
筋肉痛のときは筋トレNG?OKの判断基準と筋肉痛を早く回復させる方法
筋トレをするうえで切り離せない「筋肉痛」。痛みによってトレーニングを続けるかどうか、迷う方も少なくないと思います。
筋トレしてOKの判断基準から、筋肉痛の回復・予防ポイントまで、スポーツ整形外科医・樋口直彦先生監修のもと解説します。
筋肉痛への理解を深めて、効率的に筋肉を育てていきましょう!
<このページの内容>
筋肉痛のとき筋トレしても大丈夫?OKの判断基準
Q.筋肉痛のとき筋トレしてもいいですか?
A.樋口先生「筋肉痛のときは休んだほうがいい」
「結論から言えば、筋肉痛があるときはトレーニングを休むのが基本です。痛みがあるということは、筋肉がダメージを受けている証拠です。修復の過程で筋肉は成長するため、しっかり休息を取ることが筋力アップにつながります」と、スポーツ整形外科医の樋口直彦先生は語ります。
「軽度」の筋肉痛ならOK?注意すべきサインとは
「軽度の筋肉痛であれば、血流を促す『軽め』のトレーニングが回復を助けることもあります。ただし、鋭い痛みや動作に支障がある場合は、筋繊維が損傷している可能性が高いため休息を優先しましょう」
筋肉痛が強いときに筋トレを続けるリスクとは
「筋肉が十分に回復していない状態でトレーニングを行うと、筋繊維の修復が間に合わず、パフォーマンス低下や怪我のリスクが高まります。痛みが強いときは無理をせず、完全休養や軽い運動に切り替えるのが賢明です」
初心者が気をつけるべきポイント
「初心者は筋肉痛を『効果が出ている証拠』と捉えがちですが、筋肉痛がある=良いトレーニングとは限りません。痛みの度合いや体調を観察して、自分に合った強度と休養を見極めましょう」
自分に合った強度と休養を見極めるには、筋肉についてもっと理解を深める必要がありそうです。
筋肉成長のためには、刺激 → 回復 → 再刺激が必要
筋肉は、トレーニングでダメージを受けた筋繊維が回復・再構築されることによって成長します。筋肉が負荷により刺激を受けて、微細な損傷が生じ、その後の修復過程で強く太くなることで、筋力や筋量が向上します。
これまでは「超回復」という概念が筋トレと深く関係していると考えられてきましたが、最新の知見では、超回復は厳密には筋トレの効果を説明する理論ではなく、筋疲労からの機能回復を示す言葉として使われることが多くなっています。
つまり、筋肥大においては「単なる休養」ではなく、適切なタイミングでの「再刺激と栄養補給」が重要だということ。
成長を最大化するためには、「刺激 → 回復 → 再刺激」のサイクルをうまく組み立て、オーバートレーニングを避けつつ計画的にトレーニングを継続していくことが鍵になります。
筋肉痛を早く回復させるには?効果的なケアと習慣
筋肉痛のときの休息を軽視してしまうと、成長のチャンスを逃すだけでなく、慢性的な疲労や怪我を引き起こすリスクも高まります。成長を最大化するためには、休息・栄養・トレーニングの三本柱を意識することが欠かせません。
睡眠・栄養・水分補給で筋肉の修復を促す
筋肉の修復には、十分な睡眠と栄養が欠かせません。栄養では、鶏肉や魚、乳製品などの良質なタンパク源だけでなく、ビタミンB群やビタミンCなどの栄養素も組み合わせると相乗効果が期待できます。
また、水分もこまめに補給しましょう。水分を十分に摂ることことで血流を良くして、筋肉の回復を促します。さらに、睡眠時間をしっかり確保することで成長ホルモンの分泌が活性化し、筋肉痛からの回復がスムーズに進みます。
ストレッチ・温冷浴・マッサージで筋肉痛ケア
温かい入浴は血行を促して、筋肉の回復をサポートします。冷水シャワーと交互に行う温冷交代浴も有効です。さらにマッサージやフォームローラーで筋膜をほぐすと、痛みの緩和に繋がります。
