の納豆について詳しくお伝えしてきました。ところで、日本人はいったいいつから納豆を食べていたのでしょう?
あの独特なニオイと糸を引く粘り気。普通に考えたら「腐ってる……」と思ってもおかしくはないですよね。いつ、だれが納豆を最初に食べたのでしょうか。納豆の起源には諸説あります。
納豆の原材料である大豆の栽培が普及した弥生時代、竪穴式住居の床に敷いた稲ワラに落ちた煮豆が自然発酵して納豆になったという「弥生時代説」。
聖徳太子の馬のエサの煮豆が余り、もったいないとワラに包んでおいたら自然発酵して糸を引く豆となっており、食べたらおいしかったので人々に広めたという「聖徳太子説」。
平安時代、源義家が奥州遠征で農民に煮豆を差し出すよう命令した際、急ごしらえで煮豆をよく冷まさずに俵に詰めたため、数日後に納豆になっていたという「源義家説」。
戦国大名・加藤清正が朝鮮出兵の際に煮豆を俵に入れて保存し、しばらくしたらいい匂いがするので開けてみたら納豆になっていたという「加藤清正説」。
これらのどれが本当なのかは実のところ謎なのですが、どの説にも必ず「ワラ」が登場します。
原材料の大豆(煮豆)がワラの納豆菌で自然発酵したものであるというのは、納豆の起源に共通する重要なポイント。偶然がもたらした奇跡の出会いだったのです。
果たして、納豆を広く庶民が食べるようになったのは江戸時代から。
江戸の人々は「ナットナットナット~」と売り歩く納豆売りから納豆を買い、「白飯・納豆・みそ汁」といった今も続く伝統的な朝ごはんを食べていました。
日本の朝食の歴史に納豆あり、です。
納豆に含まれるカロリーや栄養素
さて、起源については謎に包まれた(?!)納豆ですが、納豆にはヒトの健康維持のために必要不可欠なたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルといった5大栄養素がすべて含まれ、第6の栄養素といわれる食物繊維も豊富に含まれています。
納豆の栄養成分(1パック)
糸引き納豆 |
ひきわり納豆 |
||
1食目安 |
50g |
50g |
|
エネルギー(kcal) |
95 |
93 |
|
炭水化物(g) |
6.1 |
5.3 |
|
たんぱく質(g) |
8.3 |
8.3 |
|
脂質(g) |
5.0 |
5.0 |
|
カルシウム(mg) |
45 |
30 |
|
鉄(mg) |
1.7 |
1.3 |
|
ビタミンB1(mg) |
0.04 |
0.07 |
|
ビタミンB2(mg) |
0.28 |
0.18 |
|
ビタミンB6(mg) |
0.12 |
0.14 |
|
食物繊維(g) |
3.4 |
3.0 |
|
大豆イソフラボン(mg) |
37 |
37 |
|
アミノ酸 |
イソロイシン(mg) |
400 |
410 |
ロイシン(mg) |
650 |
700 |
|
バリン(mg) |
430 |
450 |
|
脂肪酸 |
飽和脂肪酸(g) |
1.45 |
1.45 |
n-3系脂肪酸(g) |
0.67 |
0.67 |
|
n-6系脂肪酸(g) |
4.98 |
4.98 |
|
食物繊維 |
水溶性(g) |
1.2 |
1.0 |
不溶性(g) |
2.2 |
2.0 |
※日本食品標準成分表2020年度版(八訂)をもとに作成 ※大豆イソフラボン数値:参考文献『栄養の「こつ」の化学』(柴田書店・佐藤秀美)
※食片成分表2021アミノ酸成分表・脂肪酸成分表・炭水化物成分表をもとに作成
大豆自体も栄養豊富な食品ですが、大豆が発酵して納豆になることで、とくにビタミンB2やビタミンKが多くなります。
発酵過程の納豆菌により、大豆が本来持っている成分に加えて、新たに加わる成分があるのが特徴です。
納豆に期待できる効果とは
便秘やダイエットにいいってホント?
納豆には私たちのカラダにとって大切な栄養がたっぷり含まれていることは分かりましたが、本当に「便秘」や「ダイエット」「免疫力アップ」にも有効なのでしょうか。
ゆでた(蒸した)大豆に納豆菌を加えて発酵させた発酵食品である納豆。この納豆菌は、胃酸に負けることなく、生きたまま腸内にたどり着き、もともといる善玉菌を活性化し、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善させる働きが期待できます。
「便秘やダイエットには“腸内環境を整えること”が重要です。私たちの腸には、100~1000兆個(重さにすると約1.5kg!)もの腸内細菌が生息していて、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の大きく3つに分けられます。菌の理想バランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7とされています」(深野さん)
実はこの腸内細菌の種類やバランス、腸内環境が太りやすさや肥満と深く関わっていることが分かっているのだそうです。
太ったマウスの腸内細菌を移植された普通のマウスも太りやすくなるというデータや、肥満の人の腸内フローラ(腸壁に隙間なくびっしりと張り付いた腸内細菌)は多様性が少なく特定の菌種に偏り、瘦せた人の場合は多様性に富むことが報告されているとのこと。
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免疫力アップにはどう?
