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2023年6月19日

「有酸素運動は筋トレ効果を低下させる」ってホント?体脂肪をもっとも減らす運動とは

筋トレと有酸素運動を組み合わせるメリットは、大きく分けて2つあります。

ひとつは、体脂肪を減らすというダイエット効果です。多くの研究が、この2つを組み合わせることで効率的に体脂肪を減らすことができると証明しています。

もうひとつのメリットは、スポーツのパフォーマンスを高める効果です。

スポーツの多くは程度の差こそあれ、「パワー」「スピード」「スタミナ」のどれかが欠けてしまうと良い成績を挙げることはできません。ファンクショナル・トレーニングを行う人なら、日常的にその効果を感じているでしょう。

そのため、異なる種類の身体能力をバランスよく高めるために、筋トレと有酸素運動を日々のトレーニングに取り入れる必要があります。

筋トレと有酸素運動、どちらをどれくらいやればいい?

それでは、筋トレと有酸素運動の時間配分や頻度をどのようにするべきなのか。これは、すべての人に有効となる万能レシピはありません。

トレーニングの目的によって、筋トレと有酸素運動を組み合わせるバランスは異なってきます。体重を減らすことなのか、逆に筋肉をつけることなのか、またはパワーを増やすことなのか、あるいは持久力を高めることなのか。

数多くの研究を分析するメタ解析手法を使って、筋トレと有酸素運動の組み合わせを研究した論文があります。21の既存研究から442のケースを解析した、合計33ページにも渡る長大な論文です。

今回は、そのハイライトを紹介します。

筋トレと有酸素運動を組み合わせたときのメリット・デメリット

まず結論から先に紹介しましょう。以下は、前述の論文に記載された、筋トレと有酸素運動を組み合わせた場合の4原則です。

  1. 有酸素運動を行っても、上半身の筋肉量や筋力への悪影響はほとんどない
  2. 有酸素運動の時間が長くなればなるほど、下半身の筋肉量や筋力が低下する
  3. 筋トレとランニングの組み合わせが、体脂肪を減らすためにもっとも効果的である
  4. 筋トレとサイクリングの組み合わせが、筋力を維持するためにもっとも効果的である

有酸素運動は「上半身」の筋力にほとんど影響を与えない

長時間の有酸素運動は、筋トレで得た筋肥大やパワー強化の効果が減ってしまう。これはある意味で正しく、しかしある意味では正しくありません。

上半身の筋肉量やパワーは、有酸素運動によって影響をほとんど受けないということがわかっています。たとえば、ベンチプレスで胸や腕をパンプアップさせた後にゆっくりジョギングをしても、努力が台無しになってしまう心配はいらないということです。

しかし、デッドリフトやスクワットなどで下半身を鍛えた後の有酸素運動には、やや注意が必要です。

1日30分以上の有酸素運動は、下半身の筋トレ効果を低下させる

有酸素運動を行う時間が1日30分を超えると、おもに下半身の筋トレ効果が下がり始めます。その後は有酸素運動時間が長くなるに伴い、下半身の筋トレ効果は反比例して低下する傾向が続きます。

そして、1日あたりの有酸素運動時間が60分を越えると、筋肥大効果がほぼゼロになってしまいます。

有酸素運動が週3回を超えると、筋トレ効果が低下しやすくなる

有酸素運動を行う頻度も、筋肉への影響を大きく左右します。週1回の有酸素運動ならほとんど悪影響はありませんが、同時に脂肪を燃やす効果もありません。

有酸素運動が週3回を超えると、筋トレ効果が低減する程度が大きくなることが分かっています。

体力をつけたい、ダイエット目的の人は問題なし

そのため、野球やウェイトリフターなどパワーを必要とするタイプのスポーツ選手は、有酸素運動にかける時間を1日30分、週3回以内に抑えることが望ましいようです。

筋肥大やパワーより持久力を高めたい人、あるいはダイエットが目的の人は、有酸素運動をそれより多く行うべきなのは言うまでもありません。

脂肪を効果的に燃やすにはランニング、筋力を維持するならサイクリング

ダイエットなら「ランニング」

一般的な有酸素運動(ランニングや自転車、水泳など)の中で、筋トレと組み合わせたとき、脂肪燃焼効果はランニングがもっとも高いことがわかっています。

ダイエット目的の人は有酸素運動にランニングを選ぶとよさそうです。

最大筋力を維持しながらパフォーマンスを上げたい人は「サイクリング」「水泳」

サイクリングと水泳は、脂肪を燃やす効率で見るとランニングに劣ります。その代わり、筋トレ効果が減少する程度はランニングに比べて少なくなるでしょう。

最大筋力やパワーを落とすことなく、心肺能力や持久力を高めたいアスリートは、有酸素運動にサイクリングを選ぶべきということになります。

筋トレと有酸素運動、目的別の組み合わせを動画でチェック!

参考文献:
Concurrent training: A meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises.
Wilson, J. et al. 2011

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛/ Photo:角谷剛>