2024年3月21日

花粉症の筋トレ民は要注意!食べすぎると症状悪化につながる「食べ物」とは

2024年は花粉の飛散量が例年より多く、くしゃみや鼻水、目のかゆみに悩まされる方も多いのではないでしょうか。実は、食事を通じて腸内環境を整え、免疫機能のバランスを保つことで、花粉症の症状を和らげることができるといいます。

今回は、食物繊維による腸内環境の改善に注目。腸内細菌研究の権威・京都府立医科大学教授の内藤裕二さんに手軽に取り入れられる食材について伺いました。

内藤裕二先生 プロフィール
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学 教授
消化器病学の専門家として最先端の研究を行う傍ら、臨床の場で30年以上にわたり5万人以上を診察。長寿腸内細菌として知られるようになった「酪酸菌」研究の第一人者としても知られる。

花粉症は免疫のバランスが崩れて発症する

――まずは花粉症のメカニズムについて教えてください

花粉症は、スギやヒノキなどの花粉に対する過剰な免疫反応が原因で起こります。

免疫機能には、人体に有害なものを排除する「免疫反応」と、過剰な免疫反応を抑える「免疫抑制」の2つの働きがあります。この2つのバランスが崩れ、免疫反応が過剰に働くことで、花粉症などのアレルギー疾患が引き起こされると考えられています。

免疫抑制の中心的な役割を担うのが「制御性T細胞」です。この細胞は、アレルギーや炎症性疾患などを引き起こす過剰な免疫反応を抑制する働きがあります。しかし、何らかの原因でこの細胞の働きが低下すると、花粉症の症状が悪化することがあるのです。

今年、急に症状が悪化した方は、「制御性T細胞」の働きが鈍っているかもしれませんね。

――どんな原因が考えられるでしょうか?

私が注目しているのは、腸内環境の悪化です。特にトレーニングに関心のある方は赤身肉を好んで食べると思いますが、食べすぎると逆効果です。

赤身肉に含まれるアミノ酸は、腸内細菌によって分解されると硫化水素を生成します。硫化水素は腸管の粘膜バリア機能を低下させ、炎症を引き起こす可能性があります。また、肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸は、胆汁の分泌を促進します。この胆汁も腸内細菌によって分解されると、二次胆汁酸に変換されます。二次胆汁酸もまた、腸内の炎症を引き起こし、腸管バリア機能を低下させる可能性があるのです。

腸内で炎症が引き起こされると、「制御性T細胞」の数や機能が低下し、免疫抑制がうまく働かなくなります。その結果、花粉に対する過剰な免疫反応が抑えられず、花粉症の症状が現れやすくなると考えられています。

腸内環境と「制御性T細胞」の深い関係

――では、どうすれば良いのでしょうか?

ずばり、腸内環境を整え、制御性T細胞の働きを高めることが、花粉症を軽減するためには重要です。食物繊維、特に「発酵性食物繊維」と呼ばれる、腸内細菌のエサとなり、腸内環境を整える働きのある食物繊維を積極的に摂取すると良いでしょう。

発酵性食物繊維は、腸内細菌によって発酵され、酪酸などの短鎖脂肪酸を生成します。この短鎖脂肪酸が腸内環境を整え、免疫機能のバランスを保つ上で重要な役割を果たしているのです。

日ごろから手軽に摂れる食材ですと、例えば「もち麦」が特にβグルカンというタイプの発酵性食物繊維を豊富に含んでいるのでオススメです。白米と一緒に炊いて手軽に摂れますし、クセが無くぷちぷちとして美味しいですからね。

「もち麦」の“食物繊維”がダイエットに与える影響とは

――なぜ、発酵性食物繊維が良いのでしょうか?

少し専門的なのですが、主に大腸に住む腸内細菌がこれを食べて、酪酸という物質を作ってくれるんです。この酪酸が免疫の正常化のためにも大切なんですよ。

――酪酸とは耳慣れない物質なのですが、どんな働きをする物質しょうか?

酪酸は腸内環境を整える上で非常に重要な物質です。腸内を弱酸性に保ち、有益な細菌が住みやすい環境を作るだけでなく、腸管の粘膜バリア機能を強化し、有害物質の侵入を防ぐ働きもあります。さらに、過剰な免疫反応を抑制する「制御性T細胞」を増やすことで、アレルギーを抑制する効果も期待できるのです。

「制御性T細胞」は、加齢とともに機能が低下し、40代で活動がピーク時の半分にまで減少するという研究結果もあるほどです。年を取るとともに花粉に対する免疫応答のバランスが崩れ、花粉症の症状が悪化する可能性があるというわけです。

酪酸産生菌を増やすための食事術

――改めて、花粉の時期にオススメのメニューがあれば教えてください。

もち麦ごはんのほか、茹でてサラダのトッピングにしても良いでしょう。ドレッシングを程よく吸収してくれますからね。他には、まいたけやしいたけなど、きのこ類。あとは、ごぼうもオススメです。

また、赤身肉は摂りすぎると腸内環境の悪化を招きますので、ほどほどに抑えて、大豆など植物性のたんぱく質も積極的に摂った方が効果的だと思います。

調理が面倒な方は、パックタイプの「もち麦ご飯」やコンビニで最近よく見かける「もち麦おにぎり」でも良いでしょう。発酵性食物繊維が豊富に含まれる小麦ふすまを使ったブランシリアルなどを取り入れても良いと思います。

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<Edit:編集部>