インタビュー
2017年12月5日

友情を教えてくれた。超人たちの戦いは本物のプロレスみたい。新日本プロレス中西学『キン肉マン』【私のバイブル #2(後編)】 (3/3)

僕は京都出身なので、福井の方から鯖を持ってくる鯖街道のことでなんか作れないかなーと思って。昔、おばあちゃんが鯖寿司を作ってくれて、それがすごく大きくて美味しかったんですよ。親父もおじさんも目がなかった。でも、子どもには鯖の皮は少し生臭いですよね。それで、余った白い身のところをお酢に漬けてくれて、それなら食べられた。今なら鯖寿司はめちゃくちゃ美味いと思いますけど、もうおばあちゃんも亡くなっているので。

そういう自分の思いが入っていることを先生に理解してもらって、「なんとか使ってもらえませんかね!」とお願いしたら、「そこまでならなんとか考えてみます」と言ってくれて、実際マンガ(第211話)に出してもらえたんです。

後輩に成田蓮という、今年デビューしたばかりの若い選手がいるんですけど、彼も『キン肉マン』好きで、マンガ持って来て「この採用者の名前に、京都府/中西学ってありますけど、今、中西さんが住んでいるのは横浜ですよね」と言うから、「いやいや、俺は京都出身だから。これは俺が描いたんだ」って言ったら、「マジすかーーっっ!」って驚いてました(笑)。

― ネット上では、前からずっと投稿していたという話もあるようです。

いやいや、載ったのはその1回だけですね。

『キン肉マン』が教えてくれたこと

― 中西さんは実際にプロレスラーになって、夢を実現しました。『キン肉マン』から何を一番学んだと思いますか?

やっぱり友情ですかね。アメリカで修行していたとき、言葉も通じない外国人相手に、「負けるものかっ!」となりふり構わずスパーリングやってて、でも練習終わってシャワー浴びたら、ちょっと飲みに行こうかと誘ってくる。「なんだこいつ」と思いましたけど、そういう一緒に闘ったからこそ分かり合えることってある。相手を認めて敬意を払うからこそ、自分を分かってもらえるというか。それはやっぱりレスラー冥利に尽きると思いますね。

でも、プロレスラーも皆さんとぜんぜん変わりませんよ。一生懸命やっているのは、皆さんもプロとして毎日仕事をしているのと同じですし。まあ、身体は丈夫ですけど(笑)、それは試合で怪我をしないために練習しているんであって。

それに、プロレスは観客と近いスポーツエンタテイメントだと思うんですね。プロ野球みたいに大きなスポンサーが付いているんじゃなくて、お客さん一人一人がスポンサー。お客さんがチケット買って、Tシャツやいろんなグッズも買って、応援してくれるから成立している。だからこそ、その思いが会場の雰囲気を作ってくれて、たとえテレビで観ていても、気持ちは一緒に闘ってくれているんです。

― 最後に、もしも本当にリングで闘うとしたら、キン肉マンとラーメンマンのどちらがいいですか?

うーん、両方闘いたいですけど。でも、とんでもないことを仕掛けてくるでしょうね。勝とうとするなら、もう普通のルールじゃなくて、たとえばリングを凍らせるとか、そういうことでもしないと勝てないですよ、絶対(笑)。

注1:人類プロレスラー計画『中西ランド』は、インターネット配信の動画チャンネル「テレ朝動画」の無料コンテンツ。個性的なプロレスラーたちをゲストに迎え、さまざまな企画に挑戦する。対談は#34。

▼前編はこちら

やっぱ、僕はプロレスが好き。追い込まれるほど"火事場のクソ力"が出る。新日本プロレス中西学『キン肉マン』【私のバイブル #2(前編)】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

[プロフィール]
中西学(なかにし・まなぶ)
プロレスラー。1967年京都府京都市生まれ。高校時代からレスリングを始め、専修大学卒業後、和歌山県庁に就職。新日本プロレスのレスリング部門「闘魂倶楽部」に入り、1992年、バルセロナオリンピックのレスリング・フリースタイル100kg級に出場。同年、プロレスラーとしてデビュー。鍛えられた肉体と怪力を活かしたファイトスタイルで活躍。ニックネームは「野人」。2009年、棚橋弘至を破り、第51代IWGPヘビー級王者に輝く。その朴訥とした天然キャラクターで親しまれ、テレビ出演も多い。
◎新日本プロレス オフィシャルサイト http://www.njpw.co.jp/
◎WRESTLE KINGDOM 12 in TOKYO DOMEイベント特設サイト  http://www.wrestlekingdom.jp/

[作品紹介]
『キン肉マン』(全60巻)
ゆでたまご作のプロレス系格闘漫画。週刊少年ジャンプで1979年から1987年まで連載。超人のキン肉マン(キン肉スグル)が悩みながらも、ユニークな超人たちと闘いながら成長していく姿を描く。1983年と1991年に日本テレビ系列でアニメ化。キャラクターの姿をした消しゴム(キン消し→キンケシ)が発売され、子ども達の人気を集めた。平成29(肉)年最後の「キン肉マンの日」である12月29日(金)には、『キン肉マン 61巻』を発売予定。
◎【コミックス】集英社マンガネット S-MANGA.net  http://www.s-manga.net
◎【連載】週プレNEWS http://wpb.shueisha.co.jp/comic_novel/

<Text:渡辺幸雄+アート・サプライ(松田政紀)/Photo:小島マサヒロ>

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