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北島康介の五輪2冠2連覇を支えたトレーニングとは。トレーナー小泉圭介インタビュー(前編)

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 水泳で世界の頂点を極めた男・北島康介氏。シドニー・アテネ・北京・ロンドンオリンピックと4大会に挑み、アテネで2つの金メダル、北京で日本人唯一の2種目2連覇を達成した。その偉業は、なぜ成し得たのだろうか。その背景には、現役を引退する2016年まで北島選手の競技人生を支えてきたトレーナーたちの存在があった。

 日本人が体格差のある海外の選手と競い、どのようにこれらの偉業を成し遂げたのか、そのトレーニングの全容が本人監修の書籍『北島康介トレーニング・クロニクル』(ベースボール・マガジン社)として明らかに。長年支えてきたトレーナーの1人で著者・小泉圭介さんに、北島氏との出会いとトレーニングについて伺った。

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トレーニングの背景まで理解できるトレーニング本

 書籍は北島氏の現役時代にメイントレーナーとしてともに歩んだ4人の話を中心に展開する。2001年からウェイトトレーニングを指導した田村尚之、2002年からコンディショニングを担当した桑井太陽、2006年から2013年までコンディショニングを担当した著者の小泉圭介、2013年から2016年の引退までファンクショナルトレーニングを指導した鈴木岳.メイントレーナー以外にも多くのスペシャリストたちが北島氏とともに歩み、数々の偉業を成し遂げてきた。

「トレーニングのノウハウを書いた本はたくさんありますが、今回は各トレーナーが担当した時期に康介とトレーナーたちがどんなやりとりをして、最終的にそのトレーニングを選択した必然性についてまとめています。なぜ、あのときあのトレーニングが必要だったのか。康介と話し合い、お互いに考え抜き答えを見出してきた歴史がわかるんです。ストーリーとともにトレーニングとは何かを考えられる本。それが一番の魅力だと思います」

 トレーナーたちが綴るストーリーは、北島氏の活躍を大会ごとに時系列で語られている。さらにトレーニングを通して「北島康介」という人物、選手像まで見えてくる内容となっている。もはやトレーニングの一般論を超えた、『北島式トレーニング』といってもいいだろう。

北島氏のメンタルの強さは「勝負を楽しむこと」

 北島氏とともに過ごしたトレーニング時間の中で、小泉さんの目に北島氏はどのように映っていたのだろうか。北島氏は、トレーナーが考えていることすべてを伝えずとも、何がしたいのかをすぐ理解するタイプだったという。さらにトレーナーが考えたメニュー以外に自分で考えたメニューをこなすほど、トレーニングに真摯に向き合っていたという。

「康介はトレーナーに任せたら、自由に考えて、自由にやってくださいって言うんです。そのためかトレーナー同士のチームワークもよかった。みんな康介と一緒に戦い、『勝たせる』という想いが自然と強くなっていきましたね。私たちトレーナーもコーチも一丸となって共有していた想いでした」

 北島氏が徹底して努力する姿や人なつっこい性格は、トレーナーだけでなく周りの人すべてを巻き込んでいった。さらには北島氏のメンタル面の強さも知ることになる。

「康介の勝負好きな性格は、メンタル面の強さにも影響を与えているのではないでしょうか。水泳選手って、ずっと水泳している人が多いんですよ。長いオフを取ってしまうと、オフ明けがしんどいからコンスタントにトレーニングを続ける人が多い印象です。でも康介は、たいてい一区切り終わったらしっかり休み、何もやらないときはやらない。再始動するときはコンセプトをしっかり決めてから動き出していました。これ、できるようで、なかなかできないことなんですよ」

 気持ちの切り替えをしっかりするのは、メンタル面の強さも必要。その原動力は何なのだろうか。

「康介は筋トレ好きで、率先してやっていました(笑)。といってもトレーニングは目的があるもの。ただ好きだからトレーニングしていたわけではないんです。康介の場合、スポーツというか、競技が好きなんですね。卓球もバスケも、ゴルフも好きですし、いろいろな競技をしながら、楽しんでいるのがわかりました。勝負を楽しむこと、それが原動力の1つになっていると思います」

 トレーニングの先には「勝負」がある。どの競技でも勝つために必要なトレーニングを行い、その過程すべて興味を持って楽しめる。その性格が勝負強さを生んでいるという。

北島氏に必要だったウェイトトレーニングとは

 小泉さんが北島氏に初めて会ったときは、ウェイトトレーニングをするようになってすでに5~6年以上経った頃で、筋肉もしっかりついて身体ができあがっていた時期だったという。完成ともいえる身体をどのようなトレーニングで進化させたのだろうか。

「康介は筋肉だけでなく、水泳選手だけで比較すると昔から運動神経がよかったみたいです。本の中に康介のジャンプ力がすごいっていう話が出てきますが、水泳だけやってきた人だとジャンプ力がないとか、スキップができない人もいるのも事実です(笑)。その点、康介は身体を動かすことが上手いんだと思います」

