フィットネス
2019年7月30日

深夜発&100km!都内の人気スポットを駆け巡る「東京ウルトラマラソン」は満足度が高かった

 ランニングブームに伴い、今もなお全国各地で新たにマラソン大会が生まれています。大会ごとに特色があり、「どの大会に出ようか」と悩んでしまうほど。中でも『東京マラソン』といえば、全国各地から大勢のランナーが集まる人気大会です。その魅力はたくさんの応援、そして“都心を走る”という特別感によるところが大きいでしょう。

 実は、もうひとつ東京都心を舞台とした大会があることをご存知でしょうか。それが、5月27日・28日に開催された『東京ウルトラマラソン』。同大会は、100マイル・100km・50kmの3種目。今回、私は100km部門へ参加してきました。いったいどのような大会なのか、レポートをお届けします。

(記事初出:2017年6月1日)

スタートは深夜!いきなりのオーバーナイト・ランニング

 マラソン大会といえば昼間に開催されるイメージですが、この『東京ウルトラマラソン』は一味違います。100km部門のスタートは、なんと23時。受付会場に向かうと、そこには暗闇の中、大勢のランナーたちが集結していました。

 つまり、スタートからいきなり夜通し走る“オーバーナイト・ランニング”なのです。都心を走るということで、人通りの少ない夜に走るという配慮でしょうか。「昼寝してから来た」という方もいたようですが、これは走力だけでなく、眠気との戦いも避けられそうにありません。

 しかしいざ走ってみると、「東京って凄いな……」と感じました。真夜中だというのに、特に駅付近のコースではたくさんの人たちが。さらに飲食店などの明かりは眩しいほどで、まさに“眠らない街”という言葉がピッタリです。

 そんな中を駆け抜けるランナー集団……。周囲からは、さぞ不思議な光景に見えたことでしょう。「なんだこれ!?」と驚かれている声も、何度か聞こえてきました。

 空が明るくなり始めたのは、4時30分を過ぎた頃のこと。次第に、車道には車が増えてきたように感じました。ちなみに、この頃が眠さのピーク。走りながらあくびが出てしまったり、眠くて身体に力が入らなかったり。やはり人の体って、夜は休むようにできているんですね。たまに頬を「パチン」と叩いて目を覚ましながら、朝日を待ちつつ走り続けます。

 これまでウルトラマラソンはいくつも走ってきました。オーバーナイトランニングも経験済みですが、スタートが真夜中というのは初めて。まして100kmという距離で、オーバーナイトランニングが伴う大会は希少でしょう。あまり見ることのない真夜中の東京都心、楽しませていただきました。

都内主要部を巡る贅沢コース

 『東京ウルトラマラソン』は、そのコースも非常に魅力的でした。スタート地点は新宿御苑となり、ここから都内の主要エリアを走ります。主要な観光スポットも回るので、首都圏外からの参加者にとっては、旅行気分で楽しめることでしょう。

 なお、今大会は交通規制など行われず、ランナーは歩道を走ります。もちろん交通ルールに則って信号はストップ。信号でランナー同士が集まると、楽しそうに会話する姿が印象的でした。それでは実際のコースを、経由した主要スポットとともに紹介していきましょう。

 すでに終電もなくなり、静かになった東京駅。ひっそりとした佇まいは、大勢の利用する日中と違った雰囲気です。このほか、新宿や池袋などをはじめ、コース上ではたくさんのターミナル駅を経由します。

 こちらは、「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨地蔵通商店街。さすがに、夜は人通りなどありません。静まり返った商店街には、私たちランナーの足音だけが響き渡っているようでした。

チェックポイントでの“撮影”が必須

 素晴らしかったのが東京タワー。すでに空は明るくなり始めていたものの、ライトアップした美しい姿を観ることができました。ランナーからも「これは凄いわ」と声があがるほど。私も足を止め、しばし見とれてしまいました。

 ちなみに今大会では、大会側から指定されたチェックポイントを写真におさめなければいけません。これが通過チェックの代わりとなっていて、エイドステーションでスタッフの方から「写真を見せてください」と言われます。

 つまり写真が撮影できていなければ、正しいコースを通っていないとみなされ、戻らなければいけないということ……。東京タワーもチェックポイントの1つとなっており、他には日本橋や豊洲、亀戸などが。その多くが観光スポットとなっており、大会というより観光しているような感覚です。