さらに免疫機能の約70%を支えているのも腸といわれ、腸内環境を整える働きがある納豆菌は免疫機能を整えるためにも有効なのだそうです。
「便秘の解消やダイエット、免疫機能を整えるには、腸内環境を整え善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂取し、善玉菌が住みやすい環境を作ることが大切です。その意味で、納豆は便秘やダイエットにも効果が期待できるといえますね」(深野さん)
それでは、ダイエットや便秘解消におすすめのちょい足しレシピとは。
管理栄養士おすすめ! 納豆ちょい足しレシピ
《ダイエット効果がアップする納豆+αの組み合わせ》
納豆×キムチ
「キムチ(発酵したもの)にも、乳酸菌が多く含まれています。腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑制してくれます」(深野さん)
納豆×めかぶ
「めかぶは水溶性食物繊維が豊富に含まれています。腸内の善玉菌のエサをセットでとることでより腸内環境をより効果的に整えることができます」(深野さん)
納豆×さば缶
イシハラクリニック副院長の石原新菜先生は、さば缶と納豆をおすすめしています。
「納豆をはじめとする大豆製品がたんぱく質やビタミンB1 など夏バテ予防に必要な栄養素を豊富に含みます。『さば缶×納豆』など、毎食2 種類以上のたんぱく質(卵・肉・魚・豆腐・納豆ほか)をしっかり摂ることで夏バテ予防にもつながります。日々の食事に積極的に取り入れましょう。」(石原先生)
トレーニー&ランナーにおすすめ! “納豆とのちょっとイイ関係”
それでは、日々、筋肉を育てるために食生活にもこだわるトレーニーやランナー諸氏が今まで以上に納豆とイイ関係を築くにはどうしたらいいでしょうか。
深野さんは「筋トレやランニングなどのトレーニング時はたんぱく質を意識的に摂取することは実践されている方も多いはず」と前置きをしたうえで、納豆がトレーニーやランナーにおすすめの理由を解説してくれました。
「植物性のたんぱく質の代表の大豆食品は必須アミノ酸がバランスよく含まれ、その多さは動物性食品である肉や魚(100g中約20gのたんぱく質)、卵(100g中12.3gのたんぱく質)にも匹敵します。動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質を上手く組み合わせて食事にとり入れるようにするのがおすすめです」(深野さん)
納豆には食事では不足しがちなカルシウムも豊富に含まれ、カルシウムの骨への沈着を促すビタミンは納豆菌によりもとの大豆よりも多く含まれます。ナットウキナーゼは骨形成を促し、ポリグルタミン酸(納豆のネバネバの素)はカルシウムの吸収を促します。
「筋トレやランニングは筋肉だけでなく、骨にも物理的負荷をかけ骨密度が下がることでケガのリスクも高まります。なので、日本人に不足しがちなカルシウムと併せて摂りたいビタミンKやナットウキナーゼ、ポリグルタミン酸をセットで摂れる納豆は積極的に食事に採り入れてほしい食材です」(深野さん)
さらに納豆は鉄の供給源としても優秀とのこと。
たんぱく質と鉄は、ヘモグロビンの材料で血液中の酸素を身体の隅々に運ぶために重要で、トレーニングする人は積極的に摂りたい栄養素とも。
また、腸内環境を整えるのも筋トレやランニングなどを日常的に行う人には重要ですと、深野さん。
「腸内環境と免疫機能は非常に深い関わりがあり、特に強度の高いトレーニングや長時間にわたる練習に取り組むような人は、免疫機能が低下しやすいことがわかっています。したがって腸内環境を整える納豆を食べることは、体調管理にもつながります」(深野さん)
《トレーニー&ランナーにおすすめの納豆の効果的な食べ方》
納豆たまごかけご飯
「朝食におすすめのメニューです。朝は特にたんぱく質が不足しがちですが朝食でしっかりたんぱく質を摂取している人のほうが、筋肉量の維持・増加に有効である可能性が示されています」(深野さん)
他の食材と組み合わせ食べるのもおすすめ!
たいや内科クリニック管理栄養士・林安津美さんは、卵黄やアボカドもおすすめだと語っています。
「納豆には、ビタミンK2という脂溶性ビタミンが多く含まれています。脂溶性ビタミンは、卵黄やアボカドと一緒に摂ると吸収が促進されるので組み合わせて食べると良いでしょう」(林さん)
納豆をほかほかご飯の上に乗せても大丈夫?
ご飯の上に納豆。定番かつ王道の食べ方ですが、アツアツほかほかのご飯に乗せると、栄養が損なわれるというウワサも。これって本当なのでしょうか?
