運動がもたらす4つの効果。なぜ「体を動かすと健康にいい」と言われるのか
運動と健康の関係について、知っておきたい基礎知識を紹介する本記事。減量や身体の健全化などの具体的な効果について、そのメカニズムや効果的に成果を得るための方法を紹介。
株式会社タニタヘルスリンクの公認スポーツ栄養士・健康運動指導士で、競歩の岡田久美子選手へのコンディションサポートを担当している堀越理恵子さんに話を伺いました。
運動するとどのような効果がありますか?
運動には、以下の効果があると考えられます。
- ダイエットなどの「減量効果」
- 血糖値改善などの「身体の健全化」
- ストレス解消などの「心の健康効果」
- 骨粗しょう症やがんなどの「予防効果」
それぞれ見ていきましょう。
運動による「ダイエット効果」について
有酸素運動で脂肪を燃焼
減量効果があることで知られているのが有酸素運動です。酸素を使って脂肪や糖質を燃焼しエネルギー源とするため、体脂肪の減少とそれに伴う減量効果があることは、前回も紹介しました。
こうした有酸素運動にともなる減量は、内臓脂肪型の肥満や生活習慣病、メタボリックシンドロームの予防につながります。
筋トレで基礎代謝アップ
一方、レジスタンス運動(筋トレ)を行い筋肉量が増えると、基礎代謝量が上がります。これによって消費するエネルギー量が増え、太りにくい身体を作ることが可能です。
筋力や筋持久力を高めることができます。筋肉を太く、大きくすることで、筋肉量の増加にもつながります。筋肉量を増やすと、基礎代謝量も増加します。筋肉は血糖値の調節を行なっているので、筋肉量の増加は、血糖値を安定させることにつながると言えるでしょう。
「有酸素運動・筋トレ・ストレッチ」の効果とは。メリットとデメリット、運動量の目安、やり方、タイミングを解説 より
ストレッチで消費エネルギー量アップ、疲労回復、ケガ予防
なお、柔軟運動(ストレッチ)で減量効果を得るのは少々難しいですが、動的ストレッチ(手首をほぐすなど、体を動かしながら柔軟性を高めていくもの)は、エクササイズ効果につながる動きも多いため、消費エネルギー量アップにつながります。
減量のために実施する運動において、怪我の予防や疲労回復などにもつながるでしょう。
運動による「身体の健全化」について
運動することは、血糖値や血圧、血中脂質について、さまざまな健康効果をもたらしてくれます。
運動をするとインスリンの働きが改善されます。これによって正常化されるのが「血糖値」です。血糖は膵臓から分泌されるインスリンの働きで、筋肉に取り込まれることにより、その値が正常の範囲に保たれます。
インスリンの働きが悪いと、血糖値の高い状態が続いてしまいます。これは、血管へのダメージにつながり、糖尿病のリスクを高めてしまいます。
血糖値改善のためには、1日20分以上・週に3日以上の運動
血糖値を改善するには、できれば毎日、最低でも週に3日以上の運動が必要です。1日20分以上、週に計150分以上の運動が目安となります。
タイミングとしては血糖値の上昇がピークとなる、食後30分~60分の間がベストでしょう。有酸素運動と筋力運動のどちらもオススメできます。
一方、運動を習慣化すると代謝が活発になることで全身の血流がよくなり、脂肪細胞から分泌される物質が正常化し、体重の減少につながります。これによって高血圧が改善されます。
血圧や血中脂質の改善⇒1日30分以上・週に3日以上の運動
また、運動では血中脂質の改善も期待できます。
血液中には中性脂肪やコレステロールなどの脂質が含まれています。これらはからだに必要な脂質ですが、中性脂肪や悪玉コレステロールが多すぎると、さまざまな病気につながるリスクが高まります。
有酸素運動を定期的に行うと、血液中の中性脂肪がエネルギーとして消費され、悪玉コレステロールを分解し減少させる効果があることも知られています。また、定期的な運動は、善玉コレステロールの増加にもつながります。
血圧と血中脂質を改善するには、やはり可能であれば毎日、最低でも週に3日以上の運動が必要です。運動時間は1日30分以上。一気にやらず、10分間の運動を3回に分けて行っても大丈夫です。
