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大根仁×訓覇圭。前畑がんばれ、ヒトラーを描くベルリン五輪、「ボクなりに理想とする『いだてん』の回になった」 (2/3)

[訓覇]
当初、宮藤さんとも「女性のスポーツをやっていこう」なんて相談をしていましたが、実際に女性目線で物語を構成していくと、一番ダイレクトに時代と向き合うことになるんだと驚きがありました。当時のアスリートや関係者が残した言葉から、想像して世界観をつくっていくんですが、女性のスポーツの歴史には発見が多かった。大根さんのおかげで、たくさんの発見がありましたよ。

――人見絹枝さんと前畑秀子さん。彼女たちを撮ってみて感じた共通点などがあれば教えてください。

[大根]
お二人を演じた菅原さんと上白石さんに、その意識があるかどうかはわかりませんが、僕は撮影している時に何度か、確実に人見絹枝さんが菅原さんに、前畑秀子さんが上白石さんに舞い降りている瞬間を感じました。具体的にいえば、菅原さんは800メートルのゴールの直前のシーン、上白石さんはラスト50メートルの"がんばれ!!"のシーン、僕には2人が役を越えて本人と同化したように見えました。

第36回は、ボクなりに理想とする『いだてん』の回になりました(大根)

――どの回をどの監督に演出してもらう、という分担はいつ決まるものなんでしょうか。

[訓覇]
いろんな要素をもっているのが宮藤さんの脚本の特徴ですが、笑いの要素、女性の活躍、などの面で大根さんに期待するものがありました。

[大根]
現場でやっている間に、決まっていく部分もあるんです。第36回は、ボクと(チーフ演出の)井上剛さんの共同演出になっていますが、これもはじめから決まっていたことではなくて。ベルリンオリンピックが終わって後半の東京パートになるときに、次の第37回に直結している話だったので、井上さんが撮った方が良いかなと思った。あと単純に、ボクは軍人が出てくるシーンとか会議は苦手と言いますか、ああいうのってやっぱNHKの人が撮った方が上手いんじゃないかと思っていて(笑)。そこで、ラスト10ページを井上さんに託すということをしたんですよね。それが功を奏しまして(笑)。陸軍次官が入室したときに日の丸に一礼するシーンを入れるとか、ボクは思いつかないですね。井上さん、やっぱりうめーな、NHKの人は撮り慣れているなーと感服しました。

『いだてん』に参加した当初から、「何回か共同演出をやりましょう」とも話していました。一回の中に複眼的な演出要素が入ってきたら新しいんじゃないか、という考えがあり、いろんな監督が得意分野をそれぞれ撮って、後でミックスする回ができると良いなと思っていたんですよね。過去にも、シベリア鉄道でストックホルムに行く回など、3回くらい井上さんと共同演出しています。

第36回は、理想の共同演出回になりましたね。コメディ、シリアス、スポーツ、女性アスリートの要素があって、大河ドラマらしい重い感じも盛り込めた。ボクなりに理想とする『いだてん』の回になりました。

オリンピック史を通じて見ても重要な回(訓覇)

――第36回のドラマで伝えたかったことは。

[訓覇]
こういう題材ですが、この時代の話を、エンタメでしっかり見せることが大事だと考えています。これをきっかけに「史実は、どうだったんだろう」と考える人が増えればうれしいですね。ドイツ国内で、あれだけの規模の人たちが、みんな同じ角度で敬礼をしていて、という事実がそこにはあった。できるだけ正確に伝われば、と思っています。第36~39回で、ボクが『いだてん』でやりたかったことのクライマックスが訪れていて。いま大事なゾーンに来ています。その始まりが第36回です。

