
腹筋トレーニング、1日何回がもっとも効果的?トレーナーが解説
お腹を引き締めたいときにまず行うであろう腹筋運動。しかし、「効果が出ない」「意味がないのでは」「シットアップやクランチは腰が痛くなるからできない」と悩んでいる人も多いようです。
正しく行わなければ、トレーニングの効果は上がりません。また、正しく行っているつもりでも、実はやり方が間違っている人も少なくないようです。結果が出ないだけでなく、腰痛や膝の痛みに繋がる危険性もあります。
今回は腹筋運動を効果的に行うためのポイントと、正しい動作を用いたトレーニングメニューを解説します。ダイエット中や、バキバキのシックスパックを目指して腹筋を割りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
腹筋トレーニングの回数は多ければ多いほうがいい?
目的によって回数が異なってくる
腹筋トレーニング含む筋トレは、たくさんやればいいというわけではありません。目的によって回数は異なります。
■筋トレの回数の目安
筋肥大、ダイエットが目的
8〜12回程度で限界を迎える負荷設定で行いましょう。筋力向上が目的
3〜7回程度で限界を迎える負荷設定で行いましょう。トレーニングチューブやダンベル、バーベルなどで負荷を高めて強度調整するのもよいでしょう。筋持久力をつけたい
13~20回程度で限界を迎える負荷設定で行いましょう。
腹筋運動は、なぜか高レップ(回数)で行っている人が多いエクササイズです。
高レップでは筋持久力が強化され、筋力や筋肥大は起こりにくいとわかっている人でも、何百回も腹筋運動を行ってしまうので不思議です。
腹筋も筋力向上や筋肥大のためであれば、ほかの筋肉同様に負荷を高めて行う必要があります。腹筋の筋力や筋肥大を求める人は、10回程度で限界になるよう負荷を調整しましょう。
また、繰り返し行われる腹筋運動は腰部を傷める原因にもなるので、フォームと回数に注意が必要です。
シットアップやクランチは体に悪いのか
皆さんは腹筋を鍛えるために、どんなエクササイズを行っているでしょうか。多くの人は、シットアップやクランチを行っているものと思います。しかし、これらのトレーニングに警笛を鳴らしている人たちもいるのです。
シットアップやクランチが危険であると広まったのは、カナダ・ウォータールー大学のスチュアート・マックギル教授が発表した研究がきっかけです。研究では、シットアップを繰り返し行うことによって、椎間板に大きなストレスがかかる危険性があるという結果が報告されました。
それを受け、体力測定として腹筋運動を採用していたアメリカ陸軍は、腹筋運動が腰部のストレスを増大させ、椎間板ヘルニアなどの原因になるとして体力測定から除外。
日本バスケットボール協会も、昔から行われているシットアップが腰痛の原因になるとして、推奨できないと情報を発信しています。
シットアップやクランチ自体が悪いわけではない
しかし、シットアップやクランチをやってはいけないということではありません。
注意すべきは、何百回も繰り返し行ったり、速い動作を意識しすぎてフォームをおろそかにするやり方が問題なのです。
昔よく取り組まれていた、膝を伸ばしたまま足首を押さえて行う腹筋運動や、足首を押さえたまま行うシットアップは、腹筋よりも股関節の周囲にある「腸腰筋」や、太ももの前側の筋肉である「大腿四頭筋」をより強く刺激します。
腸腰筋や大腿四頭筋にストレスがかかり、緊張が強くなると腰痛を引き起こしますので、そのようなやり方でシットアップやクランチを行うことは控えましょう。
腹筋運動で鍛えられる筋肉はどこ?
ところで腹筋とは、腹部にある筋肉の総称であり、特定の筋肉名ではありません。腹筋群のそれぞれの名称として、以下が挙げられます。
- 「腹直筋(ふくちょくきん)」…腹部の真ん中にある筋肉。シックスパックを構成する
- 「外腹斜筋(がいふくしゃきん)」…腹直筋の両脇にある筋肉
- 「内腹斜筋(ないふくしゃきん)」…「外腹斜筋」の奥にある筋肉
- 「腹横筋(ふくおうきん)」…お腹をコルセットのようにぐるりと囲んでいる筋肉
腹筋運動の効果をきちんと出すためのルール
1. 鍛えたい腹筋部位によって筋トレメニューを変える
腹筋運動も、種目によって刺激が入りやすい筋肉が異なってきます。そのため、目的の筋肉を鍛えるためにどのエクササイズをすればよいか選ぶ必要があります。
直線的な腹部の屈曲伸展であれば腹直筋、捻りを加えたものであれば外腹斜筋・内腹斜筋。お腹をグッと凹ませるようなエクササイズは、おもに腹横筋が刺激されます。
自分が行っているエクササイズがどこを刺激しているか意識しながら取り組んでみましょう。これを「意識性の原則」と言います。
そのトレーニングがどんな意味を持っているか。このことを理解すると、トレーニング効果が高まります。それを行うことでどんな能力が向上するのか、どこが鍛えられるのかしっかり理解したうえで取り組んだ方が、効果は現れやすいのです。たとえば、筋トレで鍛える筋肉を意識することも「意識性の原則」のひとつ。なぜそのトレーニングを行うのかをしっかり意識し、メニューの組み立てやトレーニングを実施しましょう。
筋トレ効果を引き出す「トレーニングの3原理&5原則」とは より
ちなみに、腹筋部位別でおすすめのトレーニングメニューは以下の通り。筋トレ初心者でも行いやすい、器具を使わない自重メニューとなっています。
■腹直筋を鍛えたいときのトレーニングメニュー
腹部を折り曲げるような動きが効果的(シットアップ、クランチ、レッグレイズなど)
■外腹斜筋、内腹斜筋を鍛えたいときのトレーニングメニュー
捻りを加えた動きが効果的(ツイストクランチ、ツイストレッグレイズなど)
■腹横筋を鍛えたいときのトレーニングメニュー
お腹をグッと凹ませる動きが効果的(ドローイング、プランクなど)
2. マシンやダンベルなどで負荷を高める
腹筋の筋力や筋肥大を求める人は、10回程度で限界になるよう、負荷を調整する必要があります。その際に効果的なのが、マシンやダンベル、トレ―ニングチューブを使ったやり方です。
マシンを使った「ケーブルクランチ」や、チンニング(懸垂)バーを使った「ハンキングレッグレイズ」などは強度が高く、かつ腰部への負担も少ないメニューです。
腰が痛みやすい人におすすめのトレーニングメニューは?
シットアップやクランチを行うと、腹筋に効く前に腰が痛くなるという人も多いようです。
それらのエクササイズが腰に負担をかけるだけでなく、無理に起き上がろうとして背部の筋肉を緊張させてしまうことで、疲労によって痛みを引き起こしている場合があります。
そのような人は、「プランク」や「サイドブリッジ(サイドプランク)」のようなエクササイズを中心に行うとよいでしょう。
プランク
サイドプランク
筆者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師のほか、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。現在、さまざまなメディアで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会(JATI-ATI)の認定トレーニング指導者
公式サイト/公式Facebook
<Text:和田拓巳>