腕立て伏せ(プッシュアップ)の効果と正しいフォーム、やり方 (3/3)
<このページの内容>
腕立て伏せで、体を起き上がらせることができない人は
姿勢をキープする腕立て伏せ(アイソメトリクスプッシュアップ)
肘を伸ばして起き上がることができない人は、姿勢を保つ方法で行ってみましょう。カラダを下ろした後、元に戻せない人向けのバリエーションです。
膝つき腕立て伏せと同じ手順でカラダを下ろし、その姿勢を10秒間キープします。カラダを一直線に保つように気をつけましょう。
頭側を高くして行う腕立て伏せ(インクラインプッシュアップ)
頭側を高くすると負荷が軽くなり、筋力がない人でも取り組むことができます。
両手をテーブルなどの上に乗せ、頭が足よりも高くなるようにして、腕立て伏せの姿勢になります。
肘の角度が90度になるまで肘を曲げ、カラダを下ろしていきます。その後、カラダを持ち上げていきます。
頭側が高ければ高いほど動作は楽になるでしょう。慣れてきたら、腕立て伏せの角度に近づけていくようにしてみてください。
ここからは、腕立て伏せができない理由を解説していきます。
腕立て伏せができない理由の多くは「筋力不足」
腕立て伏せは、簡単なようで意外とキツい種目です。とくに女性や体力がない男性にとっては、思うようにカラダが持ち上がらないと感じることが多いでしょう。
しかし筋力が向上すれば、誰でも必ずできるようになります。
腕立て伏せができない理由は二つ。まず挙げられるのが主働筋(ある動作において主となる役割を果たす筋肉)である「大胸筋」の筋力不足です。
原因1 大胸筋の筋力不足
腕立て伏せの動作でもっとも力を発揮するのが、胸の大きな筋肉である「大胸筋」です。カラダを深く下ろした状態は、大胸筋の筋力がもっとも出しにくい関節角度(スティッキングポイント)です。
そのため、深く腕立て伏せができないという人は、大胸筋の筋力不足が考えられるでしょう。
原因2 上腕三頭筋の筋力不足
もうひとつの理由が、腕の後ろ側の筋肉である「上腕三頭筋」の筋力不足です。
腕立て伏せの場合、上腕三頭筋はカラダを上まで持ち上げるときに力を多く発揮します。そのため、胸より腕が先に疲れてしまう人は、上腕三頭筋の筋力不足が考えられるでしょう。
上級者向け! 腕立て伏せのやり方
ここからは、基本の腕立て伏せが難なくクリアできた人向けのレベルアップメニューです。
デクラインプッシュアップ
上級者向けです。胸の上部を鍛えるエクササイズとしても効果的です。
やり方
- 手は肩幅よりこぶし2個ほど広げ、足をイスの上に乗せます。頭が足よりも低くなるようにしましょう。
- 胸が床につくまで肘を曲げ、カラダを下ろしていきます。
- 腰を反らさないようにカラダを戻していきます。
手首を痛めないよう、床に置く手のひらの代わりに拳で行う人もいます。
ワイドスタンスプッシュアップ
手幅を広くして行う腕立て伏せです。
やり方
- 手をこぶし1~2個分、外側に広げて床につきます。
- 胸が床につく程度の位置まで、肘を真横に曲げてカラダを下ろしていきます。
手幅を広くすることにより、胸の筋肉への刺激量が増えます。
ナロースタンスプッシュアップ
手幅を狭くして行う腕立て伏せです。手幅を狭くすることにより強度が上がるだけでなく、胸の内側や上腕三頭筋に多くの刺激が入ります。
腕立て伏せの姿勢になります。両手で三角形を作るように親指同士を触れ合わせ、床につきましょう。
脇を締めたまま肘を曲げ、胸が手に触れる位置まで下ろします。
リバースグリッププッシュアップ
手の平を180度回転させることにより、腕の裏側の筋肉「上腕三頭筋」への負荷を高めるトレーニングです。
キツイと感じる方は、膝をついてやってみましょう。
プッシュアップの体勢を作り、指先を足の方へ向けるように、手のひらを回転させます。
みぞおちの横あたりに手のひらを置き、胸がつかない程度に体を下げましょう。
腕を伸ばして体を上げます。手の平をみぞおちの横あたりに置くと、スムーズに行えます。
片足プッシュアップ
片足で体重を支える腕立て伏せです。胸や腕への負荷を高めることができます。
腕立て伏せの形を作ったら片足を伸ばし、頭からかかとまでを一直線にしましょう。
胸が地面につかない程度まで下げたら、体を押し上げます。
お尻が上がりすぎないように気をつけましょう。目線を少し前に向けてください。
クラッププッシュアップ
腕立て伏せに”空中で手を叩く動作”を加えた種目。筋肉への負荷が高い、チャレンジメニューです。
まずはプッシュアップの形を作ります。
そのあと胸が地面につかない程度まで下げます。
すかさず地面を押し、身体を浮かせます。身体が地面に落ちる前に拍手しましょう。
そのまま胸が地面につかない程度まで下げます。
応用編!腕立て伏せ×HIITトレーニング