 北島氏の運動神経や身体を動かす上手さは、ウェイトトレーニングにどのような影響を与えたのだろうか。

「まずは、身体をまんべんなく使えるかどうかが大事なんです。ウェイトトレーニングは筋肉を大きくし、鍛えることも大事ですが、それだけではダメです。関節の可動域全体をしっかり動かせるか、大きな関節だけでなく細かい関節もすべてしっかり動いているかとか、必要な身体の要素がすべて上手く使えているのかがポイントになります」

 ウェイトトレーニングは、競技ごとに異なる成果が求められる。今どのような成果が求められ、その成果をきちんと獲得できているか、そんな考え方が小泉さんの大前提だという。

「水泳は、身体を滑らかに動かすことを求められます。ラグビー選手のように筋肉を固めるトレーニングを水泳選手がしても意味がありません。そういう意味では、『必要なパーツをきちんとそろえること』が大切です。康介の場合、身体ができていたので次に必要になるのは、もっと滑らかな動きができる細かい筋肉だったんです」

筋肉は内側を整えてから外側を鍛える順番が重要

 小泉さんのトレーニングは、細かい筋肉、すなわちインナーマッスルから手をつけることからスタートしたという。内側から外側へと筋肉を使うことは、ケガや故障を防ぐ効果も大きい。

「内側の筋肉から使うという順番がとても大事。外側だけを鍛えても身体をうまく使えないことが多いです。故障など問題が起きる選手や、トレーニングするだけでどこか痛くなる選手は、内側の細かい筋肉をうまく使えないことが多いです。その状態のまま無理やり続けると、身体の負担が蓄積してしまいます」

 ついついジムでも外側の筋肉、いわゆるアウターマッスルを鍛え上げることに注力している人を見かけることも少なくない。どうすれば、いいのだろうか。

「外側を鍛えながら内側も鍛えられる人ももちろんいます。なかなか少ないですが(笑)。しかし、もし内側の筋肉がうまく使えないようであれば、一度外側の筋肉を使わないようにする必要があるかもしれません。スポーツには外側の大きな筋肉は必須ですが、内側の細かい筋肉なしでまんべんなく身体を動かすことはできません。勝手に動けば苦労しませんが、これがなかなか動かないんですよ(笑)」

 筋骨隆々な人がピラティスやヨガのレッスンに出ると、全然できないということがある。逆にピラティスやヨガをやっている人がウェイトトレーニングをすれば効果があるのだろうか。

「もちろん内側の筋肉を鍛えている人は、ウェイトトレーニングで外の筋肉を鍛えることで得られる効果があります。ただ、どちらが不足しているということではなく、先に『必要なパーツをそろえる』ことと、『身体のバランスをとる』ことです」

 バランスをとるといわれても自分は内側と外側、どちらの筋肉が足りていないのか判断することは難しい。この点を見極めることは素人に可能なのだろうか。

「いえ、素人判断は難しいし危険です。外側の筋肉が必要ないこともありません。日本人は外国人の方と比べると骨格も関接の柔らかさも違います。小さい筋肉から大きな筋肉を動かしていく“順番”が重要です。どっちが良い悪いではなくて、両方トレーニングするのが一番いいことなんです」

 北島氏と歩みながら一番見落とされがちな部分を埋めることをトレーナーとしての使命としてきた小泉さんが実践するトレーニングとはいかなるものか。後編では、北島氏が行なったトレーニングの中から自宅で実践するポイントとともに紹介していきます。

⇒後編に続く
自宅でできる「北島康介式トレーニング」で実践しよう!トレーナー小泉圭介インタビュー(後編)

[プロフィール]
小泉圭介(こいずみ・けいすけ)
1971年、福井県生まれ。北陸高-明治学院大-東京衛生学園専門学校。早稲田大大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。現在は東京スポーツレクリエーション専門学校専任教員、㈱パフォームベタージャパン テクニカルディレクター。競技経験は大学から社会人までアメリカンフットボール。水泳では水球日本代表(2006-2007年)、競泳Jr日本代表(2007-2008年)、競泳日本代表(2009~2015年)にトレーナーとして参加。多くのトップアスリートの指導にあたっている。理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー、日本水泳トレーナー会議運営委員、(公財)日本水泳連盟医事委員

<関連サイト>
・書籍『北島康介トレーニング・クロニクル』(ベースボール・マガジン社)
http://www.sportsclick.jp/products/detail.php?product_id=8620


<取材協力>
・Perform Better Japan ※トレーニング用品
http://www.performbetter.jp/
・FLUX CONDITIONINGS ※取材・撮影場所
http://www.flux-conditionings.com/

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<Text:大熊美智代+アート・サプライ/Photo:小島マサヒロ>

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