ウェルネスフード
2024年6月21日

”グルテンフリーは日本人に意味ない”ってホント?理由と効果があるケース[薬剤師監修]

聞き覚えのある方が多いであろう「グルテンフリー」という言葉。海外のスポーツ選手やインフルエンサーが取り入れて以降、一躍有名になりました[*1]。

健康志向の高い人を中心に話題になりましたが「日本人には意味がない、合わない」ともいわれています。

本記事では、グルテンフリーの良い点と悪い点、そして日本人に効果が期待できるのかを解説します。

グルテンフリーとはどんな意味?

グルテンフリーとは端的にいうと、グルテンを含む食品の摂取を控えることです。グルテンとは、麦類に含まれるタンパク質のことをいいます。

パンやうどんを作るときをイメージしてください。小麦粉に水を加えてこねていくと、粉が少しずつまとまってもちもちとした生地になりますよね。

このもちもちとした感触の正体がグルテンです。

もっちりした弾力はパンのふくらみを助けたり、うどんの歯ごたえを生んだりと、見た目や食感を良くするうえで欠かせません。

おいしさのもとになるグルテンですが、摂取すると体調を崩してしまう人がいます。この人たちのために生まれた食事法が、グルテンフリーです。

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"グルテンフリーは日本人には意味がない"といわれる理由

グルテンフリーがブームになる一方で、「日本人には意味がない」ともいわれています。その理由は、主にアメリカやヨーロッパとの人種・食文化の違いにあります。

治療補であり、健康な人が実践しても効果がない

グルテンフリーは、セリアック病患者のために生まれた治療法です。前の項目で説明した「グルテン摂取により体調を崩してしまう人」の代表例がセリアック病患者です。

私たちのからだには、菌やウイルス感染から身を守る、自己免疫系という機能があります。セリアック病の人は、この機能がグルテンを敵とみなして小腸を攻撃してしまいます。

慢性的な炎症による腹痛や下痢、倦怠感などを引き起こすほか、悪化すると消化・吸収不良に陥ってしまうのです[*2]。

この病気への対策として有効なのが、グルテンを食事から抜くグルテンフリーです。そのため、そもそも健康な人が実践しても意味がないといわれています。

日本人の主食の多くは米で、グルテンの摂取量が少ない

ご存じの通り、日本人は米を中心とした食文化を形成しています。そのため、日本人は元来グルテンの摂取量が低く、グルテンフリーの恩恵を受けにくいとされています。

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セリアック病の原因は、主に遺伝的要因と小麦摂取量です。小麦摂取量の多い地域では有病率が高い傾向にあり、アメリカやヨーロッパにおける有病率は約1%。

約100人に1人が発病しているという研究結果があります[*2]。

では、日本におけるセリアック病の有病率は、どれくらいでしょうか。

日本人で発病する人は極めて稀で、有病率は0.05%程度です[*2]。遺伝的にも食文化的にも発症しにくいため、日本人はグルテンを控える必要性が低くなります。

グルテンフリーが注目される理由

「意味がない」といわれる一方で、日本でも多くの人が、小麦を控える取り組みを始めています。なぜ、こんなにもグルテンフリーは脚光を浴びているのでしょうか。

日本人のグルテン摂取量が増加したため

セリアック病は、小麦中心の食文化であるアメリカやヨーロッパで、有病率が高まっています。

そのため、日本人でも小麦食品を多く摂るようになると、将来発症リスクが高まる可能性が示唆されています[*2]。

日本人の年間の小麦消費量は、戦前は1人当たり約8kgでしたが、戦後になると約33kgと約4倍に増加[*2]。その後は昭和40年度で29.0kg、令和2年度で31.7kgとなっています[*3]。

戦後の急増に比べると近年はそれほどではありませんが、緩やかに増加しています。

人によっては、米より小麦の加工品を好んで食べている人もいるでしょう。小麦消費量が増えるにつれ、今後日本でも、セリアック病の有病率が高くなる可能性は否定できません。

