フィットネス
2024年2月20日

【ウォーキングダイエット】カロリー消費を高める歩き方は?元日本代表アスリートが解説

健康意識が高まるなか、道具を必要としない「ウォーキング」に関心を持つ人が増加しています。

今回は、シドニー五輪競歩・元日本代表の柳澤哲さんに、ウォーキングのメリットやダイエットに役立つ歩き方、運動強度などを聞いてみました。“歩き”のプロから正しい知識と実践方法を学び、効率的に脂肪燃焼を狙いましょう。

ウォーキングにはどんな効果が期待できる?

身近な有酸素運動であるウォーキング。通勤・通学時や散歩のときに気軽に行うことができますが、具体的にはどんなメリットが期待できるのでしょうか。

脂肪を燃焼させる

「ウォーキングでは脂肪を燃やすことができます。脂肪を燃やすには、酸素が必要です。きつい息切れしてしまうような運動だと、酸素が取り込みにくくなってしまうため、会話ができるくらいのスピードでウォーキングをしていただくのがオススメです。会話ができているということは、酸素を吸って話すことができているというしるしで、有酸素運動になっています。また、ダイエット運動という点で、楽すぎず、続けやすいというのもメリットです」(柳澤さん)

たしかに、息切れするレベルだとウォーキングというよりジョギング、ランニングになってしまいますね。キツイと続かないので、程よい負荷のウォーキングで運動を継続させましょう。

ちなみにウォーキングには、脂肪燃焼のほかにもいろいろな効果が期待できます。

セロトニン分泌を促し、メンタルや脳の働きをよくする

ウォーキングを行うことで、メンタルを安定させたり、脳にも良い影響を与えるといいます。

「ウォーキングを行うと、セロトニンという幸せホルモンが出やすくなります。セロトニンには、心を安定させてくれたり、頭の回転を良くするなどうれしい機能が備わっています。セロトニンは、朝日を浴びたり、運動やリズム的なボディタッチなどにより分泌を促すことができます。たとえば、ウォーキングを朝に行うことで、朝日を浴びながら左右対称に身体を交互に動かすので、よりセロトニンが出やすい環境を作ることができます。朝のウォーキングが難しい場合は森林浴などもオススメです」(柳澤さん)

ウォーキングをすると体も引き締まる!?

全身運動であるウォーキングは、ちょっとしたポイントでさまざまな部位への引き締め効果が期待できます。

「しっかりと意識をすれば全身運動になります。たとえば、腕をきちんと振ると二の腕や背中、肩甲骨に効きますし、姿勢よく立つことを意識すれば体幹トレーニングにもなります。また、動くときにお尻や足など大きな筋肉がある部位も使いますので、ただ歩くだけでなく筋肉の動きも意識してみましょう。日常生活で、意識をしないとあまり使われないのは背中と二の腕。ウォーキングの際は、二の腕が前後にしっかりと離れるよう動かしてあげましょう」(柳澤さん)

ウォーキングダイエットのやり方

ここからは、脂肪燃焼につながるウォーキングのコツを教えてもらいます。まずは基本の歩き方から!

歩き方

「肘を90度に曲げて、腕をしっかりと振りましょう。腕を振ると歩くリズムが早くなりやすくなるので、同時に足の回転数もあがりスピードが出やすくなります。スピードを上げることで、“楽すぎないウォーキング”になるので、消費カロリーが高くなります。足は、かかとから着地しましょう。着地の際につま先が上がっていないと、つまづきやすくなる原因にもなってしまいます」(柳澤さん)

腕の振り方
肘をしっかりとまげて前後に動かしましょう

足の踏み出し方
かかとから着地しましょう

歩く速さ

「会話ができるくらいのスピードでおこなうのがオススメです」(柳澤さん)

