
トレーナーが語る「最速で腹筋を割る方法」とは?腹筋トレーニングより優先すべきは…
「割れた腹筋」は、誰もが理想の体として挙げるポイントのひとつ。しかしやみくもに運動していても、割れた腹筋は作ることはできません。
最速で腹筋を割りたいなら、やるべきことに優先順位があります。プロスポーツトレーナー・和田拓巳さんが解説します。
「腹筋運動をやればお腹が割れる」は間違い
腹筋を割るために腹筋運動を頑張っている人も多いはず。しかし、腹筋運動をやればお腹が割れるというのは間違いです。
なぜなら、腹筋の構造自体は、生まれたときから6つに分かれたシックスパック(人によっては8つのエイトパック)になっているからです。
もし今、皆さんの腹筋が割れていないのであれば、その原因は腹筋の上に蓄積している皮下脂肪。割れた腹筋が皮下脂肪に埋もれて、見えていないだけなのです。
割れた腹筋を手に入れるステップ
割れた腹筋を最速で手に入れるためには、いくつかのポイントがあります。
ステップ1 まず体脂肪率を下げる
腹筋を割るための第一歩は、体脂肪を減らすことです。
先ほど説明した通り、どんなに筋肉が肥大しても、筋肉の上にある皮下脂肪が厚ければ、割れた腹筋はいつまでたっても現れてきません。逆に筋トレをしなくても、皮下脂肪が少なければ割れた腹筋が見えるようになります。
痩せている人は皮下脂肪が薄いため、運動をしていなくてもシックスパックになっているはずです。
ステップ2 次に腹筋の厚みをつける
体脂肪率を下げるのと並行して、腹筋の厚みをつけることも大事です。
腹筋も他の筋肉同様、鍛えれば太くなっていくため、筋肉を肥大させることでこのシックスパックの凹凸がくっきりして、割れた腹筋が強調されます。
体脂肪が少なくてうっすら割れて見えるようになったら、積極的に筋トレを行い、筋肉を肥大させることで、よりはっきりとしたシックスパックを作ることができます。
MELOS公認トレーナー・冨田さんの腹筋
ステップ1「まず体脂肪率を下げる」──体脂肪率を下げるなら“有酸素運動”
では、腹部の体脂肪を下げるための、おすすめの方法を紹介していきましょう。
部分痩せはできないので、全身痩せを目指す
誰もが気になる腹部だけの脂肪を減らしたいと思うことでしょう。
しかし、体脂肪は部分的に減らすということができません。そのため腹部の体脂肪を減らそうと腹筋運動をしても消費カロリーは少なく、体脂肪減少効果は低いのです。
全身を動かす運動で、体全体から体脂肪を減らす必要があります。
有酸素運動は脂肪を減らすためにはマスト
体脂肪を減らすには、有酸素運動が欠かせません。
有酸素運動で使われるエネルギーは脂肪。脂肪は体内に多く蓄積されているため、エネルギー切れを起こす心配がなく、強度が低い有酸素運動であれば長時間運動を続けられるため、脂肪燃焼に適しています。
有酸素運動を効果的に行うには、過去記事「なぜ有酸素運動はダイエットに効果的なのか。脂肪燃焼のメカニズムとは」を参考にしてみてください。
「筋トレ×有酸素運動」で脂肪燃焼を高めることができる
筋トレの目的は、筋肉量を増やすこと。筋肉量を増やすことで基礎代謝が上がり、エネルギーを消費しやすい体になります。
ただ、筋トレは消費カロリーがそれほど多くないので、運動中の脂肪燃焼については、効率が良いとはいえません。
しかし、筋トレと有酸素運動を組み合わせた場合、有酸素運動だけの場合よりも脂肪燃焼効果を高めることができるのです。
■筋トレ後は脂肪が燃焼しやすいタイミング
筋トレが終わったあとの数時間は代謝が高い状態が続くうえ、脂肪の分解を促す「成長ホルモン」の分泌が活発になります。