小麦アレルギー患者が増えたため

食物アレルギー患者数は上昇の一途にあり、それに比例して小麦アレルギー患者も増えています。

2017年から2020年の3年間で、食物アレルギーの症例は4,851例から6,080例と約25%上昇しました[*4]。

小麦アレルギー患者が増えるなかで脚光を浴びたのが、グルテンフリーです。

グルテンフリーの食品にはさまざまな種類があり、小麦の使用を極力抑えたものや、原材料から除外したものがあります。

そのため、摂取してもアレルギー反応を起こしにくいのが利点です。

グルテンフリーのメリットとデメリット

ひとくちにグルテンフリーといっても、良い面もあれば悪い面もあります。

グルテンフリーによるメリット

  • 小麦アレルギーへの対策になる
  • 健康状態の回復が見込める

小麦アレルギー対策になることと、グルテンを控えることによる健康状態の回復がメリットです。

セリアック病とは別に、体質的にグルテンが体に合わない人もいます。

グルテン不耐症といい、小麦が体内に入ると腹痛や下痢、倦怠感や抑うつなどの身体・精神症状が出てしまう体質です[*5]。

小麦製品をたくさん食べている人で、なんとなく体調が悪いと感じている人は、摂取を控えると症状が改善する可能性があります。

グルテンフリーによるデメリット

  • 栄養バランスが崩れる恐れがある
  • 食品に制限が生まれる

一方で、注意しなければならないのが栄養バランスの乱れです[*6]。小麦、とくに全粒粉には食物繊維やビタミンB類、鉄分などのミネラルが豊富に含まれています。

小麦製品を控える際は、これらの栄養素が不足しないよう栄養バランスに気をつけましょう。

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加えて、摂取できる食品に制限が生まれることもデメリットです。

カレーのルー、ソーセージなど肉の加工品、ハンバーグのデミグラスソースなど、一見わかりにくい食品にも小麦が使われている可能性があります。

食べたいものが食べられず、ストレスに感じてしまう人もいるでしょう。

メリットとデメリットをきちんと理解したうえで、実践することが大切です。

グルテンフリーが効果的な人は?

理解が深まったところで、効果が期待できる人の特徴を解説します。グルテンフリーが自分に合っているかどうか、考える基準になりますよ。

小麦アレルギーを持っている人

小麦アレルギーの人は、効果を実感できるでしょう。

グルテンフリーの食品には、代替材料として米粉やアーモンド粉などの原料を使った食品が多くあります。たとえば、米粉で作ったパンや、アーモンド・そば粉を原料としたクッキーなどです。

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ただし、食品表示には注意が必要です。日本ではアレルギー物質を含む食品に関する表示として、小麦成分を10ppm以上含む食品には、原材料を表示する義務があります。

アメリカやヨーロッパではグルテン含有量が20ppm以下の食品のみが、グルテンフリー表示が可能と決められています[*7]。

つまり、グルテンフリーと表示されていても、微量の小麦を使用した食品もあるということです。商品を選ぶ際は、食品表示を必ず確認しましょう。

日常的に、多くのグルテンを摂取している人

日常的に小麦を多く摂取している人も、効果を見込めるでしょう。

日本人の発病率は低いといわれているものの、過度なグルテン摂取は、セリアック病のリスクを高めてしまう恐れがあります。

また、自分でも気づかないうちに、グルテン不耐症になっている可能性もあります。

とはいえ、急に食事を変える必要はありません。1食だけパンを米に切り替えたり、麺類をフォーや春雨に変えたりして、毎日の摂取量をセーブしてみましょう。

「前より体調が良くなった」と感じたら、からだに合っているサインです。無理のない範囲で継続していくといいでしょう。

グルテンフリーを正しく理解して、体調改善に役立てよう

日本人には効果が薄いといわれるグルテンフリーですが、一部の人には、食事の自由度の向上や健康状態の回復が期待できます。

ただ安易に行うと、栄養バランスが崩れてしまううえに、食の楽しみが制限されてしまう、なんてこともあり得ます。

実践する際は長所と短所を正しく理解して、体調を確認しながら取り組みましょう。

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監修・執筆者プロフィール

あんしん漢方薬剤師
中田早苗

nakata

デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。

健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。

症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。

<参考>
[*1]https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/attach/pdf/30hokoku-23.pdf 38ページ[*2]https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcoloproctology/74/10/74_572/_pdf
[*3]https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-11.html
[*4]https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_220601_01.pdf
[*5]https://www.hyo-med.ac.jp/research/activity/seeds/026/
[*6]https://cir.nii.ac.jp/crid/1390290699751829632
[*7]https://www.maff.go.jp/tokai/seisan/shinko/komeko/attach/pdf/index-2.pdf