運動の種類としては、ウォーキングや水泳などの有酸素運動が効果的でしょう。なお、血圧を改善するには、血圧が安定しているタイミングで運動を行うことが重要です。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット 特定健診・保健指導における身体活動・運動指導
運動による「心の健康効果」について
運動が好きな人は、運動によって気分が高揚したり、スッキリ感を覚えることも多いと思います。
運動があまり得意ではない人も、運動する前は少し気分が重かったけれど、運動を終えた頃には「なんだかスッキリした、気持ちいい」と感じたことがあるのでは。これは、偶然起こった現象ではなく、必然の現象です。
体を動かすと交感神経が活発化し、物事を前向きにとらえやすくなります。また、β-エンドルフィンの作用で気持ちが高まり、幸せな気持ちになります。
さらに、運動を継続することでドーパミンの分泌が盛んになり、ワクワク感も増加します。そのほか、セロトニンの作用で心身が安定するため、ストレス解消にもつながるでしょう。
このように、運動は身体だけでなく、心にも良い影響を及ぼす効果がたくさんあるのです。
最後は、運動による「骨粗しょう症・がんの予防効果」について解説します。
運動による「骨粗しょう症・がんの予防効果」について
WHO(世界保健機関)は、死亡に関わる危険因子の第4位に「身体的不活動」をあげています。
身体的不活動とは、平たくいえば運動不足のこと。これが第1位の「血圧」、第2位の「喫煙」、第3位の「高血糖」についで、4番目に死亡のリスクを高めているのです。
生活環境の整備が進んだことで、あまり体を動かさなくても、いろいろなものを簡単に手にすることができる世の中になりました。
しかし、健康のためにも例えば公共交通機関を利用せずに、1日行動してみるなど、あえて不便な状況に身をおいてみる、1日8000歩以上の歩数を維持するなどのミッションを掲げたりすることで、意識的にからだを動かすことが重要となりつつあります。
「自分のペースでゆっくり歩行するだけでは運動効果は期待しづらいため、減量目的であれば、意識して歩行スピードを上げ、かつ歩幅を大きく保つことで、“一日一万歩”歩くことでのカラダの変化が期待できます」
「1日1万歩」は意味ない?普通に歩くのと早足ウォーキング、どちらが痩せる?メガロストレーナーが解答 より
骨粗鬆症予防には、栄養と骨刺激が大切
骨粗鬆症を予防するためには、カルシウムなど骨の健康に関わる栄養素を摂取すること。さらに、日光浴に加え、骨への物理的な刺激、いわゆる“骨刺激”が重要です。
ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨刺激が生じる運動を行なうことが、骨の健康につながります。
がん予防には適度な運動を
さらに、がん予防のためにも運動は効果的です。現代人は紫外線やストレス、喫煙、暴飲暴食など「活性酸素」が発生する環境で生活しています。
活性酸素は細胞を傷つけることで老化や動脈硬化、がんなど、多くの疾患をもたらす原因と言われています。そんな活性酸素は身体的不活動でも高まると報告されています。
こんな話を聞くと、身体的不活動の状態が長いと自覚がある場合、少し心配になってきますね。健康や身体づくりのために、今日からさっそく運動を始めてみてはいかがでしょうか。
監修者プロフィール
堀越理恵子(ほりこし・りえこ)
株式会社タニタヘルスリンク公認スポーツ栄養士・管理栄養士、健康運動指導士。大学の陸上競技部の栄養アドバイザーや、実業団選手の栄養マネジメントなどを担当。選手が安心して試合に挑めるようなサポートや、引退後の食生活にも活かせるような栄養教育を心がけている。スポーツ栄養マネジメント以外に、健康セミナーの講師や健康に関するカウンセリングに携わる。今年から、競歩の岡田久美子選手へのコンディションサポートを担当【公式サイト】
<Text:岸田キチロー>