プロテインで筋肉痛にならない、早く治るってホント?筋肉痛に良い成分とは
「プロテインを飲めば筋肉痛にならない」「筋肉痛になったらプロテインを飲めば治る」という噂は、本当なのでしょうか。循環器内科医師監修のもと、この噂を解説します。
プロテインを飲めば筋肉痛にならないのか
結論から言うと、プロテインを飲むことで筋肉痛を予防できる効果はないと言えます。
正確に言うと、筋肉痛を予防できる効果がプロテインにあったとしても、現在の技術ではその差異を測定出来ない程度の微々たる差であると論文*で結論づけられています。
参考論文:Stefan M Pasiakos et al.Effects of protein supplements on muscle damage, soreness and recovery of muscle function and physical performance: a systematic review. Sports Med.2014 May;44(5):655-70.
プロテインで筋肉痛は早く治るのか
プロテインによって、筋肉痛の痛みや炎症は収まらないと言えます。
プロテインによって、筋トレで負荷がかかった筋肉の修復・成長を助けることはできると考えられますが、筋肉の損傷による痛みを和らげる効果はありません。
タンパク質は筋肉に効きそうだが、痛みや炎症を治す効果はない
タンパク質を摂取することで、筋肉の修復・成長はサポートされます。しかし、痛みや炎症を治す効果は期待できません。
そのため、「筋肉痛の痛みを引かせたいからタンパク質を摂る」は間違いだと言えるでしょう。
とはいえ、タンパク質は筋肉増強のサポートにはなります。筋肉量アップを目指す人は、タンパク質(プロテインも!)を摂取して理想の体を目指しましょう。
筋肉痛のときにおすすめの成分とは
筋肉痛を早く治すために良い成分としては、以下が挙げられます。
- BCAA
- クエン酸
- ビタミンD
- L-カルニチン
- クレアチン
- クルクミン
- シトルリン
「これらを摂れば必ず筋肉痛がよくなる」わけではありません。しかし、筋肉の修復・回復や炎症を抑えるサポートはしてくれるでしょう。
ひとつずつ詳しくご説明します。
筋肉痛に良い成分1 分岐鎖アミノ酸(BCAA)
バリン・ロイシン・イソロイシンの3つの必須アミノ酸の総称である分岐鎖アミノ酸(BCAA)を運動前後に摂ると、筋肉痛や筋肉疲労の軽減に有効であると考えられています。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)が体内で足りなくなると、筋肉が分解されてエネルギー源に変換されます。そのため、筋損傷や筋肉疲労につながることが知られています。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)が豊富な食材例
- マグロ
- 牛肉
- 鶏肉
- 卵
- 大豆製品など
筋肉痛に良い成分2 クエン酸
クエン酸とは、柑橘類や酢に含まれる酸味成分のひとつです。疲労回復の作用が期待できるため、筋肉の疲労にも効果的に働いてくれるでしょう。
さらに、血糖値の上昇を抑制・血流改善などの効果も期待できます。食欲の増進効果もあるので、食欲がない時にもおすすめです。
クエン酸が豊富な食材例
- 酢
- レモン
- シークァーサー
- ライム
- 梅干し など
筋肉痛に良い成分3 ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進して骨を強くする栄養素というイメージがありますが、他にも筋肉の合成を促進する作用もある脂溶性のビタミンです。
また、免疫機能を調整する働きもあり、風邪・インフルエンザなどの感染症の予防にもつながると考えられています。
ビタミンDが豊富な食材例
- きくらげ
- いわし
- カツオ
- 鮭
- 卵黄
ビタミンDは、日光を浴びることでも生成されます。ただ、過度な日光浴は、肌の老化・皮膚がんの原因になるため、肌へ悪影響を及ぼさない範囲での日光浴がおすすめです。
筋肉痛に良い成分4 L-カルニチン
脂肪代謝に重要なアミノ酸であるL-カルニチンを摂取すると、運動による筋肉の低酸素状態が緩和され、筋組織の破壊を抑制できると報告されています。
L-カルニチンが豊富な食材例
- 肉類(特に羊肉)
- 赤貝
- アオリイカ など
筋肉痛に良い成分5 クレアチン
アミノ酸の1種であるクレアチンを摂取することで、筋肉疲労の原因の1つである筋肉内の老廃物や酸化物質を排出してくれます。
クレアチン豊富な食材例
- ニシン
- 肉類
- サーモン
- マグロ など
筋肉痛に良い成分6 クルクミン
クルクミンはターメリックから抽出された天然ポリフェノールです。摂取することで、主に抗酸化作用と抗炎症作用があることが示されているため、筋肉痛による炎症に効果的であると考えられます。
豊富な食材例
- 秋ウコンを粉末化したスパイス(ターメリック)
- たくあん
筋肉痛に良い成分7 シトルリン
スイカをはじめとしたウリ科の植物に多く含まれるアミノ酸の1種であるシトルリンには、疲労の原因物質であるアンモニアを肝臓内で尿素へ分解し、体外へ排出する作用があると報告されています。
シトルリン豊富な食材例
- スイカ
- メロン
- 冬瓜
- きゅうり など
筋肉痛を予防する方法
地味に痛い筋肉痛。「筋肉がついている証?」と思えば乗り切れる気もしますが、できることなら痛みを予防したいもの。
筋肉痛の予防方法をまとめました。
運動前にマッサージやストレッチを行う
運動や筋トレの前に、マッサージやストレッチを行い、筋肉の緊張を和らげておきましょう。筋肉痛予防のためには、体を動かす前に、動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)をするのがおすすめです。
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)とは
体を動かしながら筋肉を伸すストレッチ方法を「動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)」と言います。小学生の時によくやっていたであろうラジオ体操も、動的ストレッチの1つです。
体を動かすため、心拍数が上がり、筋肉がスムーズに伸びやすくなります。
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運動習慣をつけておく
運動習慣をつけることで、以下のことが期待できるため、筋肉痛を予防できるでしょう。
- 筋力がアップする
- 筋肉の柔軟性や可動域が向上する
- 血行が良くなる
運動習慣をつけることは、筋肉痛の予防だけではなく健康維持にもつながります。楽しい運動を選ぶ・目標を持って運動をすると、三日坊主になりにくいでしょう。
