2019年6月28日

日本で唯一のチーランニング公式インストラクターに聞く“走力レベルアップ”のポイント (3/3)

◆ヨガや太極拳などで身体の使い方を学ぶのもおすすめ

 中島さんによれば、身体の使い方についてはヨガや太極拳などから入るのもオススメとのこと。あるいは裸足ランニングなども、“正しい身体の使い方”を知る上では有効と教えてくれました。しかしランニングを習う環境で見ると、日本には課題も多いと言います。 

「日本では、過去に実績のあるアスリートがコーチを務めるケースが多いですよね。実際、やはりそういう人に習えば速くなるという心理があるのだと思います。しかし輝かしい実績のある選手が、必ずしも正しく教えられるとは限りません。だって、その選手もまた誰かに教わってきたわけですから。例えばアメリカで水泳を習う場合、中にはカナヅチで泳げないのに、人気のあるコーチがいます。その理由は、その人の理論がしっかりしているから。誰かにランニングを習うのであれば、実績にとらわれず、『理論を知っているか否か』という視点からコーチを選んでほしいですね」 

 確かにランニングスクールなどを見ると、コーチの記録・実績を全面に出したものが多く見受けられます。しかし本当にその選手のようになりたいと考えるなら、習うべきはその選手を育てたコーチ……ということになるのでしょう。私もランニングトレーナーとして教える立場となることがありますが、非常に納得感のあるお話でした。さらに中島さんは、走るために何が必要なのかについて、こう語ります。

◆ランニングを楽しむことが1番大切

「走るうえで最も大切なことは、何よりランニングを楽しむことです。そのためには、他人との比較は不要です。せっかくなら、楽しむために練習するという視点で取り組んでほしいですね。誰だって、心から楽しいと感じることなら、トコトンできるものですから」 

 もちろんトレーニング後にはケアも大切。レース前なら軽く心拍数を上げておくとよいですし、そうしたテクニックは走力アップの視点から学ぶべきことと言えるでしょう。しかし、まずはランニングを楽しいと感じてもらうこと。そのうえで身体の使い方を身に付け、距離やスピードへとステップアップしていくことが重要だと言います。こうした考え方は、新鮮に感じるランナーも多いのではないでしょうか。

 速く、長く……そして楽しく走る。チーランニングが日本でどのように広がっていくのか、お話を伺っていて非常に楽しみに感じました。そのメソッドに興味を持たれた方は、まず中島さんのワークショップでチーランニングを体験してみてください。

[プロフィール]
中島貴裕(なかじま・たかひろ)
1972年生まれ、新潟県出身。2006年に初めてフルマラソンを経験。その後、トライアスロン競技を通じてTIスイムと出会う。当時のスイムコーチを通じてチーランニングの存在を知り、アメリカでのワークショップを経て公式インストラクターとして認定を受ける。チーランニングの公式インストラクターは、現在日本で唯一人。東京都内を中心にワークショップを開催している
【HP】http://takahironakajimaster.wixsite.com/g-works

[筆者プロフィール]
三河賢文(みかわ・まさふみ)
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かし、中学校の陸上部で技術指導も担う。また、ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども行っている。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表
【HP】https://www.run-writer.com

※本記事の初出は2017年6月30日です。

<Text & Photo:三河賢文>

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