たいや内科クリニックの管理栄養士 林 安津美さんは、「ホカホカご飯程度の熱なら、短時間であれば問題ない」と語ります。
「納豆の酵素活性を最大限に保つためには、可能な限り低温で摂取するのが理想的です。しかし、ご飯の上に納豆を乗せる程度の熱であれば、大きな影響はないと考えられます」(林さん)
ナットウキナーゼは、50℃前後で徐々に活性を失い始め、70℃以上で不活性化するとされています。
ほかほかのご飯の温度は60℃~70℃程度。長時間乗せると不活性化する恐れがありますが、短時間であれば問題ないでしょう。
林さんはさらにこう語ります。
「もっともも大切なのは、納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素を活かすことです。この酵素は血液をサラサラにする効果がありますが、高温で失活してしまうため、納豆は加熱せず生で食べるのがベストです」(林さん)
納豆チャーハン、納豆汁などおいしいアレンジが豊富ですが、栄養面という意味合いでは「生で食べる」が正解のようです。
納豆を食べたら「ジャリジャリ」した……
ところで、納豆を食べた時に「ジャリジャリ」とした食感を感じたことはありませんか? このジャリジャリ食感の原因について、たいや内科クリニックの管理栄養士 林 安津美さんは問題ないと語っています。
納豆がジャリジャリとした食感になるのは、納豆の発酵が進んでいるからです。
「賞味期限切れの納豆」や「常温で保存された納豆」は、二次発酵が起こることがあります。二次発酵が進むと、納豆菌が大豆のタンパク質を分解し、チロシンというアミノ酸を生成します。このチロシンがジャリジャリ食感の原因と言われています。
納豆は1日何パックまで? 食べ過ぎのデメリット
納豆は1日1パック
便秘にもダイエットにもよく、免疫力アップにも有効で、トレーニーやランナーにもおすすめの納豆。しかし、食べすぎはNGなのだそう。
「1パックで5gの脂質が含まれ、食べ過ぎれば摂取する脂質やエネルギーも増えて太りやすくなってしまいます。納豆のみなど偏った食事は、栄養バランスも偏ってしまいます。1つの食材に偏るような「ばっかり食べ」や「単品食べ」は要注意です。納豆は1日1パックを目安にするとよいでしょう」(深野さん)
さらに、納豆にも多く含まれているオリゴ糖などを多く含む食材を食べると腹部の膨満感や下痢を起こしやすい体質の方は控えたほうがよいこともある、とのこと。何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。
また、たいや内科クリニック管理栄養士の林 安津美(はやし あつみ)さんは、「納豆を1日1パック以上食べてもすぐに体に悪影響が出る可能性は低いですが、以下のデメリットが生じる可能性があります」と語ります。
- 脂質やエネルギーの過剰摂取により太る
- ビタミンKにより、血液の抗凝固剤の作用が弱まる(血栓症などの疾患の治療中の方は注意が必要です)
賞味期限切れの納豆はどうする?
納豆も腐る! イヤなニオイがしたらNG
最後に「賞味期限の切れた納豆」や「納豆の冷凍保存」についてですが、納豆には独特のニオイがありますが腐っているわけではなく発酵によるもの。発酵と腐敗は違います。
しかし、腐らないわけではありません。納豆菌とは別の有害な菌が付着すれば腐りますし、いつもと違う嫌なニオイがしたら食べない方がいいでしょう。
納豆メーカーのHPには「期限が過ぎると風味が落ちたり臭いが強くなり本来の風味が損なわれるため、賞味期限以降はおすすめできません」と記されていることが多く、やはり賞味期限内に食べることがベストなようです。
たいや内科クリニック管理栄養士 林 安津美さんによると、以下が「食べられないサイン」とのことです。
- 黒ずんだり青みがかったりなど、変色している
- カビが生えている
- いつもの納豆と違ったツンとした臭いや酸っぱい臭いがする
- 水っぽくなドロっとしている
冷凍保存も可能
また、納豆に適した保存温度は10℃以下。冷凍保存も可能です。パッケージを開けずにそのまま冷凍庫へ入れるか、ニオイが気になる場合は、チャック付きの保存袋に入れて冷凍するといいでしょう。
解凍方法は冷蔵庫に移して自然解凍すればOKです。
練り混ぜるほどおいしくなるといわれる納豆。混ぜる回数と栄養素に関係はないようですが、まずは何もかけずに混ぜて、混ぜながらタレを少しずつ加えていくのがよいそうです。
美食家で知られる魯山人は毎回424回も混ぜていたとか。そのハードさ、シビレます。
監修者プロフィール
深野祐子(ふかの・ゆうこ)
管理栄養士・ジョギングインストラクター。Japanマラソンクラブでインストラクター兼フードアドバイザーとして市民ランナーに向け走り方の指導や食事の指導を行う。
【Japanマラソンクラブ公式サイト】http://www.jmcrun.com/
たいや内科クリニック
管理栄養士 林 安津美(はやし あつみ)さん
大学卒業後、JAあいち厚生連で37年にわたり病院の管理栄養士として勤務。その間、豊田厚生病院・安城更生病院の技師長として17年間在籍。2022年5月よりたいや内科クリニックへ入職。病態栄養専門管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・腎臓病療養指導士・がん病態栄養専門管理栄養士・和漢薬膳師等の資格を活かし、患者さんの思いを聴き・応え、患者目線でテーラーメイドの医療を届けるよう心掛けている。
<Edit:編集部>