「歳をとると疲れがとれにくい」はウソ!年齢と疲労回復の関係 (3/3)
「年齢はただの数字に過ぎない」は正しいのかもしれない
前述したように、この研究は非常に限定されたサンプルを対象にしています。
19人ではなく1万人以上で比較する、男性だけではなく女性を含める、40代ではなく60代以上を対象にする。あるいは筋トレではなく有酸素運動で試す、趣味程度ではなくハードな筋トレをした場合など、理論的にはいくらでも比較対象を広げることはできるでしょう。
そうした際、回復力と年齢との間には相関関係は出てくるのか。その疑問に答える回答は今のところ見当たりません。これは、今後の研究課題になるでしょう。
しかし、とりあえず「もう年だから」という常套句を、トレーニングを長い間休む理由、あるいは言い訳に使うべきではないということだけは、自分に言い聞かせてもよいのではないでしょうか。
長過ぎる休息は筋トレ効果を下げる
疲れがとれない(と思い込む)から休息を長く持ち、次にトレーニングするときには筋力が落ちている。そんなパターンが繰り返されると、筋トレ効果は上がっていきません。成長は足踏みするか、後退します。
もちろん、十分な筋トレ効果を得るためには適切な休息は不可欠ですし、休息が足りないとオーバートレーニング症候群に陥る危険もあります。しかしながら、長過ぎる休息は運動不足にもなりかねません。
回復力が弱まったから運動不足になるのか、運動不足だから回復力が弱まるのか。まるで卵とニワトリのどちらが先かを問いているようですが、少なくともその2つが原因で、悪循環の無限ループを繰り返す事態だけは避けたいところです。
それを防ぐためには、年齢をフィルターとするのではなく、自分自身の身体と慎重に対話することが重要ではないでしょうか。
関連記事:「乳酸」とは。乳酸がたまるとどうなる?疲れの原因になるの?
参考文献:
*1.Comparisons in the Recovery Response From Resistance Exercise Between Young and Middle-Aged Men
[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
【公式Facebook】
<Text:角谷剛>