筋トレを行い、成長ホルモンを多く分泌させることで、蓄積されている体脂肪が分解されて血中に流れ込み、燃焼されやすい「遊離脂肪酸」という形に変化します。
そのタイミングで有酸素運動を行うことで、効率よく脂肪を燃焼させることができるのです。
タバタトレーニング・HIITもオススメ
脂肪燃焼にさらに効果的なプログラムとして、以下が挙げられます。
- タバタトレーニング(TABATA PROTOCOL)
- HIIT(High Intensity Interval Training)
タバタトレーニングは、ハードなエクササイズを20秒→休息10秒を繰り返し6~7セット行う方法です。
「HIIT」は、タバタのように、ハードな運動と休憩を短時間に交互に連続して繰り返す方法の総称です。
この運動&休憩の組み合わせが、高い脂肪燃焼効果を出すのです。自重でできるものも多いため、自宅でも実践することができます。
運動だけじゃ効果は薄い! 食事コントロールで摂取カロリーを抑えることはマスト
体脂肪を減らすためには、運動と並行して食事のコントロールも行う必要があります。
ただし、体脂肪率を減らそうと、食事を抜くのはNG。食事を摂らずに体重を落とすと、体脂肪だけでなく筋肉も一緒に大きく減少させてしまい、リバウンドが起こる確率が高くなります。
食事コントロールの基本はたんぱく質を中心に、糖質と脂質を控えめにすることです。
また、食事回数を変える方法もあります。
3食で食べる量を4~6回に分けるなど、食事量は変えずに食事回数を増やすことで、血糖値の上昇を抑え、体脂肪の蓄積を防ぐことができます。
ステップ2 次に腹筋の厚みをつける──腹筋の厚みをつけるカギは“腹直筋”
つぎに、腹筋自体の厚みをつける効果的な方法を紹介します。
腹筋に厚みをつけたい。どこの筋肉を肥大化させればいい?
割れた腹筋を作るには、「腹直筋」を肥大させる必要があります。
腹直筋は、腹部の正面、表面にある筋肉で、筋肉の間に縦に走っている“白線”と呼ばれる線維と、横に走っている“腱画”と呼ばれる腱性線維が走行しています。白線と腱画が交差していることによって、腹直筋は割れて見えるのです。
腹直筋を肥大させると、白線・腱画と筋肉の凹凸がはっきりし、くっきりと割れて見えるようになります。
腹直筋は上部と下部を分けてトレーニングする
腹直筋をトレーニングする際は、「上部」と「下部」に分けてメニューを組むとよいでしょう。
腹直筋は、肋骨から恥骨まで走行している長い筋肉です。上部はみぞおちからおへそあたりを指し、主に体幹部を屈曲させるときに力を発揮します。腹直筋下部は骨盤の前部あたりを指し、腹圧を高める働きを持っています。
そのため、エクササイズによって上部と下部の意識しやすい部分が変わります。どのエクササイズでも腹直筋全部刺激することができますが、どちらに効いているかを意識することで、より効果が高まります。
回数をこなすより「キツさ(負荷)」が重要
ほかのエクササイズは10回×3セットで行っていても、腹筋は100回続けて行うというように、腹筋運動は、回数を重視して行っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、その方法では筋肉は太くなりません。
筋肉を太くするには、他の部位同様に8~12回程度で限界になるような負荷が必要です。何百回もできるような方法は、負荷が軽すぎるため筋肥大には効率的ではありません。
腹筋もほかの筋肉と同じように、高負荷で行うことも必要です。
【男性版】腹筋を割る方法。理想の体脂肪率、筋トレ種目はこれだ!
