インタビュー
2023年9月14日

「親父は気合と根性や言うけど科学的なことも必要やん?」亀田興毅が語る、プロテインとの付き合い方 (2/3)

亀田興毅流・プロテインとの付き合い方

現役時代はどんな食生活を送っていた?

普段の食生活はけっこう適当でしたね。納豆はよく食べていましたが、他は気にせず、いっぱい食べていました。食べても体重は増えないです。たくさん練習をさせられるので。普段は体脂肪率7~8%をキープして、試合前になると3%を切ったりします。家庭用の体脂肪を測る機械で一番精度が高いのは「タニタ」で、3%ぐらいまでは測れますが、それより下は測れないんです。だいたい試合前や減量中は“測定不能”でした。脳みそが2.7%と聞いたので、2.7%より下げられないとは思います。

減量の最後のほうは小便も出ないし唾も出ない。1日30回以上は立ち眩みしてましたよ。朝起きたら、まず壁を支えにして3分ぐらい待って、復活してきたと思ったら歩き出す。嘘じゃなくほんとに1日30回以上、立ち眩みでぼーっとしていました。

階級が上がった後は、体重も脂肪も増えて、普段で体脂肪率9~10%だったと思います。減量のときは体脂肪率5%ぐらいまで落として、あとは水分で抜くというような感じでした。「階級を上げる」というのは筋肉をつけるだけでなく、ある程度、脂肪も乗せないとダメです。ボクシングって脂肪がなかったら強くないんですよね。脂肪が乗っているほうがスタミナがあるし、打たれ強くなる。筋肉だけだったら、すぐに内臓にダメージがいってしまいます。

脂肪をつけたいから、いつも甘いもんばっかり食べてました。とくにメロンパンとポン・デ・リング、あとはクリーム・ブリュレ。クリーム部分が深いと、上のカチカチの部分だけ食べ終わって下が余ってしまうんですよ。だから浅めのやつが好きで、よく探してました。クリーム・ブリュレにはめちゃめちゃこだわりがあります。シュークリームは苦手なんですよ。皮が薄くて、中にクリームしかないでしょ? クリームだけ食えるかって(笑)

減量時、どのようにして食への欲望をコントロールしていた?

何もしてないですよ。食べられないのは当たり前じゃないですか。「そういうもんなんだ」と思ってやってるから。ボクサーはやらなあかんから、絶対に。しんどいのも決まってるんやから。だから「しんどいしんどい」言ってもしゃあないやんっていう。自分はそのときそのときを楽しむタイプなんで。

でも最後の3日間くらいは、正直しんどいですよ。体の脂肪がない中、あと3kg落とさないといけない。どっから落とすっていったら水分しかないんです。水分って自分の体重の10%以上落とすと、脱水症状を超えていて危険なんですよ。だいたい8%ぐらいと言われていますが、自分は10%ぐらい落としていました。大毅(だいき/亀田三兄弟の次男)がかわいそうやったな。あいつは12%ぐらい落としてたんじゃないかな。

減量中は食べ物よりも、とにかく水が飲みたかったです。食べ物は要らないんですよ、別に。口の中はパサパサやし、食べてもおいしく感じられないし。

現役時代からプロテインは飲んでいた?

現役時代から飲んでいましたよ。それだけじゃなくBCAAやクレアチン、グルタミン、アミノ酸なんかも。練習が全部終わったあと、一気に飲んでました。自分はマニアックなので、いろんなメーカーから取り寄せて、栄養の先生に成分を調べさせたんです。どれが一番いいかって。そうしたら日本のものでは「Kentai」(健康体力研究所)の成分が一番よかったので飲んでいました。グルタミンは青色、クレアチンは黒色で、BCAAは赤色みたいな。

でも、成分は海外のやつのほうがいいんですよ。日本は国の規定で、あまり分量を入れられないんです。プロテインは海外のやつを飲んでいたと思います。

タンパク質はプロテインで摂る派?食事で摂る派?

プロテインと食事のダブルで摂ってました。納豆は当然として、豚肉、鶏肉、牛肉……ちゃんこ鍋を親父がよく作ってくれて、そこに入ってるんですよ。あとは魚もよく食べてました。

1日に摂取するタンパク質の量はしっかり管理していました。プロテインからは何g摂取して、食べ物だったらこれを食べるとか。親父はこういう話にまったく興味がなかったですね。親父は原始人やから。「科学的なことは関係ない、気合と根性や!」っていうのが親父ですね。「最後は気持ちや!」っていうのはわかるけど、そこにいくまでには科学的なことも必要やん?って(笑) 親父も栄養を摂った方がいいよとは言いますが、意味はわかってないですよ。「お前らで考えて自分でやりや」って感じです。その代わり食べ物はちゃんと作ってやるからって。

大毅はたぶんプロテイン飲んでないですよ。和毅(ともき/亀田三兄弟の三男)は研究とかして細かいけどね。3兄弟でみんな性格がバラバラですよ。でも大毅はプロテイン飲まないし、ほとんど練習もしないのに世界チャンピオンになってるじゃないですか。だから親父は「大事なのは根性やねん」で話をまとめようとするけど、大毅はちゃんとやってたらもっと活躍していたと俺は思うんです。自分ら(興毅、和毅)はまだちゃんとやっていたほうなんです。大毅がちゃんとやっていたら5階級制覇ぐらいしてたんじゃないですか。体が大きかったし。

一般の人がプロテインをとり入れたい場合、いつどんなタイミングで、どれくらい飲めばいいか?

筋肉をつけたい人やトレーニングをしている人は、常にタンパク質が体のなかにある状態にしていたほうがいいですね。朝走ったあと飲んで、夕方練習後に飲んで、寝る前でも飲んだらええし。そしたら1日3回飲めるじゃないですか。筋トレしていない人でも普段から飲んだほうがいいと思います。

プロテインを飲んでたら、「自分も運動しようかな」っていう意識の改革にもつながってくるんですよ。「運動せなあかんなぁ」「せっかくプロテイン飲んだし」みたいな。プロテインを飲み始める入口はいろいろあります。

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