腕立て伏せを使った「HIIT(High-Intensity Interval Training:ハイ・インテンシティ・インターバル・トレーニング)」を、業界最大手のパーソナルトレーニングジム「RIZAP(ライザップ)」のトレーナーが解説します。
腕立て伏せ×HIITトレーニングメニュー
トレーニングメニューは以下の通り。
- ノーマルプッシュアップ:ノーマルな腕立て伏せです。
- ワイドプッシュアップ:大胸筋に刺激を入れることができます。
- ナロープッシュアップ:上腕三頭筋に刺激を入れることができます。
- ヒンズープッシュアップ:大きな動きを伴うので、姿勢を維持するために体幹も鍛えることができます。
ノーマルプッシュアップ
肩幅に手を開き、床につきます。
お腹に力を入れて、姿勢をまっすぐにします。
腕が90度になるまで下ろしましょう。
ワイドプッシュアップ
手は肩幅より拳ひとつ分ほど遠い位置へ置きます。
お腹に力を入れて、姿勢をまっすぐにします。
腕が90度になるまで下ろしましょう。
ナロープッシュアップ
手幅を狭め、三角形を作るように肩の真下へ置きます。
お腹に力を入れて、姿勢をまっすぐにします。
腕が90度になるまで下ろしましょう。
ヒンズープッシュアップ
手は肩幅の位置へ置きます。
お尻を高く突き上げます。
今度は地面すれすれまで体を下ろします。
腕をしっかりと伸ばしましょう。
4種目をそれぞれ20秒間、全力で行いましょう。休憩は10秒程度が目安です。フォームが崩れないように意識しましょう。
関連記事:HIITトレーニングに挑戦!腕立て伏せ(プッシュアップ)4種目│ライザップトレーナー直伝!自宅筋トレ
腕立て伏せの回数は、多ければいいわけではない!
もし腕立て伏せが50回、100回など高回数こなせる場合は、負荷が軽すぎる証拠です。
筋力を高めるためには負荷を増やし、1セットあたり10回くらいしかできないよう強度を変化させる必要があるでしょう。
腕立て伏せの負荷を変えるには、フォーム以外にもさまざまな方法があります。ここでは、筋肉への刺激を増やすためのテクニックを紹介します。
動作スピードを「ゆっくり」「できるだけ速く」
回数がこなせるようになったら、動作スピードを変えてみましょう。
たとえば、「5秒かけてゆっくりと下ろす→1秒で元の姿勢に戻る」というように、いつもよりゆっくり行うだけで負荷が大きくなります。
また、できるだけ速く動作するというのも効果的。10秒間で何回できるかなど制限時間を設けると、意識して速い動作を行うことができます。
加重する
ダンベルやバーベルのプレートを使ったり、子どもを背中に乗せたりするなど、加重しながら行ってみましょう。ただし、重さが増えることでフォームが崩れやすくなりますので注意してください。
瞬間的な筋力発揮を意識する
起き上がる際に一気に力を入れ、両手を床から浮かせるようにします。この動作は負荷が高まり、筋肉に大きな刺激を与えることが可能です。
どの腕立て伏せのバリエーションでも行うことができるので、刺激に慣れてきたら取り入れてみましょう。
腕立て伏せは毎日やってもいい?
腕立て伏せは自宅で簡単にでき、筋力強化やボディメイクに効果的な自重トレーニングです。やろうと思えば毎日取り組むことができるでしょう。
しかしやり過ぎは禁物です。
回数が増えるほど故障の危険性が高まる
「○○日チャレンジ」と称して、腕立て伏せの回数を毎日増やしていくプログラムを目にすることもあります。
企画としてはおもしろいのですが、毎日腕立て伏せを続けていくと、必ず飽きてしまい、停滞期がやってくるものです。
こなせる回数とかかる時間だけが長くなっていき、肝心の筋肉への負荷は少なくなってしまいます。筋肥大どころか、手首や肘などの関節に慢性疲労が溜まり、身体の故障を招くおそれもあるでしょう。
さまざまな種目を組み合わせるほうが効率的
腕立て伏せだけに限ったことではありませんが、ひとつの同じ動作を毎日繰り返すことは、あまりよい結果をもたらしません。
腕立て伏せを行うのは隔日程度に留めて、他のエクササイズと組み合わせることをおすすめします。
関連記事:腕立て伏せ(プッシュアップ)、もっとも効果的なフォームは?毎日やるべき?
著者プロフィール
和田拓巳(わだ・たくみ)
プロスポーツトレーナー歴16年。プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療院での治療サポートの経験もあり、ケガの知識も豊富でリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・スポーツ・トレーニングに関する講演会・講習会の講師を務めること多数。テレビや雑誌においても出演・トレーニング監修を行う。運営協力メディア「#トレラブ(https://tr-lv.com/)」などで多くの執筆・監修を行い、健康・フィットネスに関する情報を発信している。日本トレーニング指導者協会 JATI-ATI
<Text & Photo:和田拓巳>