最後に男女別に割れた腹筋の作り方を解説していきます。まずは男性の場合です。
目安となる体脂肪率
男性の場合、腹筋が割れて見えるようになってくるのは、【体脂肪率15%】くらいからです。くっきりと割れたシックスパックを目指す場合は、【体脂肪率10%以下】を目指すようにしましょう。
おすすめのエクササイズ
どの種目も、負荷を高めて10~20回×3セットを目指しましょう。
クランチ
1.仰向けに寝転がった状態で膝を軽く曲げ、手は頭の後ろに置く
2.腹筋を意識し、上半身を丸めながら起こしていく
3.腹筋を意識しながらゆっくりと戻していく
レッグレイズ
1.仰向けに寝転がって、両手の手のひらを床に置く
2.かかとをくっつけて両足を浮かせる
3.床から90度になるように足を上げる
4.地面ギリギリまで足を下げる
腹筋ローラー
1.膝をつき、肩の真下にローラーをセットする
2.腰を反らず、腹筋に力を入れながらゆっくり前進する
3.フォームが崩れない限界の場所まで行ったら、ゆっくり倒れる
ちなみに、腹筋は毎日鍛えても問題ありません。できるだけこまめに取り組みましょう。
【女性版】腹筋を割る方法。理想の体脂肪率、筋トレ種目はこれだ!
次に女性の場合を紹介します。
目安となる体脂肪率
正直なところ、女性が男性のようにシックスパックを作るのは難しいといえます。なぜなら、女性は体脂肪を減らし過ぎることでさまざまな弊害があるからです。
体脂肪率が20%以下になると、生理不順や免疫力の低下などを引き起こします。女子アスリートが体脂肪を減らし過ぎたことで、このような症状を引き起こす場合があります。
それでも、引き締まったかっこいい腹筋を目指したいという“腹筋女子”も多いはず。
女性の場合はシックスパックではなく、うっすら縦線が入った腹筋「アブクラックス」を目指しましょう。
■アブクラックスとは
アブクラックスは、バストの下からおへそにかけて、お腹の中央に見える縦のラインのことを指します。
また、体脂肪が少なく脇腹がしっかり鍛えられていると、脇腹との境目に縦ラインも現れます。
MELOS公認トレーナー・MIHOさんの腹筋
アブクラックスは体脂肪率が20%くらいになると現れます。割れた腹筋を目指す女性は体脂肪率20~22%を目指すようにしましょう。
おすすめのエクササイズと実施頻度・回数
女性の場合は以下種目をはじめ、腹筋の深部にある腹横筋を鍛える種目、10~20回×3セットを目指して行いましょう。腹横筋を鍛えることで、腹圧を高め、腹部を引き締める効果があります。
クランチ
1.仰向けに寝転がった状態で膝を軽く曲げ、手は頭の後ろに置く
2.腹筋を意識し、上半身を丸めながら起こしていく
3.腹筋を意識しながらゆっくりと戻していく
ニートゥチェスト
1. 床に腰を降ろして両手を横に置き、少し後ろに体重をかけるようにする
2. 両脚を浮かせたらお尻でバランスを取り、両膝を胸に引き寄せていく
3. 脚を下げながら伸ばし、地面ギリギリで止める
ドローイン
1.仰向けに寝て、ヒザを立てる
2.腹式呼吸を繰り返す(息を吸うときお腹が膨らみ、吐いたとき凹ませる)
3.息をゆっくり吐きながらお腹をへこませていく
4.限界までお腹をへこませながら息を吐ききり、10~30秒キープする
プランク
1.両肘を床につけ、うつ伏せになる
2.腰を浮かせ、背筋をまっすぐに伸ばす
3.頭、背中全体、腰、かかとが一直線になるように姿勢をキープする
著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴22年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院や競技チーム帯同で得たケガの知識を活かし、リハビリ指導も行う。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで執筆や商品監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信中。2021年 著書「見るだけ筋トレ」(青春出版社)発刊。
Official site : https://wada0129.wixsite.com/takumiwada
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<Text:和田拓巳/Edit:編集部>