――『いだてん』における、第36回の位置づけについてどうお考えですか。

[訓覇]
さっきの話と被るんですが、オリンピック史を通じて見ても重要な回で、ボクの中では見たことのない新鮮さを感じました。戦前の日本におけるスポーツ史のピークであり、ポジティブなパワーが出てくるピークであると同時に、世界が戦争に向かって大きく動き出す感じがリンクしてくる。光と影を同時に描いていく『いだてん』で見て欲しいものが結集している回です。前畑がんばれ、で終わらせない宮藤さんの構成力もすごい。ためになるエンタメに仕上がっていると思いますので、ぜひ、多くの方に見て欲しいですね。

[大根]
演出としては、ターニングポイントの回になりました。オリンピックを知らなかった、スポーツの概念すらなかった日本に、金栗四三と三島弥彦が出てきてストックホルム大会に参加することから始まって、戦前はベルリン大会でひと区切りとなります。日本スポーツ界にとっての、ひとつのピークでもあるし、ここからまったく別のものが始まっていく。そういった回を演出できたのはうれしかったですね。改めて、最後の10ページを井上さんにやってもらってよかった(笑)。

――大根さんは個人的に、がんばれと言う方ですか。

[大根]
ボクも割合、すぐに言っちゃいますね。便利で無責任な言葉だなぁ、と前々から思ってはいますが。言われたら「うるさい、お前ががんばれ」と思うこともありますが、でも言われて素直にうれしいときもあるし。不思議な言葉ですよね。

[訓覇]
スポーツって、もう最後にかける言葉ががんばれしかない(笑)。それしか言いようがないので、アナウンサーの河西さんも連呼したんでしょうね。

分からないからといって、ヒトラーを表現しない、ということはしたくなかった(訓覇)

――ベルリンオリンピックに臨む日本選手の雰囲気などは、どの程度、史実に基づいていますか。

[訓覇]
当時の日本選手団が、ベルリン大会の歴史的な位置づけをどの程度理解していたのか、興味があるところですよね。その部分って、なかなか分からないんです。「ハイル・ヒトラー」という敬礼が流行っていたり、日本選手が厚遇されたなどの資料はあるのですが、ドイツと日本が、ほんとうにお互いをどれくらい親しく感じていたのかハッキリとした資料があるわけではない。選手自身も「政治的な関係も影響して、ボクらはこれだけもてなされているんだろうか」と思っていたりもします。選手たちの間にもさまざまな気分があったんだなぁと思います。選手団がヒトラーと面会したことは分かっています。でも会話までは残っていない。残っていれば、そのあたりの温度が分かったんでしょうけれど。

でも、はっきり分からないからといって、ヒトラーを表現しない、ということはしたくなかった。こうしたセンシティブな題材を描くことには、やっぱり怖さがある。少なくともNHKではこれまでドラマで、ヒトラーをここまで描いたことは少なかった。でも、『いだてん』では、そこを一歩進めたかった。いくつかの事実の中から、こうじゃないかという推測をして、フィクションとして、この時代と正面から向き合いたいと思いました。

――第36回には、がんばれを肯定するメッセージ性も込めたのでしょうか。

[大根]
宮藤さんの脚本家としての秀逸なテクニックがあると思います。まずはがんばれを封印するところからドラマを始める狙いだった。史実では、前畑ががんばれをあれほど拒否していた、ということはありません。フィクションの部分としてうまいな、と思いますね。そして、それを回のクライマックスで消化していくという。ボクもこれからはがんばれを遠慮しないで使おうと思いました(笑)。

[訓覇]
第35回の終わりに、次回予告の前に先にまーちゃんが「前畑がんばれ」と言ってしまう。五りんが「いまそれ言っちゃう?」と言って終わりますが、これもうまいですよね。

今回の現場で、イチバン追い込んだのはトータスさん(大根)

 また、前畑秀子(上白石萌歌さん)や河西三省(トータス松本さん)の演技のほか、重要な役割を担ったヒトラーやゲネンゲルといった外国人のキャストに関するエピソードについても語ってくれました。

 ただし、ここからは第36回で描かれるシーンに関する具体的なネタバレを含んでいるので、ご注意ください!

※※【要注意】以下、第36回のネタバレエピソードを含みます※※

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