全身を使った歩き方を意識するほか、効果を出すために押さえておきたいポイントとしては以下が挙げられます。

「脂肪燃焼に適している心拍数120程度を維持し、負荷を一定にかけ続けて頂くことを目指すのが効果的です。最近ではFitbitなどのスマートウォッチも多く出ていますので、心拍数を手軽に確認することもできます。感覚的には『ややきつい』程度を目安にしましょう。誰かと話しながら、ギリギリ会話できる程度のスピード感でおおよそ心拍数120程度になります」(柳澤さん)

※心拍数の上がり方には個人差があります。 

ウォーキングダイエットの時間と頻度

気になるのが、「どれくらい続ければダイエット効果を感じられるのか」。変化が感じられるまでの期間の目安とはどのくらいでしょうか。

効果が出る目安

「2か月程度は続けてみてください。個人差はありますが、60分のウォーキングで約180~230kcal程度の消費になります。脂肪1gを減らすのに7kcal必要となりますので、計算すると、2か月間、毎日続けていただくと約2kgの脂肪が減る計算になります」(柳澤さん)

2か月間、毎日。そうは言っても忙しくてウォーキングの時間がとれないという人は、どのようにトライするのがよいのでしょうか。

「もちろん毎日ウォーキングしていただくのが効果的です。ただ、時間を作るのが難しいという方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は通勤の時間なども活用してください。たとえば、通勤で20分×往復の場合、帰りは1駅手前で降りて30分ほど歩いていただくなどです。心拍数を目標値まで上げられなかったとしても、カロリーを消費することを意識していただくとダイエットへの近道となります」(柳澤さん)

時間を分けてウォーキングしても効果ある?

通勤・通学時間を利用するやり方なら、毎日続けられそうですね。ということは、朝と夜で分けて歩いても効果はあるのでしょうか。

「ウォーキングの時間をしっかりとれる場合は60分程度、1日数回に分けて行う場合はトータルで90分程度を目指してみてください。朝、夜と分けて歩いても効果はあります。時間をまとめて取ろうとして負担になり、継続できなくなるほうが良くありません。自身のライフスタイルに合わせて、取り入れてみてください」(柳澤さん)

継続することが何よりも大切。とはいえ、やはり長時間歩いたほうがダイエットに効果的なイメージも拭えませんが……。

「脂肪燃焼しやすい心拍数(120程度)を保つ時間が長いほど消費カロリーも多くなりますので、時間が取れる場合はオススメです。途中に休憩を入れる場合は、身体が冷えきらないよう5分程度で再開すると、心拍数がダイエット時の理想値に戻りやすい状態になります」(柳澤さん)

ウォーキングにおすすめの時間帯やタイミング

ライフスタイルにあわせて、続きやすい方法で行うのがベスト。ちなみにウォーキングにおすすめの時間帯やタイミングなどはあるのでしょうか?

「ダイエットをしたい場合は、食前に歩くことをおすすめしています。食後は食べたものが栄養として血液の中に入っていくので、それを優先的に使ってしまい、脂肪燃焼に手を伸ばすのに時間がかかってしまいます。このことから、空腹時に歩いてほしいですが低血糖にもなりやすいので、飴などを舐めながら行ってみてください。また、朝日を浴びながらウォーキングすると、前述の通りセロトニンが出やすいので心にも良い効果があります」(柳澤さん)

なるほど。朝にランニングをするのと同じように、運動前にドリンクやバナナなどの軽い食べ物を少しだけ摂ってからスタートするのが、脂肪燃焼にもメンタルコンディショニングにもよさそうですね。

ウォーキングで消費できるカロリーはどれくらい?

ダイエット目的でウォーキングを始めた人が気になる、カロリー消費の数値。なんとなくランニングのほうが消費するカロリーが多いような気がしますが……!?

