四十肩・五十肩の治し方。原因と症状、ストレッチまで徹底解説[整形外科医監修] (2/2)
●「慢性期」の症状と対策
炎症が収まって慢性期になると、肩の痛みは徐々に減ってきます。同時に肩の関節包が拘縮(こうしゅく。固くなること)を起こし、組織が癒着したりすることで、肩が動く範囲がとても狭くなります。
また、肩が動かせないので、血行が悪くなったり、筋力が落ちたりします。
軽い運動に留める
この時期、トレーニングジムやゴルフなどに行くことは問題ありません。ただし、まだ腕は自由に動かず、痛みも残っているでしょう。スポーツでは急激な動きや、大きな負荷がかかることがあります。
痛みを感じない程度の運動にとどめ、過度な運動は避けましょう。
痛みが収まったらリハビリ開始
痛みが収まったら、硬くなった関節包を広げるためのリハビリを開始します。
リハビリには大きく「運動療法」と「温熱療法」の2種類があります。「運動療法」は、肩を大きく動かすことで、硬くなった関節包を広げます。「温熱療法」では関節を温めて痛みを軽減させたり、関節を緩めたりする効果が期待できます。
整形外科などのリバビリテーション施設では、専門家である理学療法士がその人の重度や症状に合わせてメニューを作成。ストレッチや可動域を広げる運動を指導してくれます。
もちろん痛みが出ないよう気をつけながら動かしてくれますが、多少の痛みはがまんのしどころ。人間は痛みがあると、反射的に身体をひねったり曲げたりしてしまいます。
たとえば、自分では手をまっすぐ挙げているつもりでも、横から見ると斜めだったり、肘が曲がっていたりするのです。リハビリの運動もまさにマシントレーニングと同様で、正しい動かし方をしないと効果がありません。理学療法士の指導通り、腕の位置と動きに集中しましょう。
痛みを和らげる治療には、関節包内にヒアルロン酸を注入する関節内注射があります。注入自体にさほど痛みはありませんが、なかには鎮痛効果が現れにくい人もいます。
また、痛みが収まらない重症の場合には、医師による外科手術を行うケースもまれにあります。
●「回復期」の症状と対策
慢性期が数ヶ月~半年ほど過ぎると、回復期に入ります。関節の痛みは次第になくなり、日常生活はさほど困らないほどに動きも良くなってきます。
リハビリ施設では、肩関節を動かすだけでなく、筋力を回復するためにボールやゴムチューブなどを使った運動やアイソメトリックトレーニング(静的トレーニング)も加わるようになります。
「四十肩はすぐ治る病気ではありません。リハビリを行ったとしても、良くなるには時間がかかります」(竹谷内先生)とのこと。焦らずに運動を続けることが大切です。
四十肩のセルフケア。家庭でも肩を動かす運動を
四十肩になる原因がよく分かっていない以上、残念ながら四十肩の確立した予防法や再発防止策はありません。
しかし、運動不足や血行不良が関節の動きに良くないことは明らかですので、日頃から対策を心がけておくといいでしょう。リハビリ中も以下の点に注意してください。
●肩を冷やさない
肩を冷やすと血行が悪くなります。エアコンの冷風を肩に直接当てない、冷房が効いた電車内などでは肩掛けを使う、就寝用のパジャマを厚めにするなど工夫しましょう。
●肩を温める
肩を温めて血行を良くすることは、痛みの軽減にも有効です。
入浴時は湯船に肩まで浸かる(半身浴は効果がありません)、冬場は厚手のシャツや保温用サポーターを着用するほか、上半身の筋肉を動かす運動もおすすめです。
●肩に負担をかけない
カバンを肩にかけるとき、習慣的に同じ方の肩を使ってしまいがち。長期間続けていると片方の肩だけに負担がかかってしまうので、意識して反対側を使ったり、リュックなど両肩で担ぐタイプを使ったりしましょう。
●肩を大きく動かす習慣をつける
日常生活では肩を大きく動かす所作は意外とありません。ラジオ体操をしたり、手を大きく上げてバンザイしたりするなど、肩関節を大きく動かす運動を意識して行いましょう。
竹谷内先生直伝!おすすめの運動(コッドマン体操)
最後に、肩が痛くなったときための簡単な運動(コッドマン体操)を竹谷内先生に教えていただきました。
簡単な動作ですが、痛みがあるときは無理をせず、途中で痛みが出たらすぐにやめることを心がけておきましょう。
腕の前後左右運動
- テーブルや机の横に、痛い方の肩を外側にして立ちます。
- 痛くない方の手をテーブルの上に置き、上半身を屈めて、痛い方の腕をぶら下げます。
- 肩の力を入れずに、腕を前後に大きく10回振ります。
- 続けて左右に大きく10回振ります。
腕を上げて伸ばす運動
- 壁に向かい、30センチぐらい離れて立ちます。
- 痛い方の腕を斜め上に上げ、壁をタッチします。
- 人差し指と中指を壁にトコトコはわせる感覚で上へと伸ばしていきます。
- 痛みが出ないギリギリまで伸ばしたら、元の位置へ戻し、同じ動作を10回繰り返します。
関連記事:【一問一答】肩こり、首コリ対策に!寝具メーカーが教える「枕の正しい選び方」
[監修者プロフィール]
竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)
整形外科医・カイロプラクター。竹谷内医院院長。
東京都生まれ。2000年に東京慈恵会医科大学卒業後、福島県立医科大学整形外科へ入局。2003年、米国のナショナル健康科学大学へ留学。2007年、東京駅近くにカイロプラクティックを主体とした手技療法専門の竹谷内医院を開設。肩こり、首の痛み、腕のしびれ、腰痛、腰部脊柱管狭窄症、関節痛などの手技治療に取り組む。雑誌、新聞、テレビなどのメディアでも活躍中。著書に『腰痛を根本から治す』『腰・首・肩のつらい痛みは2分で治る!』(以上宝島社)、『首の痛みは、自分で簡単に治せる1』(三笠書房)などがある。
【竹谷内医院 公式サイト】https://takeyachi-chiro.com
『頸椎症の名医が教える 竹谷内式 首トレ 5分の体操で首の痛み・肩こり・腕のしびれが消える』(徳間書店)
▼公式ページはこちら
<Text:渡辺幸雄/Edit:松田政紀(アート・サプライ)/Illustration:スギサキメグミ>