オーバートレーニング症候群とは。練習しすぎは逆効果!ストイックな人ほど注意 (2/2)
オーバートレーニング症候群から回復するには
休息以外に回復方法はない
オーバートレーニング症候群から回復させるための方法は、休養以外にありません。
不眠や不安感などの精神的な症状があれば、睡眠剤や抗うつ剤などの薬が処方されることがありますが、オーバートレーニング症候群は、薬で回復するものではないのです。
本人にとってみれば、長期間休養することによって周囲との差が広がるなど、焦りが生まれるかもしれません。しかし、ここで無理をしてトレーニングを続けてしまえば症状がさらに悪化し、復帰までの時間がより長くかかってしまいます。
軽い運動もNG
「軽い練習なら大丈夫かな」「ジョギングくらい問題ないだろう」などと、カラダを動かしたくなる選手は少なくありません。
しかし、いざ始めてしまうと熱中して運動量が多くなったり、運動強度が上がってしまう場合があるので注意が必要です。
なお、休養期間中の選手の心理面を支えるためには家族やチームの監督、コーチ、チームメイトなど、周囲の人たちのサポートが欠かせません。
オーバートレーニング症候群を防ぐには
オーバートレーニング症候群を防ぐためには、日頃からコンディショニングチェックを習慣づけておくことがポイントです。
具体的には、以下を確認します。
起床時の心拍数をチェックする
心拍数はカラダの疲労を測定するのに役立ちます。毎日、起床時に1分間の心拍数を測定する習慣をつけましょう。じっとした状態で10秒間手首の脈を測り、それを6倍することで簡単に測定できます。
疲労が溜まっていると、いつもの平均心拍数よりも10~15高いとされています。起床時の心拍数が高い状態が続くようであれば、オーバートレーニング症候群の前兆かもしれません。
そうした際には、練習量などを減らすなど調整が必要です。
体重をチェックする
練習量の増加などによって、体重が一気に減少してしまうことがあります。急激な体重の変動は、カラダに大きな負担がかかっている証拠です。
疲労度を5段階で自己評価する
毎日起きたときに、疲労度を5段階の自己評価で記録しておきましょう。ハードな練習の翌日に疲労度が高いのは当然ですが、軽い練習やオフの次の日に疲労度が高いようであれば、疲労の蓄積が疑われます。
あまりに疲労度の高い日が続く場合、練習内容を見直した方がよいでしょう。
練習内容以外にもしっかり睡眠がとれているか、食事が摂れているかなど、さまざまな要因によって疲労度が変わってきます。
5段階の自己評価とともに気づいた点をメモしておくと、後から見直す際に便利です。
日頃からコンディショニングチェックはチーム全体で取り組む
団体競技であれば、コンディショニングチェックは、チーム全体で情報を共有し合いながら行うことが重要です。
とくに学生の部活動などでは、チェックで疲労度が高いと判明していても、選手個人が自分の練習内容を勝手に変えることは難しいでしょう。監督・コーチが選手のコンディションを把握しておかなければ、周囲と同じようなハードな練習をしなければならなくなってしまいます。
そのため、選手だけでなく監督・コーチも、しっかりコンディショニングへの理解を深める必要があるのです。
オーバートレーニング症候群はアスリートだけの症状ではない
オーバートレーニング症候群はアスリートに多いものの、最近のマラソンブームなどを背景に、市民ランナーにも見られる症状です。オーバートレーニング症候群になってしまうと、回復までには長い時間がかかります。
実際にオーバートレーニング症候群を理由として、競技を引退してしまうプロアスリートもいるほど。そのため、日頃からコンディショニングチェックを行って予防することが大切です。
もしオーバートレーニング症候群が疑われるようであれば、スポーツ内科疾患に詳しい医療機関で診察してもらうようにしましょう。
筆者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。
日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
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<Text:和田拓巳>