• Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • YouTube
  • 健康
  • 「お金より運動が幸福感をもたらす効果が高い」。運動とメンタルヘルスの関係性、120万人の大規模調査で明らかになった

「お金より運動が幸福感をもたらす効果が高い」。運動とメンタルヘルスの関係性、120万人の大規模調査で明らかになった

 運動にメリットがあることは、多くの研究で証明されています。運動はダイエットにいいだけではなく、心血管疾患や脳卒中、糖尿病などさまざまな病気のリスクを低下させることがよく知られています。しかし、運動と精神的な健康との関係となると、学術研究はまだ不十分です。

 運動をするとなんとなく気分がよくなることは、おそらく多くの人が感じていることでしょう。しかし、それを証明する科学的なデータは、あまり目にすることがありません。

 日常的な運動と精神的な健康との関連について研究した論文が、2018年8月、世界五大医学雑誌の一つである『The Lancet(ランセット)』上で発表されました。米国イェール大学と英国オックスフォード大学が共同で行ったこの研究では、米国内に住む18歳以上の成人約120万人という膨大なデータを対象にした大規模な調査が行われました。また運動の種類や頻度、期間、強度の関連についても分析してあります。

どんな研究を行ったのか

 研究チームは、米国疾病予防管理センター(CDC)が管理する2011・2013・2015年の統計データから18歳以上の成人約120万人のデータを抽出し、以下の質問に答えてもらいました。

「過去30日間に、たとえばストレス、うつ病、または感情的な問題などで気分が優れないと感じたことが何回ありましたか?」

 日常的な運動を行うグループと運動を行わないグループそれぞれに「気分が優れない」と申告した日数を比較するとともに、それぞれのグループから性別、人種、家族構成、収入、学歴、体型、身体的健康、そして過去にうつ病と診断されたことがあるかなど、さまざまな角度から複合的な比較調査を実施。

 運動を行うグループには、具体的な運動の種類を75の選択肢(芝刈り、子どもと遊ぶ、家事、筋トレ、サイクリング、ランニングなど)から選んでもらい、それらを行った頻度と期間、強度なども調査しました。


お金より運動の方が幸福感をもたらす

 研究結果として、以下のことが明らかにされました。

・運動をするグループは、1か月の間に気分が優れないと感じる日数が、運動をしないグループに比べて平均して1.49日(43.2%)少ない。

・すべての運動は精神系の病気にかかるリスクを減らす効果がある。その中でもっとも効果が大きいのはチームスポーツ(低減率22.3%)、サイクリング(低減率21.6%)、エアロビクスとジムでの筋トレ(低減率20.1%)の3つ。

・運動を行うグループは、運動をしないグループより年収が約2万5千ドル(約273万円)低くても心理的な幸福感は同じレベルになる。

運動のやり過ぎも逆効果になる

 論文著者らは、運動と精神的な健康の間には大きな関連があると結論づけると同時に、運動量が多ければ多いほどよいというわけでないとしています。著者の1人であるイェール大学のアダム・チェクラウド氏は、以下の言葉を語っています。

「運動の長さと精神への影響はUの形を取ります。運動が精神に好影響を与えるのは、それが適度な時間に収まる場合のみです」

 研究によれば、精神的な健康にもっとも効果があるのは1回45分程度の運動を週3~5回行うことだそうです。最適な運動の種類、頻度、強度などは収入や学歴などの社会的属性とも大きな関連があるとしていますが、一般的には長すぎる運動はかえって悪影響が生じることもあるとのこと。

 1日に3時間以上の運動を行う人は、まったく運動をしない人より精神系の病気にかかる率が高くなると警告しています。運動もまた、過ぎたるは及ばざるがごとし、ということのようです。

・参考文献
Association between physical exercise and mental health in 1·2 million individuals in the USA between 2011 and 2015: a cross-sectional study.Chekroud, S. et al., 2018
https://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(18)30227-X/fulltext#seccestitle10

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】https://www.facebook.com/WriterKakutani

<Text:角谷剛/Photo:Getty Images>

特集 - SPECIAL -

連載 - SERIES -

ランキング

  • 最新