”グルテンフリーは日本人に意味ない”ってホント?理由と効果があるケース[薬剤師監修] (1/2)
聞き覚えのある方が多いであろう「グルテンフリー」という言葉。海外のスポーツ選手やインフルエンサーが取り入れて以降、一躍有名になりました[*1]。
健康志向の高い人を中心に話題になりましたが「日本人には意味がない、合わない」ともいわれています。
本記事では、グルテンフリーの良い点と悪い点、そして日本人に効果が期待できるのかを解説します。
グルテンフリーとはどんな意味?
グルテンフリーとは端的にいうと、グルテンを含む食品の摂取を控えることです。グルテンとは、麦類に含まれるタンパク質のことをいいます。
パンやうどんを作るときをイメージしてください。小麦粉に水を加えてこねていくと、粉が少しずつまとまってもちもちとした生地になりますよね。
このもちもちとした感触の正体がグルテンです。
もっちりした弾力はパンのふくらみを助けたり、うどんの歯ごたえを生んだりと、見た目や食感を良くするうえで欠かせません。
おいしさのもとになるグルテンですが、摂取すると体調を崩してしまう人がいます。この人たちのために生まれた食事法が、グルテンフリーです。
"グルテンフリーは日本人には意味がない"といわれる理由
グルテンフリーがブームになる一方で、「日本人には意味がない」ともいわれています。その理由は、主にアメリカやヨーロッパとの人種・食文化の違いにあります。
治療補であり、健康な人が実践しても効果がない
グルテンフリーは、セリアック病患者のために生まれた治療法です。前の項目で説明した「グルテン摂取により体調を崩してしまう人」の代表例がセリアック病患者です。
私たちのからだには、菌やウイルス感染から身を守る、自己免疫系という機能があります。セリアック病の人は、この機能がグルテンを敵とみなして小腸を攻撃してしまいます。
慢性的な炎症による腹痛や下痢、倦怠感などを引き起こすほか、悪化すると消化・吸収不良に陥ってしまうのです[*2]。
この病気への対策として有効なのが、グルテンを食事から抜くグルテンフリーです。そのため、そもそも健康な人が実践しても意味がないといわれています。
日本人の主食の多くは米で、グルテンの摂取量が少ない
ご存じの通り、日本人は米を中心とした食文化を形成しています。そのため、日本人は元来グルテンの摂取量が低く、グルテンフリーの恩恵を受けにくいとされています。
セリアック病の原因は、主に遺伝的要因と小麦摂取量です。小麦摂取量の多い地域では有病率が高い傾向にあり、アメリカやヨーロッパにおける有病率は約1%。
約100人に1人が発病しているという研究結果があります[*2]。
では、日本におけるセリアック病の有病率は、どれくらいでしょうか。
日本人で発病する人は極めて稀で、有病率は0.05%程度です[*2]。遺伝的にも食文化的にも発症しにくいため、日本人はグルテンを控える必要性が低くなります。
グルテンフリーが注目される理由
「意味がない」といわれる一方で、日本でも多くの人が、小麦を控える取り組みを始めています。なぜ、こんなにもグルテンフリーは脚光を浴びているのでしょうか。
日本人のグルテン摂取量が増加したため
セリアック病は、小麦中心の食文化であるアメリカやヨーロッパで、有病率が高まっています。
そのため、日本人でも小麦食品を多く摂るようになると、将来発症リスクが高まる可能性が示唆されています[*2]。
日本人の年間の小麦消費量は、戦前は1人当たり約8kgでしたが、戦後になると約33kgと約4倍に増加[*2]。その後は昭和40年度で29.0kg、令和2年度で31.7kgとなっています[*3]。
戦後の急増に比べると近年はそれほどではありませんが、緩やかに増加しています。
人によっては、米より小麦の加工品を好んで食べている人もいるでしょう。小麦消費量が増えるにつれ、今後日本でも、セリアック病の有病率が高くなる可能性は否定できません。
小麦アレルギー患者が増えたため
食物アレルギー患者数は上昇の一途にあり、それに比例して小麦アレルギー患者も増えています。
2017年から2020年の3年間で、食物アレルギーの症例は4,851例から6,080例と約25%上昇しました[*4]。
小麦アレルギー患者が増えるなかで脚光を浴びたのが、グルテンフリーです。
グルテンフリーの食品にはさまざまな種類があり、小麦の使用を極力抑えたものや、原材料から除外したものがあります。
そのため、摂取してもアレルギー反応を起こしにくいのが利点です。