有酸素運動で血流を促進し筋肉痛ケア
ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、血流を改善し老廃物の排出を促します。筋肉痛があっても、無理のない範囲で取り入れれば回復の助けになります。
筋肉痛の時は「分割法」で別部位を鍛える
筋肉痛があるけど、筋トレしたい…そんな時の筋トレは分割法がおすすめです。
筋肉痛のない部位を鍛える
筋肉痛がある部位を休ませつつ、痛みのない他の部位を鍛える「分割法」を取り入れると、継続的なトレーニングが可能です。
例:脚が筋肉痛のときは上半身を、腕が痛いときは下半身を鍛えるなど。
筋肉痛がある部位別メニュー例
■下半身が筋肉痛のとき:プッシュアップ、ショルダープレス、懸垂などがおすすめ
■上半身が筋肉痛とき:スクワット、レッグランジ、ヒップリフトなどがおすすめ
■ウォーキングやバイクなどの有酸素運動
■ヨガやストレッチで血流促進と回復支援
筋肉痛がある時は、軽負荷筋トレ・フォーム見直しを
軽負荷・高回数で「回復促進型トレーニング」
重いウエイトよりも、軽い負荷でフォームを意識した高回数トレーニングを行うことで、回復を促進しながら刺激を維持できます。
フォームの見直しで怪我予防&効果アップ
筋肉痛のときは無理なフォームになりがちなので、正しい姿勢と動きを意識するのに最適なタイミングです。初心者こそ、この機会にフォームを確認しましょう。
筋肉痛の時でも取り組める自重メニュー
クランチやプランクなど体幹中心のトレーニング
ヒップリフトやサイドレッグレイズ
ウォールシットなど静的保持系の種目
筋肉痛を予防する方法
筋肉痛は筋トレ前後の習慣や、筋トレ時の負荷設定で和らげることが可能です。参考にしてみましょう。
正しいフォームとウォーミングアップの重要性
運動前の準備が、筋肉痛予防に直結します。ウォーミングアップとしてジョギングや動的ストレッチを取り入れ、筋肉と関節をあらかじめ温めましょう。
「少しきつい負荷」を意識した効率的な鍛え方
過度な追い込みは痛みの原因になります。「少しきつい」と感じるレベルを目安に負荷を設定することで、筋肉を守りながら成長を促せます。
クールダウン・ストレッチで筋肉を守る
トレーニング後のクールダウンを習慣化することで、筋肉のこわばりや炎症を抑えられます。静的ストレッチを取り入れて心身ともにリラックスしましょう。
筋肉痛=効いてる証拠?とは限らない
筋肉痛がなくても成長している場合もある
筋肉痛は筋成長の一つの目安にはなりますが、痛みがない=効果がない、というわけではありません。負荷の種類や刺激の質によっては筋肉痛がなくても成長しています。
「痛い=正解」ではない理由とは
筋肉痛を無理に追い求めると、フォームの乱れやオーバートレーニングに繋がりかねません。トレーニングはあくまで「継続」と「回復」がカギです。
筋肉成長のためにベストな休養タイミングとは
一般的に筋肉の回復には48〜72時間が必要です。同じ部位は連日トレーニングせず、適度な間隔で鍛えることで超回復がスムーズに起こります。
筋肉痛は筋トレによる成長過程の一部ですが、誤った判断で無理を重ねると逆効果にもなり得ます。スポーツ整形外科医・樋口直彦先生のアドバイスを参考に、正しい知識と対応力を持って筋肉と向き合うことが、最も効率的なトレーニングの近道です。
監修者プロフィール
なか整形外科京都西院リハビリテーションクリニック
院長 樋口 直彦 先生
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。バレーボールVリーグ「サントリーサンバーズ」のチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。