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筋肉痛を「早く治す」方法
筋肉痛をとにかく早く治したい!と思ったら、次の行動を試してみてください。すぐに痛みが和らぐわけではありませんが、早く回復へ向かう可能性があります。
十分な休息を取る
筋肉痛があるということは、筋肉が疲れているということ。なので、痛みがある部位に負荷をかけるのは避けて、休めてあげましょう。
痛みがあるにも関わらず、無理をして酷使をすると、筋肉や関節に慢性的なダメージが加わる可能性があります。その結果、痛みや炎症が悪化する恐れがあるので注意してください。
アイシング
酷使したことで熱を持った筋肉へは、アイシングをするのも良いでしょう。炎症を抑え、痛みが軽減すると考えられます。
しかし、筋肉痛が出た1〜2日後にアイシングをしても効果は期待できません。アイシングは、炎症が起こる前の運動直後に行うのがおすすめです。
アイシングのやり方
- 氷嚢やビニール袋に氷水を作る
- 熱を持った筋肉に当て、10~20分冷やす
アイシングの注意点
氷を直接肌に触れさせないようにしてください。
氷を肌に直接触れさせると、皮膚や神経にダメージを与える可能性があります。氷(氷水)はタオルや布で包んで、肌へ当てましょう。
ストレッチ
ストレッチで筋肉の緊張をほぐすことで、痛みを抑えられる可能性があります。運動直後は体をゆっくりと伸ばす静的ストレッチ(スタティックストレッチ)を行いましょう。
過度なストレッチや運動は、痛みを悪化させる可能性があるため要注意です。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)とは
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)とは、同じ姿勢をキープし、ゆっくりと筋肉を伸ばすストレッチ方法です。
入浴して体を温める
筋肉痛の時は、40度程度お湯に浸かり、体を温めましょう。
入浴することで、体が温まり、血行が良くなります。その結果、筋肉に酸素や栄養素が効率的に供給され、筋肉痛の解消に役立つでしょう。
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筋肉痛の時は筋トレを何日休むべき?
筋肉痛がある場合、基本的に筋トレはやらずに筋肉を休ませてあげましょう。一般的に、4日後くらいから筋肉痛の痛みが一気に取れ始めると言われているので、3~4日ほど休むと良いでしょう。
どうしても運動したい場合は、軽めの運動に抑えてください。
筋肉痛がある時に筋トレをするデメリット
筋肉痛があるにも関わらず筋トレをすると、
- 筋肉に負荷がかかり、筋肉痛の治りが遅くなる
- 痛みに気を取られて、筋トレに集中ができず効率が落ちる
などのデメリットが生じると考えられます。
筋肉痛のゴールデンタイムはいつ?
ゴールデンタイムを1番痛みが強いタイミングだとすると、筋肉痛のゴールデンタイムは筋肉痛発生から2~3日後であることが多いです。
ちなみに、筋肉痛の痛みの経過は以下の通りです。
- 痛み出してから、2〜3日後で痛みが最も強くなる
- 4日後ぐらいから、一気に痛みが取れ始める
- 7日後ぐらいには、痛みが消える
筋肉痛の痛みは、1週間ほど続くことが多いです。
この記事を監修した人
ディオクリニック
理事長/統括医師 藤井崇博先生
専門領域は循環器内科。2021年までの約10年間大学病院、関連病院で臨床、研究、教育に従事。現在も循環器疾患を含め、内科外来での診療を継続している。SNSやその他コラムなどでの、健康に有益な情報の発信にも力を入れている。
▼参考
クエン酸 | 成分情報 - わかさの秘密
ビタミンD|栄養素カレッジ - 大塚製薬
▼参考論文
・Stefan M Pasiakos et al.Effects of protein supplements on muscle damage, soreness and recovery of muscle function and physical performance: a systematic review. Sports Med.2014 May;44(5):655-70.
・Michael V Fedewa et al. Effect of branched-Chain Amino Acid Supplementation on Muscle Soreness following Exercise: A Meta-Analysis. Int J Vitam Nutr Res. 2019 Nov;89(5-6):348-356.
・Roger Fielding et al. l-Carnitine Supplementation in Recovery after Exercise. Nutrients.2018 Mar 13;10(3):349.
・Yue Jiaming et al. Creatine supplementation effect on recovery following exercise-induced muscle damage: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Food Biochem.2021 Oct;45(10):e13916.
・Diego Fernández-Lázaro et al.Modulation of Exercise-Induced Muscle Damage, Inflammation, and Oxidative Markers by Curcumin Supplementation in a Physically Active Population: A Systematic Review. Nutrients. 2020 Feb 15;12(2):501.
・Hye Chang Rhim et al. Effect of citrulline on post-exercise rating of perceived exertion, muscle soreness, and blood lactate levels: A systematic review and meta-analysis. J Sport Health Sci. 2020 Dec;9(6):553-561.
・Daniel Rojano-Ortega et al. Effects of vitamin D supplementation on muscle function and recovery after exercise-induced muscle damage: A systematic review. J Hum Nutr Diet. 2023 Jun;36(3):1068-1078.
<Text:編集部>