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2023年5月17日

「歳をとると疲れがとれにくい」はホント?年齢と疲労回復の関係 (2/2)

研究結果「回復力に明確な差異は発生しなかった」

実験の結果は非常にシンプルで、かつ驚くべきものでした。若者グループと中年グループの間で、回復力に明確な差異は発生しなかったのです。

絶対的な筋力そのものは当然ながら若者グループの方が勝っていたものの、その筋力を元に回復する相対的なスピードは、両グループとも同じでした。

筋肉のストレスと炎症が治まっていく過程も、両グループが同じ軌道で推移し、主観的な筋肉痛や張りの度合いについても同様です。

年齢にかかわらず、普段からハードに筋トレを行っている人ほど回復力が高いという結果も見られました。

「年齢はただの数字に過ぎない」は正しいのかもしれない

前述したように、この研究は非常に限定されたサンプルを対象にしています。

19人ではなく1万人以上で比較する、男性だけではなく女性を含める、40代ではなく60代以上を対象にする。あるいは筋トレではなく有酸素運動で試す、趣味程度ではなくハードな筋トレをした場合など、理論的にはいくらでも比較対象を広げることはできるでしょう。

そうした際、回復力と年齢との間には相関関係は出てくるのか。その疑問に答える回答は今のところ見当たりません。これは、今後の研究課題になるでしょう。

しかし、とりあえず「もう年だから」という常套句を、トレーニングを長い間休む理由、あるいは言い訳に使うべきではないということだけは、自分に言い聞かせてもよいのではないでしょうか。

長過ぎる休息は筋トレ効果を下げる

疲れがとれない(と思い込む)から休息を長く持ち、次にトレーニングするときには筋力が落ちている。そんなパターンが繰り返されると、筋トレ効果は上がっていきません。成長は足踏みするか、後退します。

もちろん、十分な筋トレ効果を得るためには適切な休息は不可欠ですし、休息が足りないとオーバートレーニング症候群に陥る危険もあります。しかしながら、長過ぎる休息は運動不足にもなりかねません。

回復力が弱まったから運動不足になるのか、運動不足だから回復力が弱まるのか。まるで卵とニワトリのどちらが先かを問いているようですが、少なくともその2つが原因で、悪循環の無限ループを繰り返す事態だけは避けたいところです。

それを防ぐためには、年齢をフィルターとするのではなく、自分自身の身体と慎重に対話することが重要ではないでしょうか。

関連記事:「乳酸」とは。乳酸がたまるとどうなる?疲れの原因になるの? 

参考文献:
*1.Comparisons in the Recovery Response From Resistance Exercise Between Young and Middle-Aged Men

[筆者プロフィール]
角谷剛(かくたに・ごう)
アメリカ・カリフォルニア在住。IT関連の会社員生活を25年送った後、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州アーバイン市TVT高校でクロスカントリー部監督を務める。また、カリフォルニア州コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得している。著書に『大人の部活―クロスフィットにはまる日々』(デザインエッグ社)がある。
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<Text:角谷剛>

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