 朝7時頃、ちょうど半分ほど走って再び新宿御苑へ戻ってきました。こちらには荷物をドロップすることができ、着替えや補給などを行います。写真を撮影していると、ピースで応じてくれるほど元気なランナーさん……、さすがです。

 後半戦、まず向かったのはお台場です。「レインボーブリッジの遊歩道は9時にならないと通れない」という情報で、少し時間を潰しながらピッタリ到着しました。程よくアップダウンがあり、走りやすい場所です。

 しかも景色が素晴らしい! 天気に恵まれたこともあり、青空と海との美しいコントラストに癒やされました。そのままレインボーブリッジを降りたら、豊洲・木場エリアを経由して東京スカイツリーへと向かいます。

 走っていると、途中で他ランナーと合流することもよくあります。同じ100km部門はもちろん、100マイルや50km部門のランナーとも、時間差スタートのため一緒に走る機会がありました。特に信号待ちで合流する機会が多く、自然とランナー同士の交流が生まれます。この交流こそ、ウルトラマラソンの大きな楽しみと言えるでしょう。

 そして、東京スカイツリーに到着。写真を撮影するのが大変なほど、本当に大きいですね。時間とともに、次第に気温が上がり始めてきました。ちょうど昼前、約83kmの地点です。ちょっとお腹が空いてくる頃合いですが、ゴールまでもはやカウントダウンとも言える距離。長い道のりを振り返りつつ、ゴール新宿御苑へと向かいます。

 浅草、そして上野を経由して皇居へ。半蔵門から抜けて、あとは真っ直ぐ進めばゴールです。気温が高いためか、皇居ランナーは思ったほど多くありませんでした。

 そして14時間30分ほどを掛け、ついにゴール!ゴール地点では、大勢のスタッフが待っていてくださりました。もちろんスタッフの皆さんも夜通しサポートしてくださっており、感謝の思いでいっぱいです。

 東京都心の景色を見ながら走っていると、100kmという距離は長いようであっという間。しかし信号停止でストップ&ゴーとなるレースのため、いつも走っている交通規制されたレースとは違った疲労感があります。走りごたえもあって、ランナーにとって非常に満足度の高い大会でした。

配慮の行き届いたエイドステーション 

 最後にご紹介しておきたいのが、エイドステーションです。7〜10kmごとを目安に設けられたエイドステーションでは、飲み物や食べ物がたくさん。もちろん、エイドステーションはどんなマラソン大会でも見られます。しかし今大会は、その“中身”が違いました。

 例えばカレーライス。夜中の空腹時を狙ったかのように提供されるこちらは、疲れたランナーの胃袋を満たしてくれます。このほか、おにぎり・そうめんなども用意されており、長丁場でもエネルギー切れを起こさずに走れました。

 その他にも、豆腐やもずく酢、羊羹などさまざまな食物が。どれも、恐らくマラソン大会ではあまり見ないものばかりではないでしょうか。さらに飲み物も代わっていて、特に驚いたのは“豆乳”でした。

 しかしランナーの目線で考えると、これらはまさにレース中にぴったりな品ばかり。栄養に配慮されているほか、酸味など疲れた身体が欲するものをしっかり分かっているなという印象です。

 しかもエイドステーション近くでは、わざわざスタッフの方々がお出迎え。遠くから大きく手を振ってくれたり、記念写真を撮ってくれたり。どれだけ疲れていても、その姿を見るだけで元気が漲るような気がします。

 こちらはゴールまで約6km、最後のエイドステーションで扉に貼られていたメッセージです。1つ1つ手書きのメッセージに元気がもらえます。こうしたランナーへの配慮や気持ちが至る所で感じられました。

 オーバーナイトランニングから始まり、東京都内の主要スポットを巡るという『東京ウルトラマラソン』。リピーターの多い大会とのことですが、実際に走ってみて、確かに「または走りたいな」と思わせてくれました。

 大会は今年が5回目。少しずつコースも改良を重ねており、100マイル部門は今年が初めての開催だったそうです。来年は、いったいどんな進化を遂げた大会となるのか!? ご興味のある方は、ぜひ今からチェックしておいてください。

[筆者プロフィール]
三河 賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心に取材・執筆・編集。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。またトレーニングサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室、ランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。3児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】http://www.run-writer.com

<Text & Photo:三河賢文>