インタビュー
2018年5月1日

絶対勝てないけど刃牙や独歩と戦ってみたい。総合格闘家・堀口恭司『グラップラー刃牙』【私のバイブル #4(前編)】 (1/3)

 超一流のアスリートも、小さい頃はマンガの主人公に憧れ、未来を夢見る少年少女でした。彼らはどのようなマンガに影響を受け、成長してきたのでしょうか。

 今回は、5月6日(日)に開催される『RIZIN.10』(マリンメッセ福岡)に向け帰国し、国内での調整に入った総合格闘家・堀口恭司選手に格闘マンガの金字塔『グラップラー刃牙』から受けた衝撃や作品への想いを訊きました。

▼後編はこちら

リアルを描き続ける作品は「格闘家の夢」。総合格闘家・堀口恭司『グラップラー刃牙』【私のバイブル #4(後編)】 | 趣味×スポーツ『MELOS』

「パンチが痛そう!」なリアリティ

― 堀口選手と『グラップラー刃牙』の出会いはいつ頃だったんですか?

中学2年生くらいのときに、友だちに教えてもらったんです。シリーズでいうと『バキ』、死刑囚編でしたね。それで読んでみたらこれは面白いなと思い、それからずーっと読んでますね。

― もともとマンガは好きだったんですか?

そんなに読む子どもではなかったですね。刃牙以外にどんなマンガを読んでいたかと聞かれても、思い出せないほど(笑)。記憶から消去されちゃってますね。『はじめの一歩』とかは読んでましたけど。

― そんな堀口少年は『グラップラー刃牙』のどんなところに惹かれたんでしょうか?

僕は5歳から空手をやっていたんですけど、その僕の目から見ても、当時のマンガでパンチの型とか、腰の入れ方とかを表現できていたものっていうのがあまりなかったんですよ。「いや、このパンチ絶対痛くないでしょ」とか「効かないよねー」という絵が多かったんですけど、刃牙はその辺りがちゃんと絵で表現されていたんですよね。

― 痛いパンチをちゃんと痛いパンチとして描けていたわけですね。

体の使い方だったり、筋肉だったり、腰もちゃんと入ってましたし、「このパンチは痛いよな」という絵の説得力が圧倒的にあったんですよ。それで当時自分も中学生でしたし、これを自分で試したら強くなれるんじゃないかという、リアリティを感じたんです。

― マンガ的にディフォルメされた表現、絵ではあったけど武道家としての視点ではリアルがあったわけですね。刃牙に影響を受けて何か練習してみたり、取り入れたりということもされましたか?

蹴りの形とかは「やっぱこれが効くのかな?」って真似してみたり、あとは渋川剛気の合気道、力を抜いて受け流すとかも真似しましたね。

― 岩が丸くなるまで打撃を続けたり、ヘリコプターに引っ張られたりというのはさすがに真似しなかった?

それは無理ですよね(笑)。ただ、刃牙がやってた、耳をひねってエンドルフィンを出すというのは試してみましたね。まあ、ぜんぜん出なくて、「なんだよこれマンガの話かよ!」ってなりましたけど(笑)。

― たしかに(笑)。でもあれは刃牙が設定したスイッチであって、繰り返し行えばコントロールできるようになるみたいですけどね。

そうなんですか!? もっとも今の自分はエンドルフィンを出すというよりも、「いかに平常心で、普通の状態で試合に臨むことが大事」というメンタルコントロールを心がけてますけど。

― テンションを上げていくのではなく、あくまでも平常心なんですね。

変に興奮状態になると、冷静な判断ができなくなるじゃないですか。やはり総合で戦う上では自分の気持ちをコントロールして、試合のいかなる状況にも冷静に対応していくことが重要で、そのためには常に考え続けなきゃいけないと思っています。

― 常にいつもどおりのテンションとなると、勝ってもそこまで喜びはないんですか?

勝ったり、タイトルを獲った瞬間はそりゃうれしいですけど、それよりも釣りをしていて、でかいのが釣れたときほうが興奮しますね(笑)。「やべっ、でけーのきた!」って。

― タイトルマッチより釣りですか(笑)。

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