インタビュー
2017年12月11日

ロボットに道徳をインストールする。その原点は武道。Pepperに感情を与えた研究者・光吉俊二に聞く武道の魅力(後編) (2/2)

いろいろインタビューでは共通点があると言ってるけど、本音は……う〜〜〜ん、ない!

―ないんですか(笑)。

あるとすれば、ひとつの能力が他の人より突出していることかな。

余談になるけど、最近アーティストやアスリートが万能でないといけない風潮になっているけど、俺はそれに反対。研究家、芸術家、アスリートって言葉で自分を表現するのが苦手だから作品やスポーツを通じて自分を表現しているのに、例えばアーティストやアスリートが人前でMCする能力を求められていたりしてるけど、それは違う。

人間の肉体の量と脳の量ってそんなに変わらない。だからこそ、どれかの能力が優れている人は、劣っている部分があるのは当たり前。社会や企業は、人には得意なこと・不得意なことがあるっていうことを理解し、寛容になってほしいよね。アーティスト、アスリートにマルチを求める風潮はおかしいと思う。

自分の新しい行動パターンを探すためにAIが使われる

―光吉さんが研究されているAI(人工知能)は今後スポーツにどのように介入すると考えますか?

まずスポーツをする人は2つのパターンに分かれると思うんです。1つ目のパターンは、楽しんでスポーツを取り組むタイプの人。こういう人は特定のパターンを自らぶっ壊していく才能を持つ傾向にある。この人たちは自ら脳を進化させることもできるから、AIは一生勝てない。だから、こういうタイプにAIは必要ない。

2つ目は、科学的に取り組むタイプの人。こういう人は型にはまった行動をしがちだから、自分にはない行動パターンを探すためにAI技術を用いれば、新しい行動、動きが発見できて、進化できるようになる。こういう人を(記録をよくするなどの)進化させるため、AIはスポーツに介入するんじゃないかと思いますね。

[プロフィール]
光吉俊二(みつよし・しゅんじ)
1965年生まれ。東京大学大学院工学系研究科道徳感情数理工学講座特任准教授。工学博士。1988年に多摩美術大学を卒業後、彫刻家として活動。2006年に徳島大学大学院博士課程を修了。「Pepper」の感情エンジンでも使われている「感情マップ」を作ったことでも知られる

<Text:高橋優璃(H14)/Photo:久保誠>

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