「1時間のウォーキングで、おおよそ180-250キロカロリーくらいが消費されます。心拍数120程度まで上げられると消費カロリーももう少し上がっていきます。年齢や体重により変動しますので、自身の状態をくわしく把握したい場合はスマートウォッチなども活用してみてください」(柳澤さん)

身長体重によって消費カロリーは異なってきますが、1時間のウォーキングでおにぎり1個ぶんほど。

案外少なくない!? と感じる人もいるかもしれませんが、腕振りや歩く動作などで筋肉を動かしたり、血流アップ、食欲や睡眠の質につながるなど、さまざまな影響が考えられます。

ダイエット効果が期待できない歩き方とは

ここまでで、正しい歩き方と取り組み方を学びました。逆に、ダイエットに繋がりにくいNGな歩き方もあります。

「腕を振らないと上半身の運動効果が落ちるので、しっかりと腕を振っていきましょう。また、歩くスピードが遅くなってしまうというのも、ダイエット目的の場合は不向きです」(柳澤さん)

また、通勤・通学時のウォーキングをおすすめしましたが、革靴やヒール靴で行うのは、怪我や痛みの原因にもつながるため、避けたほうがよいとのこと。

「ヒールはおすすめしません。かかとからの着地がしにくく、外反母趾にもなりやすいためです。足を美しく見せるシューズと、健康のためのシューズは分けて使いましょう。革靴は、靴の中で足の裏の筋肉(足底筋)が滑りやすいので、無意識的に足裏が靴を掴もうとします。そうすると、足底筋が疲れ、フォームが乱れやすくなってしまいます。最近では、ウォーキング用の革靴も販売されていますので、1足で済ませたい場合は自身に合ったものを探してみてください」(柳澤さん)

せっかくの素敵な靴ですが、正しいウォーキングには適さないうえ、履きシワや擦れなど、靴の寿命も縮める原因にもなりかねません。

筋肉痛のときもウォーキングをしていい? 休んだほうがいい?

正しい歩き方で歩いてみたところ、太もも裏とお尻が筋肉痛に! こういうときはウォーキングを控えたほうがよいのでしょうか。とはいえ、明日も通勤ウォーキングが待っているのですが……。

「ウォーキングは筋肉痛のときでもオススメです。筋肉痛時は、筋肉が固くなりやすい状態です。激しすぎないウォーキングやストレッチなどの運動で、血流を流して新陳代謝を上げてあげましょう」(柳澤さん)

よかった! いわゆるアクティブレスト(積極的休養)というやつでしょうか。

参考:疲労回復を高める「アクティブレスト(積極的休養)」の種類と効果

外ウォーキングとウォーキングマシン、効果に違いはあるの?

在宅勤務の人や、天候によって外出したくないとき、室内ランニングマシンを活用する人もいるかと思います。マシンを使ったウォーキングは、外を歩くことと比べて効果に違いはあるのでしょうか。

「ウォーキングマシンは、ベルトコンベアが足を運んでくれるので、地面上で歩くような『自分の足で蹴り出す』ことがなくなります。お尻も使って“蹴り出す”意識をしないと、実際に歩くときとは違うフォームになってしまうので気をつけましょう。また、ウォーキングマシンを使う場合、角度をつけ、坂道を上っているようにすると、踏み出した足に体重を乗せることができるので、お尻の筋肉を使ってあげることができます。角度は1~2%でOKですので、ぜひ試してみてください」(柳澤さん)

ジムでランニングマシンを使うときも、斜度をつけると良いと聞きます。室内ウォーキングをする際は、歩く速さだけでなく角度にも意識を向けるようにすると、効果が発揮できそうですね。

監修者プロフィール

柳澤哲(やなぎさわ・さとし)


2020年シドニー五輪競歩日本代表。元東京大学生涯スポーツ健康科学研究センター技術補佐員。選手引退後は、低体力・知的障害のトレーニングサポートと合わせて、日本陸連・JOC強化スタッフとしてトップアスリートもサポート。その経験を活かしてウォーキングトレーナーとしてパーソナル指導・講習会講師として活躍。フラコラでは、お客様を「最短で美ボディにする」伝道師として、朝のエクササイズ他イベントで誰でも・自宅でもできる筋力トレーニングを配信している。柳澤も講師を務める人気のライブ配信イベント、フラコラ「朝のエクササイズ」毎朝無料で開催中(平日 9:30~9:55)

<Text & Photo:MELOS編集部、株式会社協和>