フィットネス
ライフスタイル
2021年11月4日

「子どもの頃から筋トレすると身長が伸びなくなる」って本当?トレーナーが解説 (2/2)

筋肉を強める前に、筋肉をどう使うか学ぶのが目的

 子どもでも筋トレを続けていくと、どんどん力が強くなっていきます。以前は動かせなかったものも、次第に動かせるようになっていくでしょう。しかし、それは筋肉が以前より大きくなったわけではありません。実際の見た目もごつくなるわけではなく、体つきも子ども体型のまま。さほど変化がないことが普通です。

ケトルベル・スイングは効率的な力の伝え方を覚えるのに最適

 子どものパワーが増す理由は、筋肥大ではなく神経学的要因が主です。筋肉が強くなるのではなく筋肉の上手な使い方を体が学習して、結果として大きなパワーが発揮できるようになります。

 自転車の乗り方を覚えると、大人になっても忘れないでしょう。これと同様に、子どもの頃に身に付けた効率的な体の動かし方は、将来の運動パフォーマンス向上に繋がります。それだけではなく、怪我の防止にも役立つでしょう。子どもが筋トレを行うことのもっとも大きな意義は、そこにあります。

体のバランスを整えて、柔軟性を高める

 ある特定のスポーツを専門的に始めた子どもにも、筋トレは大いにメリットがあります。1つのスポーツに熱心に取り組めば、どうしても特定の動きを特定の身体の部分を使って繰り返し行うことになるでしょう。

 野球のピッチャーを例に挙げますと、片腕だけでボールを投げる動作を繰り返します。ピッチングに限らず、どんなスポーツでも技術の上達には反復練習は欠かせません。しかし度が過ぎてしまうと、特定の筋肉や関節に疲労がたまり、ひいては怪我のリスクを増やしてしまいます。肘を故障する投手は後を絶ちませんが、実は投球からくる肩の痛みや野球肘と呼ばれる症状は、大人よりむしろ子どもに多く発生しているのです。

 その点、筋トレの多くは左右対称の動きとなります。普段行っているスポーツに欠けている部分を補い、身体能力の向上とスポーツ障害の予防を同時に期待できるのです。

子どものすばらしい柔軟性も運動の習慣がないと失われていく

 逆にスポーツにあまり関心がなく、運動不足になってしまっている子どもも少なくありません。肥満など健康面での問題が出るほどではなくても、そのような子どもたちは驚くほど体が固くなります。子どもは体が柔らかいと思われがちですが、早ければ幼稚園頃から、前屈して手が足先に届かなくなる子もいるのです。正しい方法で行う筋トレは、柔軟性の向上にも大いに役立ちます。

筋トレは個人によって内容が変わるもの

 子どもの成長には個人差が大きいので、単純に同じ年齢であれば同じトレーニングをすればよいというものではありません。筋トレの内容も、それに応じて最適なものに変えていくことが重要です。そのため、「子どもに筋トレをさせたい」と思ったときは、できれば少人数のグループで行っているジムをおすすめします。友達作りなどの社会的な要素を除けば、個人レッスンがもっとも望ましい形です。

 どちらにしても、専門知識がある指導者がいるジムを選びましょう。この場合の専門知識とは、筋トレの知識だけを指すのではありません。そこに子どもへの指導に関する知識を含むことは、言うまでもないでしょう。

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
公式Facebookはこちら

<Text:角谷剛/Photo:角谷剛、Getty Images>

1 2