インタビュー
2022年1月18日

「ラグビーはボールを使った最高の遊び」。ラグビー界のレジェンド、元日本代表・伊藤剛臣さんに聞く”ラグビーの楽しみ方” (3/3)

準備でケアできるところは、細心の注意を払って念入りに

――現役時代に勝つためにやっていたトレーニングは何かありますか。

練習は、みんなと変わらないですね。基本的には一緒だと思います。フォワードとバックスが分かれている中で、ポジションによっては違いますが、ウエイトトレーニングやランニング、フィットネスなど、これはどこも内容は一緒だと思いますよ。80分戦える身体を作ることに関して、どこも厳しいトレーニングをしていると思います。

僕個人のことを言えば、2時間の筋トレを週3回はやっていたと思います。その他には走り込みもあったし、ラグビーの練習もありましたね。トレーニング内容はスタッフが考えて、それをやっていましたね。

――46歳まで現役を長くやられていたというところで、気をつけていたことはありますか?

足りないスキルやフィジカルは、日々向上を心がけていましたが、1番怖いのはケガですね。そういう中で、ラグビーはぶつかり合いなので、ケガはありますよね。

僕はラグビーをやるうえで、とくに40歳を過ぎてから、やはり肉体の衰えはありましたね。その中で、ウエイトトレーニングも相当力を入れたし、あとは練習や試合前の準備ですよね。練習の2時間前にはクラブについて、まず身体を暖めて、そこからストレッチなどのいろいろ準備を1時間ぐらいかけてやっていました。

肉離れなどの筋肉のケガはしたくないわけですよ。歳をとると、疲労が溜まったりしてすぐに筋肉にくるので。プレイでのケガというのは、運や突発的なこともあるので仕方ないですが、準備でケアできるところは、細心の注意を払って行っていました。

――食事で気をつけていたことはありますか?

まったくないですね(笑) 言葉に語弊があるかもしれないので補足すると、チームに栄養士さんがきてくれていました。それで食事の際に、取り分けたものを写真に撮って栄養士さんに見せると、「これはすばらしい」と言ってくれてましたね。僕はまったく意識していなかったのですが、肉や魚、野菜、炭水化物、フルーツなど、バランスよく取り分けていたみたいです。いろいろな栄養素を、スポーツ選手として本能的に感じて食べていましたね。

――46歳のときに、引退を決意したキッカケはあったのですか?

釜石シーウェーブスに入った5年間は先発で出してもらっていました。6年目から試合に出れなくなったんですよ。それが1番大きな理由ですね。

自分の中では先発で試合に出るというのが、プレイヤーとして1番の誇りでしたので。それが叶わなくなることは、僕にとって現役選手は終わりという価値観でした。もし46歳のシーズンも先発で出ていたら、引退していないですね。

今は、先発とリザーブというのはチームが勝つために交代していくのですが、昭和の時代というのは、ケガしないと交代できなかったですね。そういう昭和の選手なので。やっぱり昭和のラグビー選手というのは、先発にこだわりますよ。

今は時代やルールも変化しいて、いかにリザーブの選手達が後半20〜30分から出て、試合を勝たせるかというゲームになってきているので。僕らの時代とは全然違いますよね、リザーブと先発の意味合いが。

――現在は、解説のお仕事などもされていらっしゃいますが、指導者としてはどのような取り組みを行われていますか?

ムービーレッスンというオンラインで指導できるツールがあるのですが、今はそれを使って子どもたちにラグビーを教えています。

まず生徒である子どもが、練習や試合の動画を送ってきてくれるんですよ。その動画に対して、赤ペンで添削できるので、矢印をつけてこうした方がいいよとか、添削した動画を送り返します。そういうアドバイスを定期的にしていますね。月に一度、その子と1対1でオンラインミーティングも行っています。

――オンラインの指導で、上達はされていますか?

それが……上達しているんですよ。週に1回こちら側からも動画を送っています。タックル編やコンタクト編など。その中で、本当にうまくなってきています。

そういう意味では、僕らの時代ってほとんどラグビーの技術なんて教えてもらってないんですよ。気合と根性でしたから。ただ、時代が変わって世界の情報がどんどん入る中で、やっぱりスキルってものが、今とまったく比べ物にならないですよ。

外国人が言うわけですよ。「日本人はハートでラグビーをやっている」と。今は世界の情報が入る中で、やっぱりスキルの大切さですよね。みんなわかっていますし、そういったものを伝えていけたらいいなと思いますね。

僕自身もラグビースクールという形で子どもと接していますが、オンラインで個別に子どもと真剣に向き合える、指導できる機会があるので今はすごく楽しいですね。ネット上ですが、新たな試みです。

――時代の流れもご自身の中に組み込んで、指導面でもラグビー界に貢献されていくのですね。

そうですね。ラグビーがこれからどう変わっていくか。イベントや解説、オンライン指導など、ラグビーの仕事をさせていただいているというのもありがたいですし、ラグビー引退後もラグビーに関われるのは幸せだと思っています。

――今後の目標は?

仕事でラグビーに関わっていくことで、ラグビー界に少しでも恩返ししていきたいですね。ラグビーから人生の夢やロマンなどをもらってきました。愛情や誇りもあるので、いろいろな形でラグビー界に貢献していくのが、私の今後の目標です。

――ありがとうございます。今後の活躍を期待しております。

[プロフィール]
伊藤剛臣(いとう・たけおみ)
法政二高時代に高校日本代表に選ばれると、法政大学3年時の大学選手権で25年ぶりに法大に優勝をもたらした。ボールを持った時の独特のカニバサミのようなステップで相手チームを翻弄。 法大卒業後は名門神戸製鋼に入社し、1994年度の全国社会人大会、日本選手権7連覇に貢献。その後もチームの1999,2000年度全国社会人大会優勝、1999,2000年度日本選手権優勝、トップリーグ開幕初年度の2003年シーズン優勝に中心選手として貢献した。 2012年、18年所属した神戸製鋼から釜石シーウェイブスに移籍。 ラグビー日本代表ではW杯に2大会出場。1998年のアジア大会では主将を務めるなど日本ラグビー界を長きにわたり牽引した。代表キャップ62は歴代8位の記録である。(2018,5現在) 2018年1月まで現役最年長記録選手として活躍していたが、惜しまれながらも現役引退。 まさに「One for all,All for one」のラグビースピリットの伝道師として、ラグビーW杯2019日本大会のアンバサダー、また釜石シーウェイブスのアンバサダーを兼任し、ラグビーの魅力を伝えていく。

[オンラインレッスン]
ムービーレッスン:https://www.appy-net.jp/movie-lesson

<Text & Edit:MELOS編集部/Photo:MELOS編集部、株式会社ホリプロ>

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